2020 9/10(6)
楓「おはようございます~朝倉さん」
理科「…うん」
奈那子「傷の方はどうなっているの?」
理科「えっと…」
身体を少し起こして両手に意識を向けるとまだ痛みがあるが、時間が経ったからか少しだけ痛みになれてきた。胸部の方も傷は残っているものの、手と同様に痛みは慣れてきていた。
理科「…まだ痛みます」
奈那子「両手は使えない?」
理科「痛いですけど…使えなくはないです」
楓「そうですか、それでどうします? もうそろそろ昼休みも終わりになりますけどこのまま寝ています?」
理科「…今日は1日休んでいろと言われたからここにいるつもりです」
楓「正直、こんな不気味な場所よりはホテルで休んでいる方が良いと思いますけどね」
奈那子「…」
奈那子は楓に視線を向ける。その視線を受けた楓は咳をして
楓「それでは私はこれで」
スタスタと病室を出て行ってしまった。奈那子は出て行った楓を見送った後に理科と目を合わせる。
奈那子「…こんなところにいても何もないだろうから退屈そうね~」
理科「それはそうですね、寝るくらいしかやることがありません」
奈那子「4時間目の間は私がここにいることになっているからよろしく」
理科「はい、ありがとうございます」
奈那子「…」
理科「…」
奈那子「…」
理科「…」
普段全く話をしない人と何を話せばいいのか分からなかった。前回の奈那子となら話せるが、もし記憶が引き継がれていないとしたら自分の知らないことを話されたら警戒されてしまう可能性があるが…このまま黙っていても辛いので話しかけることに
理科「…奈那子さんは襲われたりしていないんですか?」
奈那子「襲われていたら今頃朝倉と同じように寝ているわよ、もしかしたら永眠しているかもしれないけど」
理科「それはそうですけど…。私以外に襲われた人はいませんでしたか?」
奈那子「全員が無いと言っているわ。本当かどうか知らないけど」
奈那子がスマホを突きながら理科と話を続ける。
奈那子「朝倉は誰に襲われたの?」
理科「分かりません。ただ人外だと思いますけど」
奈那子「人外?」
画面を見るのをやめて、目を見開いて理科を見る。
奈那子「人外って?」
前回奈那子は理科に対して好印象を抱いているとは言えなかったが、協力をしてくれた場面が何度もあるので、140㎝程度の人型で全身黒くて口が真っ赤の存在に攻撃されたことを話す。
奈那子「…それ本当?」
理科「奈那子さんは昨日どこで何をしていましたか?」
奈那子「…それって私を疑っているの?」
理科「いえ、ただ自分が襲われたのに他の人が襲われていないのは何か理由があるのかなって思って」
椿の話だと柊姉妹はホテルにいて遊んでいたとのことだが…。
奈那子「昨日はホテルにいたわよ、椿ちゃんと楓と一緒にいたわ」
理科「そうなんですか…」
奈那子「…140㎝程度ね…」
理科「…?」
奈那子「私達12人で140㎝程度の人ってさ、伊藤・清水・星名・緋色さんの4人だから何か関係しているのかなって思ってさ」
理科「私もそれは考えましたけど…あの4人がその時に何をしていたのかが分からないと真偽がつきませんし…」
本当は椿が4人は何をしていたかを言ってくれたが、4人の主張が本当なのか…椿の解釈の仕方によっては事実が虚偽になることも十分あり得るので知らないふりをして話す。
奈那子「確か…伊藤は体調が悪くて部屋で休んでいて、清水・星名の2人は自室にこもっていて、緋色だけは外にいたって言っていたかな」
額に手を当てて思い出すように唸っていた。椿が行っていた情報を一致する。
理科「…となると緋色さん?」
奈那子「緋色が朝倉を攻撃する理由…心当たりある?」
退屈を嫌う少女だ。前回も誰かを襲っていたようなところは…疑いはある。奈那子と一緒におばあちゃんを守れとあった時に、緋色・楓と遭遇している。そしてそのあとに奈那子に拉致された。それ以降緋色の姿をあまり見ていないが…
理科「…わかりません」
奈那子「朝倉の言っていた情報が本当なら、現状疑いが強いのは緋色ね。4人の中で唯一外に出ているから…ただ全身黒ずくめとなると…」
ブツブツと言っている奈那子に
理科「そういえば私のスマホ知りませんか? もしかしたら誰かから連絡が来ているかもしれません」
奈那子「? 朝倉が持っているでしょ」
理科「え」
辺りを見渡すが見当たらない。どこだろうと思って注意深く床を見たりシーツをめくったりしているとコトンと何かが床に落ちる。
理科「あれ…」
いつの間にかスマホが下に落ちていた。ここに来てからスマホを弄っていないが…
奈那子「朝倉知らなかったの?」
理科「何がです?」
奈那子「自分のスマホは他人に操作出来ないようになっているの。他の人が自分のスマホを取ろうとしても取れないようになっているわ。ほら、私のスマホを取ろうとしてみ」
奈那子がスカートのポケットからスマホを取り出して理科に向ける。理科はそれを触ろうとするが、透けて手の中に刷り込まれるように取ることが出来ない。
理科「…」
奈那子「その顔じゃ知らなかったって顔ね。気を付けなさい。もし落としたら見つけるのは困難になるわよ」
理科「…そうですね、気を付けます」
チャットアプリを開き、何か書き込みがないか確認する。
グループの方には茅野と明坂は理科が大量出血で倒れていること、どこに運ぶべきかと書き込まれていた。
緋色は学校の地下に謎の医療施設があるからそこに運んでみたらと提案がされていた。
清水はそんなよくわからない場所より病院に呼ぶべきと書き込まれていた。
楓は緋色と同じことを書き込んでいてむしろここに行くべきと提案していた。
瀬奈と星名はその緋色と楓の提案を跳ねのけて、清水の意見に同調していた。
それから明坂・茅野は理科を学校に連れていくことを決めた後にグループの方での書き込みが途切れていた。既読は11人になっているから、自分が搬送されている間から今の間までにこれを全員見たのだろう。個人の方には清水から何があったかのチャットと着信が10件以上あったが、他の人からは連絡が無かった。
奈那子「そろそろ私は戻るわ。じゃあね」
奈那子は理科の返事を聞かず、病室を出て行った。




