2020 9/3(6)
今後もよろしくお願いします。
会計をしている伊藤をお店から少し離れたところで待つ理科。
理科(…どうしてか伊藤と話すときは、しっかり話せる。社巫女さんと話すときは話せるけど、伊藤と比べるとどこか遠慮してしまうが…伊藤と話すときは何の遠慮もなく話せる…どうしてだろう。やっぱり上級生だからどうしても遠慮しちゃうのかな…)
伊藤が会計を済ませてお店を出る。時刻は午後2時。食べ終わった後もなんやかんや話していたらあっという間に時間は過ぎていった。これからの予定を考えているとスマホが震えた。画面を見てみると清水からだった。
理科(そういえば、あの男どもに襲われてから見てなかったな)
今までなら清水からチャットが来たら急いで見なければならないという使命感があったのだが、今はそんな気持ちが一切なかった。
理科(どうして社巫女さんにあんなに尽くさなきゃいけないと思っていたのかな…)
とりあえず内容を確認する。
清水『伊藤さんとはあまり仲良くなっちゃだめだよ?他の人たちも伊藤さんが怪しいと言っているから。危険だと思ったらすぐに逃げなさい』
理科「……はぁ」
危険だと思ったらって、大抵もう危険な状況になっていることが多い。しかも今まで殴り合いとか、潰し合いをしたことのない理科にとって、危険の判断基準がいまいち分からないのだから、判断するのも難しい。
伊藤「どうした?ため息をついて」
さっきまでの楽しそうに食事をしていた伊藤と違い、少し不安そうにしている。
伊藤「私といるのはつまらないか?」
理科「それはないよ」
すぐに答えると、伊藤はビックリした後、ニヤニヤとした顔で理科の横腹を突き始めた。
理科「何するの」
伊藤から少し距離を取る。
伊藤「即決で答えてくるとは思わなかったからさ。なんかうれしくて」
自分でも何故即決で答えられたのかよくわからなかった。
伊藤「さて、これからどうしようか?ゲーセンとか行く?」
理科「食べたばっかりだよ。少しゆっくりしたい」
伊藤「そうなると…そうだな…近くに大きめの公園があるからそこでゆっくりするか」
理科「それでいいよ」
2人で並んで歩き始める。時間も時間でショッピングモールにいる人は来る時よりも少しは減って、歩きやすくなっていた。ショッピングモールを出て、近くの公園に移動する。
公園内は芝生になっていて、中にはレジャーシートを引いて昼寝や日向ぼっこをしたり、犬と遊んでボールやフリスビーを投げたり、友達とバトミントンをしていたりと賑やかな笑い声が聞こえてくる。ベンチにはお年寄りの方が仲良さげに話しているところも見受けられる。
伊藤「あっちに行こう」
伊藤の後をついていくと花で囲まれている場所に出てきた。周囲には男女カップルや女の子同士で仲よさげに話している。
理科「っ」
ある男女カップルがキスをしているところを見てしまった。幸いにも理科が見ていることには気づかなかったようで、嬉しそうに互いの身体をくっつけている。伊藤はそんな光景を気にせず歩いて、あるベンチに座った。
伊藤「朝倉。ここ」
自分が座っている場所の隣を手でポンポンと叩いている。言われるがままその場所に座ると、立って見えた花の景色も座ってみるとまた違った見え方になった。
理科「沢山花があるね」
伊藤「バラにアサガオに、ひまわり、チューリップ、ツバキ、コスモス、紫陽花…他にもいくつかあるな」
理科「よくここを知っていたね」
伊藤「前に散歩していた時に偶然見つけた。良い場所だろ」
頬を緩めてドヤ顔をしている伊藤。一瞬だけ伊藤の顔を見るがムカついたのですぐに咲いている花の方を見る。
理科「本当にいい場所。ここはうるさくないし、綺麗な場所だね…。カップルが多いのが気がかりだけど」
伊藤「カップルが求めているのはこういう場所じゃないか。静かで、人がいなくて、綺麗か美しいところで…。だいぶ求めている要素が詰まっていると思うけど」
理科「……そうかもね。もう1度ここに来られるといいね」
伊藤「だったら明日にでも明後日にも来ればいいさ」
理科「1人でこの空間に入り込む勇気が私にはないよ」
伊藤「だったら私を誘えば良い」
その提案に驚いて伊藤の目を見ると、彼女もこっちを見ていた。目と目が合うが、恥ずかしくなって理科の方から逸らしてしまった。
伊藤「ふっ、私の勝ちだな」
理科「勝ちって何が」
伊藤「先に目を逸らしたのは朝倉。だから私の勝ち」
理科「なんだそれ」
伊藤の言い分が滅茶苦茶で少し笑ってしまう。
伊藤「朝倉はどんな花が好きなの?」
理科「ん~?特にこれと言っては無いかな。基本的に綺麗なら全部好きだよ」
伊藤「朝倉から優柔不断の匂いがする」
理科「優柔不断の匂いってなに?そんな匂いしないでしょ」
伊藤「いや優柔不断だと思うよ。私はこれが好き」
伊藤が指を指した花はペチュニアだった。
理科「なんでこれ?」
伊藤「なんとなく。好きになったのはなんとなくなんだよね」
理科「へー」
伊藤「あとこれとか」
違う花を指さす。エギングだった。青色と紫色のエギングがある方を指さしていてどっちの色のことを言っているのか分からなかった。
伊藤「あとは~」
また違う花を指さす。フウセンカズラ、サギソウなどだ。
理科「伊藤から優柔不断の匂いがする」
伊藤「私からはそんな匂いはしない」
理科「そうかな~」
伊藤「しないってば」
理科が周りを見ると、女の子同士でイチャイチャしている人達を見つけた。しかも唇を重ね合わせている。見てはいけないと思い、すぐに目を逸らす。
伊藤「? どうした?」
急に顔を回していたのに気づいたのか、伊藤が声をかけてきた。
理科「な、なんでもないよ」
伊藤「そう?」
そうして再び花を見つめ直しては伊藤と話して、また花を見ては話をしての繰り返しをしていると空が茜色になっていた。結構な時間をここで過ごしたようだ。
伊藤「そろそろホテルに帰るか」
理科「そうだね」
先に伊藤が椅子から立ち上がって理科の前に来る。何をするのかと思ってその行動を見守っていると、手を伸ばしてきた。彼女の顔を見てみると少しニヤリとしている。
理科(ここで手を取ったら負けた気がする…)
何に負けたのかは自分でも分かっていないが、そう感じた。手を取らないで自分の力で立ち上がる。その様子を見た伊藤はクスッと笑って
伊藤「行くぞ」
理科「うん」
2人並んで歩き始める。いつの間にか周りには自分達2人だけで、伊藤と話している時間はあっという間で楽しい時間だった。
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