2020 9/7(1)
ポイントが欲しいです…。
理科「ん…」
鳴り響く目覚まし時計を止めて、もぞもぞと身体を起こす。まだ起きたくないと枕に顔をうずめて一日の始まりを否定したかったが、その抵抗もむなしく時計の針がチクタクと音を鳴らして動き、無為に時間が過ぎていくのを嫌でも感じさせられる。
相変わらず起きた時特有の口の臭さというか気持ち悪さと尿意を感じながら、洗面所に向かうために身体を起こして部屋を出る。お手洗いを済ませて洗面所に着くと、そこには清水と宮永がいた。2人は理科に気付いていないようで、無言で洗顔をしている。2人がいなくなるのを待とうと離れようとしたら、宮永が清水に話しかけた。
宮永「清水さん」
清水は濡れた顔をタオルで当て、横目に宮永を見る。
宮永「朝倉さんのことをどう思っていますか?」
宮永が一瞬だけ理科の方をチラッと見る。宮永と目があったが、彼女はすぐに目を逸らした。清水は宮永の方に意識が向いているようで理科がいることに気付いていないようだ。
清水「理科ちゃんが何?」
宮永「どう思っています?」
清水「友達」
宮永「それだけですか?」
清水「どういうこと?」
宮永「昨日朝倉さんを襲おうとしたのに反対しなかったからですよ」
理科「え」
予想外の内容で思わず声を出してしまう。その声は清水にも聞こえたようで、理科の方を振り返ると目を見開いている。
清水「…」
清水はそのまま理科の横を無言で通り過ぎていった。目も合わせず、下を向いていた。
理科「…」
宮永「あら朝倉さん、おはようございます」
宮永が理科にニコッとした顔をして、挨拶をしてくる。
理科「お、おはよう、ございます」
宮永「はい、それでは」
宮永も理科の横を通り過ぎていった。理科も顔を洗い、この後の集まりに何の話し合いが起きるのか…。少し不安に思いながら顔をタオルで優しく当てて化粧水を塗っていると、後ろから足音が聞こえてきた。誰かと思って鏡を見ると、椿だった。
椿は普段奈那子と楓と一緒にいるから、1人でいるところを見るのは新鮮だ。顔つきは少し疲れているようにも見るが、起きたばかりならこんなものかと思っていると
椿「あれ…」
理科を見ているように見えるが、なんというか…歩き方がおぼつかなかった。フラフラとしていて、ぺたんと座り込んでしまう。
理科「あの…」
椿「あれ…あぁ、朝倉さん。おはよう」
理科「大丈夫ですか?」
理科が椿に手を差し伸べると、椿は何とも言えない顔をしながら立ち上がり理科の手を掴む。
椿「ごめんね」
洗面台の方に連れて行こうとしたが、歩かなかった。なんで行かないのかと思って、何度か椿の手首をグイグイと引っ張ると何度かした後に歩き始めた。
何か変だなと思っていると後ろから奈那子と楓がやってきた。2人を見ると奈那子が楓の手を引いている。奈那子と目が合うが、楓とは目が合ったが合わなかったように感じた。正確には楓と目が合ったといえば合っているのだが、まるで視力が悪すぎて合っていることに気付いていないような感じだ。
楓の足取りも椿以上にフラフラしていて、とても歩くのが遅い。酔っ払いがフラフラと歩いている以上に遅くて不安定だ。まるで目隠しをして歩いているのではと思うほどだ。
奈那子「朝倉…」
楓「…」
理科「おはようございます」
椿「あら、奈那子・楓おはよう」
奈那子「おはようございます」
楓「…おはようございます」
奈那子は椿の方を見て挨拶をしているが、楓は椿がいる方向とは少しズレた方向に向かった挨拶をした。
理科「…?」
寝ぼけていて、視界がかすんでいるのだろうか?
理科は椿の手を放して洗面所から出て行こうと奈那子と楓の横を通り過ぎると、楓がビクッと身体を震わせた後、理科の方を見ている。理科に焦点が合っていないようにキョロキョロを顔を動かしていて、表情も強張っている。
奈那子「楓、こっちだよ」
奈那子が楓の手を引っ張り、ゆっくりとした足取りで椿のいる元に歩き始めた。
理科(柊姉妹はいつもこんな感じなのかな)
そのまま食堂に向かう。
食堂には、伊藤・清水・瀬奈・明坂・茅野・緋色・宮永の7人が食事を摂っていた。7人の間にはほとんど会話は無く、いつも仲良さげに談笑をしている4人もほとんど話をしていない。あの4人は今までならこういう状況でも吞気に話をしていたように思えるが…。体調が悪いのだろうか…。
理科が無言で「12」の席に座り、用意されていた食事を摂り始める。少し経つと奈那子がやってきた。椿と楓の姿がない。奈那子が自分の食事を急いで食べた後に、椿・楓の食器を手に取り、食堂から出て行こうとすると
伊藤「ここで食べないの?」
奈那子「2人とも体調が悪そうなので…」
そのまま2人分の食器を持って出て行ってしまった。
清水「どうしたのかしら…」
茅野「そういう日じゃないですか?」
瀬奈「食事中なんだけど」
明坂「女同士だし平気でしょ」
緋色「女同士でも場をわきまえろよ」
宮永「あら緋色もそういう日なの?」
緋色「ちげーよ」
明坂「この後の集まり…この11人で何を話すのかね~」
茅野「この3の席はなんでしょうね?」
緋色「な。そこにも食器が置かれているけど、私達以外に誰かいたか?」
明坂「そのはずは…。私達11人でしょ?」
宮永「そのはずですけど…。なんか違和感あります」
瀬奈「…みんな何を言っているの? 今も席に座って食べているじゃない」
瀬奈は「何を言っているんだこいつらは」という目で、4人を見る。呆れているというか、少し怒っているような印象を感じた。
緋色「は? どういうこと」
瀬奈「メアそこにいるじゃん」
茅野「メア? 何かの略ですか?」
瀬奈「星名メア。ふざけるにもやり方くらい選びなよ。それは失礼すぎ」
瀬奈が「3」の席に指を指すと、理科・伊藤・清水・明坂・茅野・緋色・宮永全員が「3」の方を見る。そこには何もないと思っていたが目を凝らして見てみると、食事を摂っている少女がいた。
伊藤「うお」
清水「うそ」
明坂「うわ」
茅野「なんで」
緋色「すげー! それどうやったの?」
宮永「…」
理科「…」
瀬奈に言われるまで、星名メアという存在を忘れていたことに気付いた。星名のことを思い足した理科は彼女の能力が〈沈黙〉〈透明〉持ちだと知っているが、食事を摂るこの状況で〈透明〉を使う理由が全く思い浮かばなかった。使うとしてもタイミングが不自然すぎる。いや、そんなことよりももっと不自然なことが次の星名の発言だった。
星名「…やっと聞こえた」
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