そこでセリア君に相談!
それからセリア君のマンションの部屋の入り口で、ドアに向かって「ねこじゃらし」と言うと、今度もまた機械が「オトモダチ♫」と言ってドアを開けてくれた。
中に入ったらセリア君はまた留守かと思ったけれど、今度も奥の秘密の部屋にいるらしく、またしても誰かと長電話をしているようだった。
例の虎猫は気持ち良さそうにソファーで仰向けになって眠っていた。もちろん手足もシッポも伸ばし、ソファーは虎猫で一杯だった。
だけど僕もソファーに座りたかったので、強引にシッポの近くに座ろうとしたら、虎猫は薄目を開けて僕を見て、一度背伸びをしてからあくびをして、それからくるりとシッポを曲げてくれたので、三十センチくらいのすきまが出来た。
これで何回目か忘れたけれど、「ありがとさん」と僕が言ってからそこに座ると、虎猫はもう一度背伸びをしてからあくびして、今度はシッポを僕のひざに乗せ、また目を閉じて眠ってしまった。
それにしても思い切りデジャブりそうな光景だ。
だけどデジャブといえば、何たってセリア君だ。
また長電話!
〈まったく電話魔なんだから。今日は僕、セリア君に大切な相談事があるのに!〉
僕はそう思ったので、
〈今日と言う今日は、セリア君の長電話が終わるまで、たとえ何時間でも、いや、この星の二つの太陽が二つとも西から昇ったって、何が何でもここにいてやるぞ!〉と、ダイヤモンドより硬い決意をした。
そういう訳で、僕はセリア君の冷蔵庫から勝手にいろんなものを次々に出しては虎猫と一緒に食べた。
で、その間セリア君はこの前と同様、大声で長電話!
「だからさぁ、僕らは向こうじゃ子供に見られちまうんだぜ。彼らの大人の身長だって僕らより断然高いし、体も大きいし。声だって低いんだぞ。もちろん力だって物凄く強いんだ。だからそんな計画じゃ絶対無理なんだ。もちろん政治的に干渉する時期はわかってる。そうそう。サファイア星時間で二十一世紀後半の、世界同時多発核兵器テロと、それに連なる全面核戦争だよ。それから原子力テロなんかで、放射能汚染が進んでいる国もあるし。たぶんそこは何万年も住めなくなるだろう。だけど僕らが子供に見えるんじゃ、どうしようもないじゃん。『僕たちはお外で遊んでいなさい』なんて言われるのが落ちだぜ。タイムエイジマシン? それはだめだと、前にも言ったじゃん。僕らの三十歳は…、そうそう、おじいちゃんおばあちゃんだかんな。だから援助のしようも無いしぃ、対策の立てようも無いしぃ、とにかく! 力いっぱいどうしようもないじゃないか…」
僕がこの惑星のコーヒーを飲み終え、それから冷蔵庫から出した、ありとあらゆるおいしそうなものを食べ終えても、セリア君の長電話は終わらなかったので、僕は間違えて地球から持って来て、しかもセリア君のマンションまで持って来た、例の猫じゃらしで虎猫と遊んだ。
それから、これまたたまたま地球から持ってきて、マンションにまで持って来た、ぴゃーちゃんの首輪を虎猫に付けてあげようとして、ソファーの上で虎猫を無理やり仰向けに寝せた。
たけど首輪が小さすぎてというか、虎猫が大きすぎてというか、とにかく全く付けられなかった。
そんな事をしている間にやっとこさセリア君の超長電話も終わり、セリア君は疲れはてた表情で秘密の部屋から出て来て、虎猫の仕業でぼろぼろのソファーのひじ掛けの部分にちょこんと座った。
それを見て僕は虎猫を解放してあげた。
虎猫は一度ぶるぶるしてから、シッポを二度、ぶるんと振り(怒りの感情表現)、それからとことこと台所へ歩いて行き、カリカリと旨そうにオーラム星のカリカリを食べ始めた。
それからセリア君は、
「やあ来ていたのかい。今の話聞いていただろう。また国家事業の話だよ」
「セリア君って、大変なんだね」
「まあいろいろとね。また相談を受けていたんだ」
「へぇ~、で、誰からの相談?」
「大統領だよ」
「大…」
僕は言葉を失った。
セリア君は話を続けた。
「ええと、彼女、僕らの開幕戦で始球式やってたじゃん」
「…」
「で、この手の相談事は、この前は官房長官。そして今日は大統領だ!」
「…」
「とにかく政治家ってのは科学的な話にうとくてね。何度も何度も同じ話さ。さすがに大統領の方が少し物分りは良かったけど」
僕は言葉を失っていたけれど、少し落ち着くとようやく言葉を取り戻し、それで僕はまともにしゃべれるようになった。
「そそ…、それってもしかして、平和のリレー作戦の話?」
「そうだ!」
これはチワワ浜とスコーピオンでセリア君と話した時の、主要な話題だった。
四十億年前、名前の分からない星からオリーブ星へ。
そして一億年前、オリーブ星からこのオーラム星へ…
「次はやっぱり地球だったよね?」
「そこが大問題なんだ。今のところ実行不可能だ」
「そうだったね。セリア君たちが地球では子供に見えてしまうのでは…」
「よく分かっているじゃん。ダイスケ君、この星に残って次期大統領やらないか?」
「悪い話じゃないね」
「冗談だよ。大統領なんて大変なんだから。やめとけ」
「そうだろうね。やめとく。で、ところでもし平和のリレー作戦が出来なかったら、二十一世紀の後半に僕たちの地球で、全面核戦争が起こるんだよね?」
(どか~~~~~~~ん!)
