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12人の少女 最終計画  作者: ヤマネコ
共闘? 裏切り? 味方? 敵? 
54/164

2020 9/6(9)

ポイントが欲しいです…。

理科が部屋に戻り、何もやる気が起きずただベッドに横になっていると、傍に置いてあったスマホが光った。なんだろうと思い、手に取り画面を弄るとチャットが来ていた。差出人は伊藤だった。チャットを開封し内容を確認すると以下のことが書かれていた。


伊藤『私とグループを組まないか?』


寝ていた身体を起こして、部屋の中を見渡す。以前伊藤からこういう大事そうな話をする時、星名が潜んでいることを思い出したからだ。もし〈沈黙〉〈透明〉両方使っていたら見つけるのは困難だが、〈透明〉だけなら息遣いや服の擦れる音などで見つけることが出来るかもしれない。注意深く部屋の隅々まで目を通して耳を澄ます。


自分の息の音がうるさい。自分の心臓が脈打つのがうるさい。5分程度注意したが特に変化が無かったので、伊藤に返信をする。


理科『なんで?』


直ぐに既読がつく。


伊藤『多分今後グループにならないと切り抜けられない場面が出てくると思うのと、11人の中で一番信用できるのは朝倉だけだから。他の10人はあまり信用できない』


理科『伊藤って前から私に協力的な感じだけど、どうして?』


既読がつくがさっきまでのようにすぐに返信が来なかった。3分程度待つと


伊藤『なんとなく』


理科「なんとなく?胡散臭いな」


あれこれ理由を考えたけど説明するのが嫌だったのか、時間を空けて揺さぶってきたのか…。


理科『グループになっても大して恩恵がないように思うけど』


伊藤『朝倉は奈那子達に拉致されるような形で捕まったでしょ。その時多分スマホで文字を打つどころか、取り出すこと自体が出来なかったと思う。テレパシーならスマホで文字を打つより早く意思伝達が出来るから恩恵は大きい。私は朝倉と組みたい』


理科『少し考える時間を頂戴』


伊藤『おう』


伊藤の言う通り、次に不意打ちで襲われたらスマホを取り出す余裕もないだろうし、仮に手を切り落されたら(手を自由に動かせないことになったら)助けを呼ぶことすら出来ない可能性が高い。


それに、現状奈那子と楓には確定で自分が何か悪事を働いているということを疑われている。理科にはそんなこと全く身に覚えがないが〈記憶消去〉を持っている人が何かの理由でそこに関する記憶を消している可能性も捨てきれないので自分が全くの無実ということを証明するのは困難を極める。


椿は奈那子と楓の味方に付くだろうから助けを求めるのは難しい。


先程食堂で会った明坂・茅野・緋色・宮永の4人は一応仮で6人で組んではいるが理科の味方になるかというと、可能性は低いだろう。大好きなスイーツを理科に上げたのは、茅野による何らかの餞別なのかもしれない。どちらにせよ助けを求めるのは難しそうだ。


清水と星名に助けを求めるのも少し抵抗がある。


清水は理科の味方と自称しているが、どこまでが本心でどこまでが本心ではないのかがまだ完全に図り切れていない。伊藤が清水と喧嘩をした後に、理科と清水には距離が出来てしまい全くとは言わないが意思疎通を取るのが難しくなっている。7人と比べれば、まだ助けを求めやすいと言えるが、清水に助けを求めたらグループを作ろうと言っている伊藤と険悪になる可能性があるので気が重い。


星名は清水を助けるまでは協力的だったが、今はもう理科に対して協力的とは言い難い。清水を救出後、無断で〈透明〉になって理科の部屋に忍び込んていたからだ。それに何かと伊藤と揉めているような感じも見受けられる。清水を助けてから話すこと自体が減っているので理科自体のことはなんとも思っていない…少なくても友好的とは言い難いだろう。


瀬奈は理科に対してはモデルを強要しているくらいで、特に殺意も危害を加えようとする意志も感じられない。研究施設から逃げてきてエントランスで倒れた理科を介抱してくれたが、理科自身にはそこまで思い入れがあるようには見えない。


現状伊藤以外の人間は、理科に対して友好的とは言えないだろう。


理科「…」


これでもし伊藤が他の10人の誰かと組んでいた場合、理科は完全に孤立することになる。孤立することは最悪1人で11人を相手にすることを意味する。いくら〈予感〉で危機回避が出来たとしても、体力と気力が持つとは思えない。


