最悪の優勝決定戦その1
よりによってエース(セリア君)と、リリーフエース(エナッツ君)が同時に怪我をしたプロキオンズ。
それからみんなでホテルの庭に出て、雨乞いの儀式をやってみた。
だけど慣れない儀式なんかが役に立つはずもなく、翌日は不幸にも「最高の野球日和」となった。
そして満員の観客。
しかもシリウスの先発はエースのポアシ!
一方プロキオンズはセリア君とエナッツ君があんなだし、あとのピッチャーは例の連戦で「腰抜け」になり、ブルペンでせっせと井戸端会議中だった。
だから、やっぱり先発は最悪の状態のセリア君しかいなかった。
ちなみに僕は先発出場♪
実はみんなで相談し、「昨夜の事はバナナ監督には内緒にしとこうぜ」という事になった。
だけどしっかりばれてしまった。エナッツ君がお尻を痛そうにしていたからだ。
それでエナッツ君はバナナ監督に逮捕され、監督室に連行され、厳しい取り調べを受けた。
そしてパーティーをやったのは僕が言い出しっぺという事も供述してしまったのだ。
それはそうとポアシ先発だから、試合前の打撃練習では僕がバッティングピッチャーを務めた。
だけど僕がバッティングピッチャーを務めた事を後悔するほど、ポアシの球は凄かった。
だいたい両足ぴょんなんて、一ミリも参考にもならない。
もうポアシの執念がバリバリボールに乗り移っていたんだ。
それで一回表は秒で終了。
そして一回裏。問題のセリア君だ。
やっぱり、初っ端から投球が怪しかった。あの柔らかくてダイナミックなフォームはすっかり影をひそめ、投げるたびに痛そうな顔をしていたんだ。
だけどさらに別の大問題が発生していた。
ポアシが「例の魔球」を完成していたのだ!
この夏、エリアちゃんとセントバーナード山へ行った時、エリアちゃんが言っていた、「絶対にこのままじゃ終わらないから!」の魔球だ。
そしてそんな事知る由もない僕は初打席。
僕は手首に付けている、エリアちゃんからもらったリストバンドに目をやった。
〈セリア君は波乱含みだし、ホアシは絶好調。だからエリアちゃんには悪いけれど、僕はこの打席で絶対にホームランを打つ!〉なんてクソ能天気な事を考えながら、僕は打席に向かった。
どうやらポアシは、その魔球を僕の打順まで隠しておいたみたい。
それでその打席、珍しく初球から僕の大好きな内角球が来た。
僕は「もらった!」と思ってバットを振った。
そしたらボールが消えた!
消える魔球?
違う。鋭く落ちるパームボールだったんだ。
それも物凄い変化!
それからポアシは僕を見てにやりと笑った。
で、結局その試合、ポアシはその魔球を僕に合計九球投げ、僕はその日、三球三振三つだった。
しかもセリア君の状態はどんどん悪化。
三回にはなかなかストライクを取れなくなり、四回にはとうとう三点を取られてしまったんだ。
そしてそれが限界だった。割れた爪から血がしたたり落ちていた。
それからバナナ監督に、
「このチームの一大事に、ブルペンで井戸端会議とは何事じゃ!」と怒鳴られた、例の腰ぬけピッチャーたちが代わる代わるひょろひょろ球を投げ、小刻みに点を取られながらも、バナナ監督が巧みに投手リレーをして何とか凌いだ。
一方ポアシは八回表まで絶好調で、全く手が付けられなかった。
そして八回裏。
決定的な出来事が起こった。
最後の腰ぬけピッチャーが投球練習中の事。
小柄なそのピッチャーは、ホアシが投げる時にマウンドに出来た深い穴の淵にかかとを引っかけて盛大に又さきになりずっこけてしまい、そのまま正真正銘本物のぎっくり腰になり、担架に乗せられ、ベンチに引っ込んだんだ。
試合は八回裏。シリウスの攻撃で、得点は六対〇でシリウスの圧倒的リード!
もう残ったピッチャーはお尻の痛いエナッツ君だけだった。
だけど彼はベンチでうずくまっていた。
だから僕はもう絶体絶命だと思った。
だけどここで、どういう訳かバナナ監督が僕の所にやって来て、僕の首をしめながら僕にこんな事を言ったんだ。
「みぃ~~んなお前のせいだ。くだらぬパーティーなぞ開きおって。しかもお前、ポアシを全然打てなくなったじゃないか。いいか、この際ばっちり責任とってもらうぞ!」
「どうやって責任取るんすか? がんどぐあばでぃぐびぢべだびでいぎがぐどぅじい…」
「すまんすまん。興奮してお前をしめ殺すところだった。まあいい。とにかくお前にはこれからマウンドへ行ってもらう。投げるんだぞ! 投げるといってもサジを投げるんじゃないぞ。ボールを投げるんだ」
「どこに投げるんですか?」
「てめえどたまかち割るぞ。バッターに決まってるだろが!」
「分かった! バッターの頭、狙うんすね」
「てめえ、やっぱりしめ殺すぞ!」
「ヴぁぐゎでぃばじだ。がんどぐあばでぃぐヴぃヴぉじべだびでギャ~~~~」
「おおすまんすまん。また興奮してお前を絞め殺すところだった」
「もう勘弁してくださいよ。絞めるのはニワトリカラスにしてください」
「そうか。祝勝パーティーに鳥鍋も悪くないな♬」
「そうですね。じゃ早速ホテルに連絡して下さい♬」
「わかったわかった。じゃがしかし、鳥鍋が食えるかどうかは全て、おぬしのこれからのピッチングに掛かっておるのじゃ。わっはっは」
「え~~!そんなの責任重大じゃないですか。ででででも、ぼぼぼ僕が投げるんですね。ピピピピピピ、ピッチャーやるんですね」
「あたりまえだのクラッカー! はっきり言ってそうだ。とにかく! さっぱり打てないのだから、せめてもの償いに、投げろ!」
「でも僕が投げたら、どうなっても知りませんよ」
「わかったわかった。お前が投げて打たれたら、それはみんなお前の責任だ。改めて責任取ってもらう」
「あの、どうやって、改めて、責任取るんすか?」
「そうさなぁ、じゃぁこの次にパジャマでも着て投げてもらおうか」
「パジャマ?」〈今でもぜんぜんパジャマだい!〉
「とにかく投げるんだ! あんな糞みたいなフォームで投げられたら、誰も打てん!知らんけど」
「へぇ~、そういうもんなんすかねえ」
「そういうもんだ! ええいもうごちゃごちゃ申しておる場合ではないのじゃ。いいか、今すぐブルペンへ行って肩を壊せ、いやいや、そうじゃなかった。肩を作れ。今からわしが審判にごちゃごちゃ訳の分からん難癖つけて時間をかせぐ」
「どんな難癖つけるのですか?」
「いいからいいから」
「はぁ…」
「はぁ…じゃない!とにかく!打てない守れないだったら…ああ、いやいや、少しは守備も上手くなったな♪それはさておいて、とにかくせめてもの償いに投げろ!あのいつものでたらめなフォームでじゃ!」
つづく




