何故か優勝争をしてたし
そんなこんなで九月の下旬には、僕らは力をつけていたみたいで、そういう訳でプロキオンズは、シリウスと優勝争いをやっていた!
首位はポアシのいる大犬シリウスで、僕らの子犬プロキオンズは堂々の二位だったし。
他のチームは話に出てこないので省略!
そしてそれはシリウススタジアムでの、「シリウス対プロキオンズ」最終戦前日のこと。
実はこの試合に勝った方が優勝となっていた。
だけど僕らのプロキオンズは、ペナントレース終盤の過酷な連戦で、セリア君とエナッツ君以外の主力ピッチャーを完全に使い果たし、全員「腰抜け」になってしまっていたんだ。
そういう訳でその最終戦、バナナ監督は先発はセリア君、リリーフはエナッツ君と決めているようだった。
もちろんエリアちゃんはこの試合を見に来てくれることになっていた。
一方シリウスの先発はポアシ。
シリウスも連戦で投手を使い果たし、最後の最後の勝負をエースに託すようだった。
とにかくこの試合で勝った方が優勝だ!
実はこの日、僕らは遠征で泊まっていたホテルのバーで、僕らの健闘を誓って盛大にパーティーをやった。バーといっても、もちろんお酒なんか飲まないよ。
もちろん言い出したのは僕。
で、すごく盛り上がった。
みんな言いたい事を言った。
「ポアシなんか四塁線突破でボコボコだ!」とか、
「優勝旅行はサファイア星だ!」とか、
「優勝パレードでは、みんなで麦わら星をかぶろうぜ!」とか。
一方ギューリキ君はというと怪力を発揮して抱えてきた二百リットル入りグレープジュースの樽をバットで「鏡割り」なんかやっていたし、セリア君はというとエナッツ君を捕まえて、
「おいエナッツ、明日は俺様がばっちり完封するから、お前さん今夜は前祝いに徹夜で飲んでいいぞ。それから明日はベンチ入りしなくてもよろしい。ホテルで優勝祝賀会会場の準備のお手伝いでもやっていなさい!」とか。
それと「優勝のジュース掛けはメロンソーダでやる!」なんて事をセリア君が言うので僕が、
「冗談じゃないよ。絶対ジュース掛けはグレープジュースだ!」と言い返すと、ベテランの選手
たちが、
「メロンソーダもグレープジュースもダメダメ。ジュース掛けはオリーブジュースで決定!」とか言い始め、とうとう収拾が付かなくなってしまったんだ。
だけどそれに納得がいかなかったのは、当のセリア君だった。
「グレープジュースなんかガキの飲み物だ。一方、オリーブジュースはダサいおっさんの飲み物だ。若者はエクレアをつまみに、メロンソーダを飲むのが流儀だ!」なんて言って、それからカッコつけて、メロンソーダの缶のプルリングに指を掛けた。
だけどそのとき悲劇が起こったんだ。
セリア君が粋がって、その缶を「パチン!」と開けようとした、まさにそのとき、「ガキン!」という鈍い音とともにセリア君の右手の人差し指の爪が、プルリングから滑った…
「痛てえぇぇぇぇ!」
セリア君は叫んだ。
何とセリア君は、右手の人差し指の爪をはがしてしまったんだ。
そしてその指先からは、ぽたぽたと血が!
何という事でしょう!
しかもセリア君は思わずジュースの缶を床に落としてしまったのだけど、それは「不幸の連鎖」の始まりに過ぎなかったんだ。
そのメロンソーダが半開きの缶の飲み口から、炭酸のシュワーっという音をたてながら、いい匂いもさせながら、ホテルのつるつるしたダイヤモンドの床にどぼどぼとこぼれ始めた。
だけどよりによってちょうどその脇で、エナッツ君は「優勝決定!」のガッツポーズの練習をしていたのだけど、彼がそのこぼれたジュースでずるりんと足を滑らせ、思い切り叉さきになって、お尻から豪快にこけてしまったんだ。
可哀そうにエナッツ君は思い切りしりもちをついてしまったのだけど、しりもちをついたのはダイヤモンドの床ではなかった。
からんころんと転がったそのジュースの缶が、どんぴしゃのタイミングでエナッツ君のお尻の穴の真下にすべり込んだんだ。
よりによってその缶は、ぴたりと立った状態で…




