殺人光線のカートリッジ
それから僕は一人部屋に取り残され、しばらく呆然としていた。そして我に返り、僕は考えた。
〈別の宇宙のセリア君は微妙に違うセリア君だって? 冗談じゃないよ。ちっとも違わないじゃないか! いつもいつも小難しい事を言って僕を混乱させる。だけどとっても頼りになる、あのセリア君そのものじゃないか!〉
僕は思った。
それはそうと、「別の宇宙」ではトンネルはまだ崩壊していないのだろうか?
僕はそう思ったけれど、別の宇宙のセリア君は僕に「何もしゃべるな!」と言ったから、その事はきけな
かった。
〈でも別の宇宙のセリア君、ありがとう。そしてカートリッジの事、よろしくね〉
それから僕は手に持ったままの光線銃のカートリッジを通訳メガネを使い、もう一度じっくりと見た。
別の宇宙のセリア君はカートリッジをすり替えるなんて言っていたから、もう変ったのではないかと思ったんだ。
だけど殺人光線用のままだった。
僕は一瞬絶望したけれど、でも僕はすぐに例の論文発表の替え玉作戦の後、セリア君がこんな例え話をした事を思い出した。
「例えばカップラーメンを食べる時も、お湯を入れてからしばらく待つだろう」
〈なるほどそういう事か!〉
それで僕は光線銃とカートリッジを一旦弁当箱に入れ、そのまま机の引き出しの中にしまい込んだ。
そして一階に降り、しばらくの間泣きべそをかいているみんなと一緒に、僕だけは怖い顔をして座る事にした。
とにかく運命変更には時間が掛かる。セリア君はそう言っていた。
だから僕は「替え玉作戦」の後オーラム星へ帰り、シーズンを全うしたのだ。
だから僕は、今度もしばらく待つ事にしたんだ。
それから程良い時間が過ぎた。
それで、そろそろかなぁと思い、僕は二階へ上がった。
それにしても別の宇宙のセリア君はアクエリアスでオーラム星へ帰り、代りのカートリッジを探して、また地球まで戻って、そしてすり替える。
夜中にこっそり僕の部屋にやって来てすり替えたのだろうか…
それは大変な苦労だっただろう事は、僕にも容易に想像が出来た。
ともかく僕はそんなセリア君に思いをはせながら、机の引き出しから弁当箱を出し、中から光線銃のカートリッジを取り出した。
そしてシールに書いてある文字を通訳メガネを掛け、もう一度見る事にした。
だけど、やっぱり殺人光線用だった!
僕はもう一度絶望した。
だけどよく見てみると、同じ「殺人光線」だったけれど、書いてある内容が微妙に異なっていたんだ。つまりそれにはこう書いてあった。
「殺人光線用 短時間作用型」(効果は27時間)
確かに別の宇宙のセリア君は、カートリッジをすり替えてくれてはいたんだ。だって前のは「最強」だったから。
だけど僕は、そこに書いてある意味がよく分からなかった。
〈効果は27時間? それって一体何?〉
だけど別の宇宙のセリア君は、最強のやつは効果が十年だとか言っていた事を、そのとき僕は思い出した。
〈そもそもそれが分からん! 殺人光線の効果が十年って???〉
そして今度は効果が27時間ときた。
だけど考えてみると、効果が十年から27時間へと短縮されたことだけは確かだ。
それと「27」という中途半端な数字は、考えてみるとオーラム星の丸一日の長さだ。
オーラム星では一日27時間。(それで僕は早起きが苦にならなかった…)
それから僕はその「27時間」について、しばらくあれこれと考えた。そしてしばらく考えて、それからふと僕は部屋にある目覚し時計を見た。
するとかれこれ十一時だった。
そして、何だかぴんとくるものがあったんだ。
それは…、僕がお父さんを殺人光線で撃ったのは昨日の午後八時頃だ。
そうすると僕がお父さんを殺人光線で撃ってから、地球上ではもうすぐ丸一日と3時間という事になる。
それで地球の丸一日は24時間だから、それに三時間を足すとぴったり27時間!
つまり十一時になると、僕がお父さんを殺人光線で撃ってからちょうど二七時間という事になる。オーラム星の「丸一日」と同じ時間に…
そのとき僕の頭の中で、もう一度何かが閃いた!
〈もしかして十一時になると…、はっきり言って殺人光線の効果が切れるのでは?〉
ところで殺人光線の効果が切れると、一体何が起こるの?
少なくとも地球の常識では、お父さんは…
それによくよく考えてみると、お父さんは晩ごはんのとき、ビールを飲みながらナイター中継を見て、野球が負けそうなときなんか、プツンとテレビを消してソファーでふて寝して、そしていつも目を覚ますのは、十一時のスポーツニュースの頃だ。
その為に僕は、パジャマ姿でオーラム星へ行くはめに…、いや、それはどうでもいいけれど、とにかくかれこれ十一時だ。
つまり「十一時」は僕がお父さんを殺人光線で撃ってちょうど二七時間後であり、なおかつ、いつもお父さんが目を覚ます時間だ。
つまりタイミングぴったり。
〈よし!〉
それで僕は早速一階へ降りて台所へ行き、お父さんに大外刈りを掛けられてへこんだ冷蔵庫から缶ビールとつまみのからしれんこんを出し、リビングのテーブルに置いた。
そして十一時になるとリモコンを手に取りテレビをつけ、ボリュームをいっぱいにした。
やがて大音量のスポーツニュース。
その音は、お通夜をやっている和室にも盛大に響き渡った。
〈さあさあお父さん、お目覚めの時間だよ。お願いだから起きて!〉
でもお母さんが「あんた何考えているの!」と怖い顔で飛んで来て、僕からリモコンを取り上げるとプツンとテレビを消し、それからリモコンをテーブルの上に置いて和室へ戻った。
もう一度、辺りはしんとなった。
だけど僕はもう一度リモコンを手に取ると、もう一度テレビをつけ、大音量にした。
大音量のスポーツニュースの続き。
でもまたお母さんが怖い顔で飛んで来て、また僕からリモコンを取り上げるとテレビを消した。
それでも僕は負けずにお母さんから無理やりリモコンを取り返し、またテレビをつけた。
また大音量のスポーツニュース。
それから僕はお母さんから取り返されないように、リモコンをポケットに入れ、そして急いで和室へ行き、声の限りに叫んだ。
「お父さん起きろ~~~~~~~~~~~~!」




