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12人の少女 最終計画  作者: ヤマネコ
始まり
18/164

2020 9/2(9)

今後もよろしくお願いします。

チャイムが鳴った。時計を見ると6時限終了の時間で、もう少しすれば生徒達が一斉に廊下を飛び出して談笑したり遊んだりするだろう。


理科は立ち上がり、星名の様子を見に行く。カーテンを静かに開けてみると、ぐっすりと寝ていた。規則正しい寝息が聞こえる。


理科(…これは起こした方が良いのか。でもぐっすり寝ているしもう少し寝させた方が良いのかな…)


ほとんど交流のない人と放課後付き合うことになって、その相手が体調不良で、放課後になった今もぐっすりと寝ていたら起こすべきかどうか…悩みどころである。


理科(でも特別急ぐ必要もないわけだし…。待つか)


机に散らばっていた教科書・ノートをカバンの中に閉まって、机の上に散らばっている消しカスを手でかき集めゴミ箱の中に捨てる。星名の机を見てみると、ノートが散らばっていてシャープペンシルが転がっている。


ノートを見てみると、同じ英単語が複数書かれていて、所々英文が書いてある。英語の勉強をしていたのだろうか…。


とりあえずノートを閉じて、消しカスを集めてゴミ箱に捨ててあげた。恩を着せるわけではないが、体調が悪いみたいだし手伝えそうなところは手伝うことにした。


星名が起きるまで何をして時間を潰そうかなと思っていると保健室の先生が戻ってきた。今まで何をしていたのかと聞こうと思っていたが、先生の顔色が悪い。体調が悪いのだろうか。理科に気付いた先生が話しかけてくる。


保健室の先生「あら、朝倉さん。悪いんだけど、保健室の戸締りを任せていいかしら。今日だけじゃなくてこれからもだけど」


朝倉「…え?これからも…ですか…?」


保健室の先生「そうなの、こっちも事情があって…期間は分からないけど保健室を開けることが多くなるのよ。だから保健室の管理は朝倉さんに任せるわ。お願いね。あぁ、電話は全て出なくていいわ。体調が悪い人が来ても簡単な対処を書いた書類がそこの机に置いてあるから。申し訳ないけどお願いね」


理科の返事を聞かず荷物を整理した後、鍵を机の上に置いて保健室を出て行ってしまった。


理科「いくら忙しいからって保健室の管理を任せることないと思うけどな…」


突然の事態に戸惑っていたが、これはこれでいいかもしれないと思った。学校で自分が好きに出来る部屋が1つ出来たと思えばなんでもしたい放題だし、仮に何か問題が起きても先生に擦り付ければいいだけだ。理科の返事を聞かずに出て行ったわけだから、責められるわけはないだろうと考える。


他の先生が来ることも考慮して、カバンの中にスマホを入れて操作し始める。傍から見たら、カバンをゴソゴソと探しているように見えるだろう。入り口からも距離があるし、すぐに単語帳でも取り出して「これを探していました」という雰囲気を出せば誤魔化せるだろう。


チャットアプリを開くと個人とグループの方に書き込みがあった。まず個人の方を見る。


個人でチャットをしてきたのは、伊藤、瀬奈だった。


伊藤から見てみる。


伊藤『明日こそ、一緒に帰ろう』


短い文章だった。すぐに返信する。


理科『うん』


書き返すと、すぐに既読が付くがそれ以降チャットはこなかった。続いて瀬奈の方を見てみる。


瀬奈『モデルの約束だけど、放課後服を身に行くから付き合って。約束したよね?』


少し威圧的な文章だった。何人に同時に約束をされるのは初めてで嬉しかったが、何度も続くと嫌だと感じてしまう。


理科『すみません、体調が悪い星名さんを家に送り届けることになったので行けません』


すぐに返信が来た。


瀬奈『送り届けるも何もあのホテルに戻るんでしょ?ならすぐに合流出来るじゃない』


理科『今まで住んでいたところに戻るようです。私も1度実家に帰るので今日はお断りします』


瀬奈『大体それをするなら昨日出来たでしょ。なんで今日なの?』


返された文章を見て自分でも驚いた。その考えが全く浮かんでいなかったことに驚いた。


理科(確かに確認するなら昨日だ。なんで昨日は…。そうだ社巫女さんと話をしていたからだ! …なんで忘れていたのかな…)


