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それは文武両道の考えだ

 僕の考え事は…

 ギューリキ君は今夜から猛練習。地獄のティーバッティング。

 エナッツ君も猛練習やったんだ。地獄の壁投げ。

 とにかく出来ない事だって、二十万回もやれば出来るようになるらしい。

 それから僕はエナッツ君とギューリキ君の姿を想像した。

 壁投げとティーバッティング。

 汗まみれの二人…

 そんな事を考えた僕は、ふと地球の監督のこんな言葉を思い出した。

「問題は守備だ。ボールはバッタじゃないんだぞ。一体全体、お前はまじめに守備の練習をしてきたのか?」

 その言葉が僕の心に刺さった。

 本当に僕は、まじめに守備の練習をしてきたのだろうか…

 それから僕は、こんな言い訳がましい事を考えていた自分を思い出した。

〈セリア君なんか、たいして練習もしないのに物凄く速い球を投げるし、走るのも速い。セリア君がうらやましいなぁ…〉


 でもそれに何か根拠でもあったの?

 本当にセリア君はたいして練習もせずに上手くなったのか?

 スポーツ万能なだけなのか?

 本当はこっそり、猛練習をしていたのではないのか?

 猛練習…

 僕は汗まみれになって壁投げをやっているセリア君の姿を想像してみた。

 だけどそれだけは何かイメージが湧かなかったけど。

 セリア君って何でもナチュラルに上手なイメージがあるから。

 だけどそれは、僕が勝手に思っていた事かも知れないし。


 それはともかく、少なくとも僕は地球の監督が言っていたように「まじめに守備の練習」をやらないといけないのではと思い始めたんだ。

 とにかく二十万回も守備練習をすれば、地球の監督が言う「バッタ取り」ではない、ちゃんとした守備が出来るようになるのではないか…、と。

 考えてみると僕は入団して最初の日、無様な守備でみんなを凍り付かせたしまった。

 確かにセリア君が「一芸に秀でているから」と言って、僕は守備を免除されたとしても、守備が上手いに越した事はないではないか。

〈だったら僕も守備の猛練習をすべきなのでは?〉


 それで、早速僕は守備練習を始めようと思ったのだけど、守備練習にはノックをする人が必要だ。だけどこんな下手くそな僕の為に、プロ野球のコーチにノックをさせるのも何だか気が引ける。 

 それでどうしようかと思ったけれど、すぐにいい考えが浮かんだ。

 ギューリキ君のティーバッティングにお付き合いして、彼の打球を捕ればいい♫

 確か彼は「早速、今夜から実行するぞ!」とか言っていた。だったら早速僕も、今夜からそれにお付き合いすればいいじゃん♫

 そうすると僕は今からは何をすべきか? 

 ところで僕は小学生だ。だから勉強が本文だ。

 それに昼間は暑い。

 それなら昼はエアコンの効いた部屋で勉強をしよう。そして夜は猛練習。

 こういうのを文武両道というのだぞ。

 きっとこれは素晴らしいアイディアだぞ♪ 

 そうすると、早速今からやるのは文武両道の「文」。

 それは夏休みの宿題意外に有り得ない!

 こうして紆余曲折の末、僕は「文武両道の考え」にたどり着いたのだった。


 そういう訳で、早速僕は机に向かった。

 まず、例のアーケードで買ったカーボンファイバー製の鉛筆を、ガスタービンエンジン付き鉛筆削りでぎんぎんに尖らせた。

 でもその前に、鉛筆削りのエンジンに燃料のひまし油を入れ、そして鉛筆削りに付いている紐を引っ張って、ぶるんとエンジンを掛ける必要があった。

 何か、とても使い勝手悪い。

 だけどこの鉛筆削りはかっこいいのだ。

 それはともかく、そうして僕はぎんぎんに削った鉛筆をずらりと並べた。

 ちなみにこの鉛筆削りの歯はダイヤモンドで出来ているので、地球の鉛筆削りよりもずっと鋭く鉛筆を削る事が出来た。

 いずれにしてもこれで準備完了!

〈よし。試合の無い四日間の「夏休み」で、宿題を全部終わらせてしまおう!〉

 そして僕は緑のナップサックを開けた。

 だけど、またまた大問題が発生していた!


 算数のプリント以外、宿題は全く持って来ていなかったんだ。日誌も習字の道具も国語のプリントも自由研究も、何もかも。

 これじゃ宿題出来ない!

 だけど考えてみると僕は、セリア君が部屋に迎えに来たあの夜、(旅行の為の荷物や夏休みの宿題、お気に入りのグローブなんかを手早くそろえて、これまたお気に入りの緑のナップサックに入れた)なんて、能天気な事を言っていたけれど、ナップサックに入れていたのは、算数のプリント以外はお気に入りのグローブと、間違えて持って来たぴゃーちゃんの首輪と猫じゃらしだけだった。

 何という事でしょう!

 だけど突然友達が「宇宙旅行へ行こう!」と、夜中に二階の自分の部屋の窓まで宇宙船で迎えに来れば、誰だって気が動転するだろう? 

 あれれ、この言い訳、前になかったっけ。

 まあいい。

 ところでどうして今まで宿題を持って来なかった事に気が付かなかったかというと、それはペナントレースやらエリアちゃんとのデートやらで忙しくて、宿題はそのうちにやろうなんて、能天気に考えていたからだ。

 そして宿題をやろうとした今、この重大な事実が発覚したという訳だ。

 せっかくやる気が出たのに、いきなり出鼻をくじかれてしまった。

 またまたまたまた嫌な気分。どうしよう?

 だけど考えてみると、こんな時頼りになるのはセリア君だ。

 彼なら最新の機械か何かをひねり出して、宿題を何とかしてくれるかも知れない。

 それで僕は、早速セリア君の黄金マンションへ、イカルスを走らせた。


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