というより星名が〈沈黙〉〈透明〉を使って理科に不意打ちしたら〈予感〉自体が発動できないから即死になる可能性が極めて高い。最低でも星名とは敵対しないようにしなければならない。


理科「…組まざるを得ないか」


伊藤に組んでも良い旨を伝えると


伊藤『ありがとう。これから登録をしに行こう』


理科『登録?どこで?』


伊藤『今すぐ白い部屋に来てくれ。登録は白い部屋で出来る』


理科『わかった』


横になっていた身体を起こして白い部屋に通じる扉を開けて中に入る。室内には既に伊藤が待機していて、他には誰もいない。彼女は小さな下で飴をコロコロと転がしてスマホを突いて、入ってきた理科に気付くと安心したように表情を崩した。


伊藤の元に近寄る。


伊藤「よお。少しは疲れが取れたか?」


理科「少しはね。ここにいるだけで疲れは増えていく一方だよ」


伊藤「そうか、さっそく登録しよう」


理科「わかった。どうすればいい」


伊藤「あそこに自分のスマホをかざして書かれた文章を読み上げる」


伊藤が円形の机の方を指さす。理科と伊藤の席の前には何かの窪みが出来ていて、他に席には窪みがない。いつ傷つけられたのだろうか…。


理科「…詳しいね。もう誰かと組んでいるの?」


伊藤「私達以外の10人は既にグループを組んだようだ。残りは私達2人だけしかいない」


理科「…え? いつしたの?」


伊藤「朝倉がエントランスで縛られて気絶している間に済ませていたみたいだな」


理科「…そうそう、私が目を覚ました時に伊藤の姿をした奈那子さんがいたんだ」


伊藤「それ本当か?」


理科「うん、間違いないよ。それでね」


伊藤「待って、その話は後にして早いところ契約をしよう」


伊藤が「1」の席に座り、理科が「12」の席に座る。隣同士だ。机には使っているスマホがぴったりハマるくらいの窪みと文章が書かれている。


【健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、彼女を愛し、彼女を敬い、彼女を慰め、彼女を助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓います】


理科「…なんだか結婚式の時に言うセリフだね」


伊藤「さっさと契約するぞ」


理科「わかった」


2人ともスマホをはめ込み、文章を読み上げる。


理科・伊藤「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、彼女を愛し、彼女を敬い、彼女を慰め、彼女を助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓います」


文章を読み上げると、置いていたスマホが強く光りだす。あまりのまぶしさに目を閉じて、光が落ち着いたことを見計らって目を開ける。机の上には青色の指輪が置かれていた。


理科「青い指輪…」


伊藤「私にも青い指輪が出てきた。それを左手の薬指に入れてくれ」


理科「え? どこの指に入れろとか指定がないし、どこでもいいんじゃ?」


伊藤「朝倉は右利きだろ? 利き手にあると邪魔になることが多くて、利き手じゃない方の薬指につけるのが、なんやかんや邪魔になりにくいらしい」


理科「それどこかで見たことある」


以前、ネットサーフィンをしている時に、どこかのサイトで読んだことがあった気がする。言われるがまま左手の薬指に入れると、根元までピッタリ合った。採寸をしたわけでもないのに丁度いい具合である。伊藤も同じようで、少し驚いた顔をした後に嬉しそうな顔をしている。