瀬奈『まぁ、いいわ。じゃあ明日からよろしく』


理科『はい。すみませんでした』


既読が付くが返信が来なくなった。清水に自分の家の確認をしないのかと聞く前にグルの方を見ることにした。グループの方ではこのような書き込みがあった。






瀬奈『これさ、今まで通りの生活を送って問題ないよね?誰かと組んで一緒に行動しろとか言わない?』


椿『そういうことは決めていなかったね。どうする?』


清水『別に決めなくていいんじゃない?確かに変な状況に巻き込まれたのは変わりないけど、だからと言って強制的に誰かと行動する必要はないと思う』


緋色『清水と同意見。無理に足並みをそろえてもやりづらいと思う』


茅野『そうですね。2学期に入る前と同じ感じで過ごして問題ないと思います』


瀬奈『分かった。好きにやらせてもらうわ』


伊藤『一応誰がどこに行くか書き込んでおく?そうしておけば誰か何かあった時に助けになるかもしれない』


瀬奈『そこまでする?なんか嫌だな』


楓『でも、本当に助けが必要な時連絡する余裕がない可能性も十分にありますし能力次第じゃ自力での脱出は難しいと思います』


奈那子『じゃあ書き込みたい人だけ書き込めば?それなら問題ないんじゃない?』


宮永『それなら問題ないですね。私は書き込みません』


明坂『私は駅前のデパートに寄る』


緋色『私も絵美と同じ』


茅野『私はそのまままっすぐホテルに帰ります』


椿『奈那子・楓とその辺で遊んでからホテルに帰るわ』


奈那子『椿ちゃんと同じなので省略』


楓『椿ちゃんと同じなので省略』


瀬奈『伏せる』


伊藤『同じく伏せる』


宮永『朝倉さんと星名さんは?』


伊藤『2人はこれを確認したら返信をしておいてくれ』







ここでチャットが途切れている。


理科(星名さんを送り届ける…って書くか?でも本人の許可を取ってないし…あ、瀬奈さんにもう言っちゃったか。…目を覚ましたら考えるか)


チャットアプリを閉じて、マップ機能とカメラ機能を使ってみる。


マップ機能は、簡易的な地図が出てきて自分が今いる場所を青い丸で表示してくれるが、それ以外に特に普段使うマップ機能となんら変わりはない。


カメラ機能は、普段使うカメラ機能と変わらず写真が撮れる。これも特に変わったところは見当たらない。


理科(能力によってはこのどっちか両方を使うのかな。〈予感〉と〈身代わり〉じゃ出番は無さそう…はぁ)


1度花を摘みに行って戻るが放課後になってから1時間が過ぎる。時計を見ると17時を回っていた。いくらなんでも寝すぎではないかと思い、もう1度星名の様子を見に行く。カーテンを静かに開けてみるとさっきと体勢が全く変わっていない。


流石に待つのも苦痛になってきたと思って起こそうとすると、星名がもぞもぞと動き出した。徐々にではあるが、目が覚めてきたようだ。


星名「…んぅ。あれ今何時?」


怠そうに身体をゆっくりと起こすが、すぐに倒れてしまう。顔も真っ赤で、少し息が荒い。


理科「17時…回った…ところ」


星名「そんなに寝ていたの…」


理科を待たせたことを悪いと思ったのか、無理やり身体を起こそうとしているがなかなか起き上がれないようだ。試しに星名のおでこを触ってみると少し熱かった。もしかしたら熱があのかもしれない。体温計を持ってきて星名に渡すが、彼女は熱を計ろうとしなかった。


星名「平気、熱じゃない」


理科「でも…」


星名「平気。行こうか」


身体に鞭を打ってベッドから両足を出して地面に付ける。足取りはフラフラで、とても辛そうに見える。


理科そうだ


保健室の先生に対処方を書き込んだメモがあることを思い出してそれを見る。そこに書かれていることと星名の今の状態を当てはめて、出来る処置がどれか範囲を狭めていく。


理科(これなら、私でも出来る)


