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僕はお父さんを見守った

 だけどしばらくして、信じられない事に、本当に地震が起こった。

 僕はとっさにお父さんの方を見た。

 お父さんは箪笥の近くでガーガーといびきをかいて寝ていた。

 そしてその箪笥の上では、人形の入った、とても重そうなガラスケースがガタガタと揺れていた。

 もしあれがお父さんの頭の上に落ちたら、最悪死ぬかも知れない。

 それで僕は急いで箪笥に近寄り、その重い人形ケースをよいしょと抱え、安全な畳の上に置いた。

 そしてしばらくすると地震は収まった。

 だけど不思議な事に、誰も目を覚まさなかった。


 そして僕は考えた。

〈まだまだ何か起こるぞ。まだ運命のエネルギーが残っているに違いない!〉

 僕はそう確信し、同時に背筋がぞっとした。

 今度は雷か? 火事か? それで僕は窓の外を見た。


 そしてしばらく僕が外を眺めていると、酔っぱらいがタバコをくわえ、よろよろと家の近くを歩いているのが見えた。

 僕が注意して見ていると、その酔っぱらいは火の着いたタバコをポイと僕の家の庭の中に投げ込み、そのままどこかへ歩いて行った。

 そしてしばらくすると、庭の枯れ草に火が着き、小さな炎が上がり、やがてその炎は庭の芝生へと燃え広がろうとしていた。

 それで僕はあわてて玄関へ行き、サンダルを履いて庭へ出た。

 そして必死に炎を踏んで消そうとしたけれど、とても消えそうにはなかったので、庭に水を散くホースを手に取り、蛇口をひねって水を掛けるとようやくその火は消えた。


 やっぱりただ事ではない。

 きっと何かが起こる。

 まだ運命のエネルギーが残っているはずだ。 

 今度は隕石でも落ちて来るのか?

 そう思った僕は夜空を見上げた。


 そこは満天の星空だった

 夏の大三角はすっかり西に傾き

 東の空低く、オリオンが顔を出していた

 北の空にはカシオペア…

 カシオペアはエリアちゃんと一緒に見た

 太陽が一等星の、ジグザグのカシオペア

 エリアちゃんとの思い出がいっぱい

 もう逢えないと思うと、とても寂しかった


 だけどそのとき、流星が流れ始めたんだ

 次から次に、沢山の流星だった

 信じられないような不思議な光景だった

 人が死ぬ時、星が流れるという

 僕はその事を思い出した

 やっぱりお父さん、死なないといけなかったのだろう…

 それほど沢山の星が流れたんだ

 僕は幼い頃に見た獅子座流星群を思い出した

 しばらくの間、僕はその流星群に見入っていた

 大きいのやら小さいのやら、次から次に流れた

 そして最後に、とても大きな星が流れた

 空全体が真昼のように明るくなった

 その大流星は四つに分かれ

 四本の光の糸となって消えて

 それはお父さんとお母さんと妹と僕?


 そして僕は、今年の夏の花火を思い出した

 最後にドカンと三尺玉が上がり

 夜空に巨大な光の花が開いた

 そしてそれが最後だった

 もしかしてこの巨大流星は、その「最後の花火」?

 だけど本当にそれが最後だった

 それから嘘のように星は流れなくなった

 元の満天の星空に戻った


 もうこれで、すべて終わりじゃないのかな?

 僕には何となく、そんな予感がした

 いや、そんな確信があった。

 もう終わりだよ!

 何故だか分からないけれど、そんな確信が…


 それから僕は和室へ戻り、また窓の傍の椅子に座って外を眺めた。〈もう何も起こらない〉

 僕のその確信は、やがて安心に変わった。

 安心したら、僕は急に眠くなった。


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