理科「何喜んでいるの?」


伊藤「え? 喜んでいないよ」


理科「いや、喜んでいたよ?」


伊藤「見間違いだろ。さぁ、理科の部屋に行って能力のことを話し合おう」


理科「そうだね…理科?」


伊藤「どうした?」


理科「いや、名前で呼んでいるなって…」


伊藤「朝倉と理科じゃ、呼ぶとき短い方がいいだろ。その方が伝達速度も上がるし」


理科「そんな2文字で…」


伊藤「あ? そもそも名前を呼ぶ暇なく拉致された理科がそれを言うのか?」


理科「ぐっ…」


それを言われると何も言い返せない。


伊藤「私のことはルキでいい。理由はさっき言った」


理科「わかった。これからよろしく。ルキ」


伊藤「おう」



それぞれの扉を通り、部屋に戻る。理科が部屋に戻って数分後、伊藤から部屋に入れるようにチャットが来たので開ける。


伊藤「邪魔するぞ~」


理科「そこ座って」


前回のように勉強机の前にある椅子に座らせる。


伊藤「さて、とりあえず今知っている情報全て共有しようか」


理科「いいよ」


2人で今まで知った情報・気になることを共有した。






伊藤「なるほど、そういうことか」


理科「あぁ…だからか」


2人で情報共有をしたことを纏める。まず能力だ。伊藤が持っていたのは〈精神安定〉と〈回復〉だった。他にも未確定ではあるが、誰がどの能力を持っているのかが見当がついた。


朝倉理科=〈予感〉〈身代わり〉

伊藤ルキ=〈精神安定〉〈回復〉

柊椿=〈鍵開け〉〈???〉

柊奈那子=〈追跡〉〈入れ替わり〉

柊楓=〈可視〉〈変装〉

清水社巫女=〈誘惑〉〈???〉

星名メア=〈沈黙〉〈透明〉

瀬奈来夏=〈???〉〈???〉

明坂絵美=〈鷲掴み?〉〈障壁?〉

茅野亜李=〈鷲掴み?〉〈障壁?〉

緋色沙耶=〈発見?〉〈秘密?〉

宮永美玖=〈道連れ?〉〈分解?〉


伊藤「だいぶ絞れたな」


理科「だね。やっぱり攻撃系は4人が持っていたのね」


伊藤「星名と張り込んで調べたからな。楓の能力を確定させたのは大きかった。自分からスマホを見せて教え合おうとしたところを見て、理科にはそれほど敵意はないと感じる」


理科「それは同感かな。柊姉妹で私に殺意が高いのは奈那子さんだけだし」


伊藤「椿は理科にそれほど関心を示していなかったからそれほど深刻に考えなくてよさそうだ」


理科「やっぱ瀬奈さんが一番不気味かな」


伊藤「あと残っているのは〈解読〉〈色欲〉〈記憶消去〉〈催眠〉〈収納〉〈飢餓〉だな。この中で攻撃出来るとしたら〈催眠〉〈飢餓〉持ちかな。〈記憶消去〉も怖いけど、そっちは直接的な攻撃じゃないからまだ回避できる可能性はある」