星名を座らせて処置を施していく。星名の息は荒くて身体を大きく揺らすくらいになってきた。これはもう病院に連れて行った方がいいと思える。


理科「星名さん、保険証…持っている?」


顔を小さく横に振る。


理科「1人暮らし?」


顔を小さく横に振る。


理科「じゃあ、両親に…連絡を…」


星名「やだ」


小さいがはっきりとした声だった。


理科「でも…」


星名「いやだ、あそこはうるさい」


理科「…」


星名「…やっぱりホテルに帰る。朝倉は自由に動いて良いよ」


理科「でも…」


星名「大丈夫…1人で帰れる…いたぁ」


星名は酔っぱらっているおじさんみたいな足取りをした後、出口付近の壁に頭をぶつけてしまう。どうやら出口と思って歩いていたようだ。見ていて危ない。このまま歩かしたら階段を踏み外して転倒したり、車に轢かれてもおかしくなかった。


理科(どうしよう…グルに助けを求める?それとも私1人で星名さんをホテルまでにおんぶする?…いや、職員室に行って助けを求める?)


とりあえずグループの方に助けを求めた。


理科『今学校の保健室にいるのですが、星名さんが倒れてしまいました。顔も真っ赤で呼吸も荒いです。誰か助けてください』


茅野『職員室に行って先生に助けを求めて見てください』


茅野の言う通り職員室に向かってみるが、職員室に電気が付いていなかった。


理科「え?なんで?」


扉に手をかけるも鍵がかかって開かない。中を見てみると誰もいなかった。流石に状況がおかしいことに気付く。すると理科の頭の中に星名と一緒にすぐに学校から脱出しなくては、何者かに襲われる光景が浮かんだ。


理科(なんだ…いまの。もしかしてこれが〈予感〉なのか?)


変だなと思うが、やけに現実味があった。とりあえず保健室に向かって走りながらチャットでグルの方に書き込んだ。


理科『職員室に誰一人いません。もしかしたら私と星名さんが襲われるかもです』


書き込むと同時に保健室の入り口に着くと星名が倒れている。


理科「星名さん!?」


自分のカバンと星名のカバンを両肩それぞれに持って倒れている星名をお姫様抱っこして、全速力で学校の外に向かう。


革靴に履き替える余裕がないから下駄箱をスルーして校門に出てそのままホテルのある方向に逃げ出す。


学校の方を少しだけ振り向いて走ると、さっきまで理科のいた場所に変な生き物がいた。それはまるで、てんとう虫だが…大きさがおかしい。トラック1台の大きさはある大きなてんとう虫はあちこち視線を彷徨わせているが、追いかけてはこなかった。チャットで、てんとう虫のことを書きこもうと思ったが、両手両足が現在進行形で使っているのでスマホが使えない。


星名「…はぁ…はぁ…」


息が荒い。身体もさっきより熱くなっている。星名を見てみると、彼女の目が赤くなっていた。


理科「っ!?」


星名に攻撃されると思い、思わず彼女を放そうとしてしまうが、星名が理科の首に腕を巻き付けた。


星名「はやく…逃げて…」


腕に巻き付いていた力が突然なくなり、身体がぐったりしている。目も閉じてしまっている。


そのままホテルまで全力ダッシュをした。




ホテルに着くとエントランスにいた人たちが理科を見ている。エントランスにいるのは、奈那子・瀬奈・清水だけだった。


星名をソファーの上に寝かせて両肩にかけていたカバンを放り投げる。学校から徒歩20分程度の距離を、両肩にスクールバックを2つかけて小柄とは言え人間1人を抱っこしながら全力疾走はさすがに辛かった。


清水「おかえり、何があったの?」


理科「み…ず…を」


奈那子「はい」


瀬奈「星名は部屋に運んだ方がいいんじゃないの」


清水「部屋には本人と本人が認めた人しか入れないようになっているみたい。星名さんは今気絶しているからそれは出来ない」


瀬奈「あ~なるほど、私濡れタオルとかいろいろ持ってくるね」


奈那子「お願いします」


この前清水と一緒に飲んだミネラルウォーターが渡された。なりふり構わずキャップを外して容器を傾けて水を口の中に入れこむ。


理科「はぁ…」


冷水を勢いよく飲み込んで吐きそうになるが、大きく深呼吸をして落ち着かせていると、入り口から伊藤・椿・楓・明坂・茅野・緋色・宮永が入ってきて理科の顔を見ると安心したような声が漏れる。