「一応そういう予定ではある」
「そうすると地球人…、一巻の終わりだよね?」
「はっきり言って、そうだ」
「で、放射能汚染も?」
「そうだ!」
「そうなんだぁ…」
「あんまり気にするな。あくまでも『予定』さ。それにまだ時間は沢山ある。何十年も先の事なんだぜ。だからきっとどこかに解決策はあるはずなんだ。僕らは今、その事を一生懸命考えているんだ。オーラム星人の知恵を結集して、何とか解決するからさ!」
セリア君は力強く言い切った。
とても頼もしかった。
でも僕は考え込んだ。
〈ところで僕、一体何しにここへ来たのだろう? 平和のリレー作戦の事をセリア君に相談に来たのかな? いや違う。確かに地球の事だけど、地球の平和の事じゃなかった。当面僕がオーラム星人の知恵を結集してでも解決してほしい地球の重大問題は…、そうだ! 夏休みの宿題の事だった!〉
それで僕はその話をした。
するとセリア君はあっさりと解決法を考え出した。
「今から地球まで取りに行こう」
「え!」
「あと三日間は試合も無い事だし」
〈でもセリア君、大統領の相談事で疲れていないのだろうか…〉
それからセリア君はばたばたと旅行の準備をし、コメット250で空港まで行くと、グレープジュースと
ケンタウルスのフライドチキンとメロンソーダを買い、早速アクエリアスで出発した。
また凄いパワーやら身動きできないやら雄大な眺めやら宇宙酔いやら宇宙酔いバスターやらで、来たときと同じような壮大な二時間の旅のはずだったけれど、トンネルを出るとセリア君が少し寄り道しようと言い出し、二時間どころではない大旅行になった。
まずはセリア君お気に入りの木星を見に行く事にした。
セリア君が言うとおり木星の縞模様はぷりぷりしていて物凄い迫力だった。それと赤い目玉のような大赤斑やガリレオ衛星のエウロパとかガニメデとかがどうたらこうたらとか、セリア君は詳しく説明をしてくれた。
僕はどちらかと言うと土星に興味があったので、土星も見に行こうと言った。だけどセリア君は、
「土星までどの位時間が掛かるか知っているのか? 結構遠いんだぞ!」とか言って土星には行ってくれなかった。
それで大人しく地球へ向う事にした。
でも途中火星にも寄り道した。オリンポス山とかいう高さが二万メートル、すそのの広さが六百キロメートルという、太陽系最大の火山があった。
で、セリア君はその火口の淵にアクエリアスを降ろし、巨大な火口や雄大な雲海を眺めたりしながら、トンネルのサービスエリアで買ったハンバーガーを食べた。
そして盛大な寄り道の後、いよいよ地球に接近した。
青い地球。
やっぱり懐かしかった。
大気圏に突入するとアクエリアスはゴーゴーと音をたて怖かった。それが収まると高度を下げ、やがて僕の家の上空へ着いた。
それからセリア君はアクエリアスを空中に静止させると、タイムマシンの日付を僕が家を出た七月二十日にセットすることにした。
「それで時間は、ええと、僕が君を迎えに行った直後の、午後十一時過ぎ…」
「あ! それよりさあ、僕がお風呂に入っている頃は?」
「そうか。その時間ならアクエリアスが鉢合わせする危険も無い訳だ」
「鉢合わせ?」
「僕が君を迎えに行った頃だから、タイムマシンの時刻に微妙な誤差が生じると、下手すると僕らが二人ずつ。アクエリアスが二機」
「そういうのって超ややこしいよね」
「そうだよな」
「だったらやっぱりお風呂の時間にしようぜ」
「了解!」
「ところで、その頃、家の人たちは何をしているんだい?」
「お父さんはふて寝中。お母さんと妹はテレビドラマに夢中」
「で、何で君のお父さんはふて寝をしていたんだ?」
「ナイター中継を見ていて、満塁ホーム、…まあいいじゃん」
「まあいいけど。思い切り大体想像はつくな」
「思い切り大体?」
「人の言い方にケチを付けるでない」
「はいはい。で、そうだろう?」
「そうだね。とにかくその時間、君の部屋は空っぽだよね」
「うん」
「それなら一番いい頃合いだ。何時頃だい?」
「夜の八時から九時」
「そんなに長湯をしていたのか?」
「いろいろ考える事があってね」
「考え事? また得意技かい。まあいい。じゃ、八時半ね」
そういう訳で、セリア君は一度リセットしてから改めて日時を「七月二十日、午後八時三十分」と入力した…、はずだった。
そしてタイムマシンを作動。
それからアクエリアスは再び降下を開始した。
やがて僕の家が見えると、アクエリアスは降下速度を落とし、それから上空数メートルの、僕の家の庭先で空中静止した。
そして僕らは家の様子を見た。
念の為、庭や二階に人がいないか確認だ。
ふて寝とテレビドラマと長湯だから、庭には誰もいないはずだった。
だけど何だか家の様子がおかしかった。
庭に何人かの人影が見え、門のところに立派な提灯が二つ置いてあり、それには「御霊前」と書いてあった。
そして玄関前に明かりが灯り、どういう訳かテーブルも置いてあり、そこに誰かが座っていた。
受付でもしているみたいだった。
そしてそんなことより何より、玄関先に『喪中』って書いた紙が貼ってあったんだ。
「やばいよ。これって御通夜じゃないか!」
何という事でしょう…後半へ続きます。




