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イシュバンと9人の魔術師  作者: SHIKI


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7/12

兄弟

兄弟げんかで一番激しかった喧嘩って何がありますか??

皆さんの兄弟話が聞きたいです!!

「話ってなんだ、クローヴィス?」

クローヴィス様の部屋に連れてこられたアンドレアス様は、近くのソファに腰かけた。

クローヴィス様もお気に入りの椅子に腰かけゆっくりと話し始める。

「今朝のことだ。オレは・・・朝食はここで取ったが、アイラが顔を出したそうだな。」

「ああ、そうだな。」

至って穏やかな表情のアンドレアス様。

これに対し、クローヴィス様は怪訝な表情になる。

「急になぜ?イシュバンが引っ張り出したか?」

「おや。従者らには興味がなかったんじゃないのか?お前が家族以外の屋敷の者を気にするのは珍しい。

まあ、サムを除いてだが。」


「・・・肯定とみなすぞ。じゃあ、イシュバンを使ってアイラをなぜ外に出したがるんだ・・・?」

「逆に問うが、なぜアイラを外に出してはいけないんだ?

・・・兄弟として十数年一緒に暮らしてきて初めて単刀直入に聞くが、お前は昔からアイラのことを誰よりも嫌っている。一体なぜだ?」

この言葉にクローヴィス様は一気に声を荒げて怒鳴り始める。

()()()()()()()()()()()()に決まっているだろう・・・!?()()()()()()()()()()()()()()の子だぞ?」

こらえていた憤りの感情がだんだんと湧き上がってくるクローヴィス様。


「・・・口を慎め、クローヴィス。継母とは言え、一時(いっとき)は家族だった人だぞ。」

「家族・・・だと?本気でそう思っているのか、アンドレアス・・・。」

「ああ、もちろんさ。」

アンドレアス様の背後にある窓から差し込んでいる日の光がだんだん強くなると、長い金髪に覆われたその端正な顔が陰ってくる。

その表情はよく見えなかったが、緑色の瞳だけは狙いを定めるかの如く()()()()()()()



(狂っている・・・。)

クローヴィス様は下を向いて震える両手で顔を覆い、そのまま目をつぶった。



・・・あの晩、親族の屋敷から家族全員は数人ずつ別れて馬車に乗り込んだ。

ゆっくりと数台の馬車はこの屋敷へ向かっていくと強い雨がだんだん降り始めてくる。

途中橋を渡るとき、最後に渡りきろうとした馬車が突然大きくバランスを崩して倒れた。

そして、馬車の中にいた家族も勢いで外に飛ばされてしまった。

一人は橋から転落し打ち所が悪く即死・・・もう一人は馬車に下半身を潰されたが一命は取り留めた。

俺はこの馬車の一つ前に、もう一人と一緒に乗っていた。

後ろの馬車が横転したと叫び声が聞こえて、慌てて土砂降りの雨の中へ飛び出したのを覚えている。


痛みで泣き叫ぶ姉の声。

母親の姿はなく、ただお気に入りだった帽子だけが橋の上に落ちていた。


俺はその光景が恐ろしく、立っているのもやっとだった。

従者らが魔術の仕業ではないかと調べるも、魔術の残滓らしきものは見つからない。

何も手立てがない、と皆が諦めかけているとき

ふと一緒に馬車に乗っていた人のほうを横目で見る。



笑っていた。



派手な恰好をした、銀色の長い髪に赤い瞳の女が笑っていた。




事件以降、この時のことを家族全員に何度も打ち明けたが、誰も信じてはくれない。

証拠が何もなかったからだ。それに・・・

俺はこのとき、まだ7つだった。





「・・・アイラを外に出すなら条件がある。」

顔を覆っていた手を少しずつおろしながら、静かな表情の兄をじっと見つめた。

「条件だと?何様のつもりだ。家族の一人が自由に外に出るだけだろう?」

「アンドレアス!!!!!!

・・・お前も気がついてるんだろ?あの女と瓜二つに成長していくアイラに。なにも違和感を感じないのか?」

「メディア様とアイラは親子なんだから似るのは当たり前だろう。何をばかなことを言って・・・。」

「とにかく!約束してくれ・・・。アンドレアス・・・・。兄上、お願いだ。頼むよ・・・。」

滅多に頭を下げない弟が面と向かってお願いをしている状況にアンドレアス様は動揺を隠せなかった。

「・・・条件とは?アイラを拘束するような条件だったら許さんぞ。」

勢いよく顔を上げるクローヴィス様。

「俺の学校の新学期が始まるまでは、俺がアイラに同行する。・・・学校が始まってからと、時折俺の代わりに屋敷の人間を一人付き人として常にアイラの傍に置く。ただそれだけだ。」



アイラ様はさっそく久しぶりに日の光を全身で浴び、庭先の花をじかに触り、においをかいでいる。

その銀髪の髪は、いろんな角度から光に当たると白波のようにきらきらと反射して見えた。

そして、不機嫌そうなクローヴィス様から指示されなりゆきで付き人となったイシュバンが傍に立っている。

(命令されるのは不本意だったけど、アイラ様が外を出られるようになったのは良かったな・・・。)

少し遠くのほうにいたアイラ様が、いつのまにか花束を携えてこちらにかけてくる。

「ねえねえ、イシュバン。今晩パーティがあるのを知っている?」

「パーティですか?」

「ええ、そうよ!

シャティお姉さまが朝食の時にお話ししていたでしょう?丘を越えたところにあるお屋敷でパーティがあるから、準備をしなきゃって。私もそれ、出たいわ!!」

「ええ!?急にですか?招待をされないと出れないものなんじゃ?」

「まあ、世間から見れば私はつまはじきにされるんでしょうけど、社交界には体裁がいろいろと必要でしょ?家族のうち一人だけ招待しないっていうのはあからさまだから、|()()()()()()()()()()()()()()()って文言で招待状が届くのよ。だから私も含まれるってわけ。」


「で、でも今日数年ぶりに外に出たばかりで・・・疲れてしまいませんか?」

「あら、疲れたらあなたがおぶってくれればいいわ。」

「・・・。」

初めて会ったばかりのアイラ様とは見違えるように明るくなった。

表情がコロコロと変わり、人をからかう余裕も見せるようになった。

ただ、時折見せる表情がどこか大人びていて別人に映るときがあるが、成長が目まぐるしすぎてそれどころではない。

「わかりました。少し、アンドレアス様にも話してみましょうか。」

「あとね、イシュバン。」

「はい、なんでしょうか?」

「お父様にもお会いしたいわ。もう、しばらくお会いしていないんですもの。」

「そうですね。それは、ジェームズさんに話してみましょうか。」

アイラ様は嬉しそうに笑ってまた庭の中を駆けていった。











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