伊藤「朝倉。何があった」


理科は10人に保健室の先生が急に今後の保健室運用を任されたこと、職員室に助けを求めたが部屋には誰もいなくて、保健室に向かう途中にトラック程度の大きさのてんとう虫が襲って追いかけてきたこと、星名を抱きかかえて逃げたことを話した。


明坂「…」


茅野「よく逃げきれましたね」


緋色「トラック程度の大きさのてんとう虫?なにそれ」


宮永「冗談にしては面白くないですよ」


清水「理科ちゃんが嘘をつく理由はないと思うけど」


伊藤「星名は攻撃されたってこと?」


瀬奈「朝星名と話をしたけど、特に体調が悪そうに見えなかったわよ。少なくとも私の見た限りだけど」


緋色「…まぁ、とりあえず2人とも怪我がなくてよかったな」


椿「教員全員がいなくなるなんて本当にあるのかしら?」


奈那子「誰でしたっけ。肝試しで学校に行ったら白衣を着た連中がどうとか、そいつらが関わっているとか?」


椿「茂住抱月と萩野美咲だね。2人に今の朝倉の話を話してみたい」


楓「少なくとも萩野さんはダメです。捕まった後記憶がないみたいですし、話すとしたら茂住抱月ですかね」


明坂「とりあえず今後の方針を話しましょう。朝倉さんは部屋で休んでおいてください」


理科「は…い」


カバンを持って部屋に向かう。自分の部屋に戻ってくると先程の体験が嘘のように思えてきたが、制服が汗で濡れていることが嘘じゃないと告げている。とりあえず汗で濡れた制服を脱いで下着姿になる。


理科(バスタオルか何か持ってくればよかった…社巫女さんにお願いしよう)


チャットで汗を拭きたいからタオルを持ってきてほしいことを告げると「持ってくる」と答えてくれた。


布団に横になりたい衝動に駆られるが、汗まみれのまま横になっても寝る時嫌になりそうだしと、柔軟をして筋肉痛にならないようにほぐしていくが…。


理科(…これは明日筋肉痛だな)


普段運動しない身体で準備運動なしであんな無茶な走りをすれば身体にかかる負担も大きい。尻を床に付けて、上体を下に倒すが、全然倒せないで変な体勢になっていた。


理科(身体…もう少し柔らかくした方がいいのかな…)


理科の今の体勢が身体の硬い人の典型例だ。そうこうしていると清水が部屋の前に来たとチャットで告げてきた。扉を開けると少し大きいタオル1枚と湿布を数枚持ってきていた。


清水「理科ちゃん、なんで下着姿なの?」


ジト目で言われてついそのまま出てしまったことに気付いた。理科の身体を見た後、自分の身体を見てため息をついている。


理科「きゃあ!」


同性とはいえ、自分の身体を見られることに抵抗がある理科は身体を清水から見えない位置に隠れる。


清水「ここに置いておくね」


持っていたものを床に置いて、そのままどこかに行ってしまった。


理科は置かれていたタオルと湿布を取り、部屋に戻る。汗をタオルで拭って、部屋着に着替える。正直疲れて今話を聞いても受け答えをする余裕がない。頭も痛い。


そのころをチャットで清水さんに伝えると、食事を部屋に置いてくれて、お風呂も一番に入らせてもらった。


お風呂から出て、みんなの元に向かう。清水たち10人は今後の方針を話すようで、理科と星名は先に休むように伝えてくれた。星名は相変わらず気絶したままだそうだ。正直起きているのもキツイ理科は先に寝ることを伝えると何人かは怪訝な顔をしていたが、多くの人が納得してくれた。


そのまま部屋に戻り部屋の電気を消す。


理科「…すぅ」


足に湿布を張って目を閉じると、すぐに眠りについた。



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