理科「〈記憶消去〉されて、記憶が消されたと確かめる方法ってあるの?」


伊藤「現状ない…と思う。文字か写真…何か特定のやり取りや記録を残して見つけた時に違和感があると思うようなきっかけを作ることが限界かと思う」


理科「だよね…はぁ。社巫女さん〈誘惑〉持ちだったのか…。少しショック」


伊藤「生徒の何人かに試しにかけているところを偶然見かけたからな」


理科「じゃああの黒猫のぬいぐるみも…」


伊藤「可能性はあるかもな。対象が人間だけとは一言も書いていない」


理科が黒猫のぬいぐるみを閉まっていた引き出しを開けて確かめると


理科「…あれ?」


伊藤「ん?」


理科「ここにぬいぐるみを入れたはずだけど…あれ?」


違う引き出しを開けるが、そこには清水の貰ったぬいぐるみが無くなっていた。


伊藤「最後にそこを確認したのはいつだ?」


理科「えっと一昨日…かな?」


伊藤「一昨日見たときから部屋に入ったのは?」


理科「部屋に入れことがあるのは…ルキ・星名さん・社巫女さんの3人かな」


伊藤「私は取っていない。上げた清水本人が取る理由がない。となると…」


理科「星名さん…。なんで?」


伊藤「知らない。本人に聞くしかないだろう。星名は私と一緒に他の人の能力を特定するときに組んだが、あまり喋らないやつで…何か理由があるのかもな」


理科「それもそうだね…」


伊藤「あと問題なのは…〈入れ替わり〉〈変装〉をされたときの対処法だな」


理科「〈入れ替わり〉は違うと分かったら解けるから良いけど、〈変装〉は楓さんがやめようしない限り続きそうだから区別が出来るかどうか…」


伊藤「何か合言葉や仕草を決めておくか?」


理科「それが妥当。何かある?」


伊藤「ワンパターンはだめだな。複数のバリエーションを取り入れないと…それも簡単に出来るようなものじゃなくて…結構キツいのが良いのかな」


理科「キツイの…? どんな?」


伊藤「んー」


2人で頭を悩ませていると、理科があることを思いつく。


理科「キス…とか?」


伊藤「は?」


理科「いやほら、キスとか抱擁とか普通しないじゃん。それなら分かりやすいのかなって…」


伊藤が「何を言っているんだこいつは」という目で見てくる。


理科「いや確かに自分でもドン引きだけど、これなら防げるのかなって…はは、やっぱりなしにする?」


伊藤「いやまぁドン引きはしたけど、言われてみると意外と悪くないのかも。確かに普通キスとかしないし、それを大して信頼もしていない人にするとか思い浮かばなそうだし…。ただ問題が…」


理科「同性でそういうことをするのは抵抗が…ってことだよね?」


伊藤「まぁ…そうなるな」


理科「…」


伊藤「…私は理科なら平気だけど、理科は私で平気なのか?」


理科「え!?」


伊藤「…」


理科「……。んー、多分平気じゃない?」


伊藤「軽いな」


理科「嫌だったら思いついても言わない。11人の中で一番信用できるのはルキだけだし…。それで高確率で判断することが出来るなら些細な物かなって…」


伊藤「…まぁ…その…。してみるか?」


理科「いま?」


伊藤「実際にする時、戸惑いがあると不自然だろ」


理科「…そうかな?」


伊藤「そうだ、楓や奈那子以外にそういう人の姿を操れる存在に出会った時のことも含めて考えると、素早く確かめなきゃ命の危機だ。早速やろう」


伊藤が椅子から立ち上がり、引き出しの前で突っ立っている理科の元に近寄るが、1つ問題が起きた。それは…


伊藤「…理科。しゃがんで」


理科「私達結構差があるもんね」


伊藤「あ? 私はチビじゃない。理科が大きいからだ。決して私はチビじゃない」


理科「分かったから、はい」


理科の身長は172㎝、伊藤の身長は147㎝で、20㎝以上差がある。伊藤は理科を見上げる形になるということになる。理科がしゃがんで伊藤と目線を合わせると、伊藤は頬を膨らませながら理科の頬に軽く唇を押し付けてくる。


チュッと少し濡れた唇を離される。伊藤の顔を見ると顔を真っ赤にしていた。


伊藤「…」


理科「…やっぱり抵抗がある?」


伊藤「ないとは言わないが…慣れの問題だと思う」


理科「そうか。私もしてみていい?」


伊藤「…いいぞ」


伊藤が頬を赤くして目を瞑り唇を震わせている。


理科も伊藤と同じように頬に唇をくっつける。自分で提案してなんだが、結構恥ずかしかった。


理科「…はい」


伊藤「…」


理科「…」


伊藤「なんか喋れ」


理科「その…ありがとう?」


伊藤「なんでそうなる」


伊藤が理科の額を軽く突く。少し痛くて、突かれた場所を擦るとそれを見た伊藤が笑っていた。理科もつられて笑う。


伊藤「はは」


理科「ふふ」


少しの間、部屋の中で2人の笑い声が混じる。先程までの不安感が減っていた。もしかして〈精神安定〉を使ったのだろうか? 


伊藤「あ、もうそろそろ夕食だな。何がいい?」


理科「焼うどん」


伊藤「はいよ。じゃあ食堂に行くか」


理科「うん」






この後、理科と伊藤は2人で食事と風呂を共にした。途中何人かとすれ違う、話をしたが、理科のことを少し警戒しているように思えた。それで不安になったが、その不安を払うように伊藤が手を繋ぎ、大丈夫だと声をかけてくれたので気持ちがそこまで落ち込むことは無かった。


夜遅くまで適当に伊藤と何か雑談をしていると、日付が変わりそうになるくらいの時間になったので、伊藤が部屋に戻っていった。


理科「さぁて、寝ようかな」


ここに来てから一番安心して眠るときが来た。


理科(誰か1人でも味方を見つけるだけでこんなに心が楽になるとは…)


部屋の電気を消してベッドに横になり、目覚まし時計を7時にセットする。8時には白い部屋に集合しなくてはならないからだ。


自分の味方になってくれる人の存在の有難さを感じながら目を閉じて就寝した。



評価・ブクマよろしくお願いします。今後もよろしくお願いします。

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