2020 9/2(6)
今後もよろしくお願いします
自習をして少し休憩をしようとシャープペンシルをノートの上に置いて、一息つく。
保健室の先生は全員どこかに行ってしまったようで、保健室にいるのは理科と星名の2人だけだった。
星名の方を見てみると彼女は教科書を見て固まっている。ずっと同じ所を見て動かない。もしかして分からないところがあったのだろうか。
理科(でもただ何かを考えこんでいるだけってこともあるよね…)
ただ何かをボーっと考えているだけで、内容自体は分かっているかもしれない。もしそうならいきなり「分からないところがあるなら教えようか」と言っても「なんだこいつ。分かっているし、自分は勉強できますアピールか?」と思われるかもしれないと少し委縮してしまう。
とりあえずもう少しだけ様子を見ることにした。
星名「…」
星名は教科書を閉じてうつ伏せになって顔を腕の中に沈めた。問題が分からなくなって不貞寝をしたか、昼食を摂ったことによる眠気か、体調が悪いのか…。
声をかけようとしてスマホを取り出すが
理科(いつまでもチャットで会話していたら、言葉でのやりとりをしようと思う事自体しなくなるよね…)
確かにチャットなら問題なく会話が出来る。しかしこのまま数年、数十年経ってもチャットでのやりとりしか出来なかったら…ちゃんとした友達が出来るかどうか…。
理科(いつまでも…機会に頼ってばっかりじゃダメ…だよね?)
スマホをポケットにしまって星名に近づく。
星名「…?」
自分の近くに誰かが来て止まったのが気になったのか、顔を上げて理科の目を見てくる。
理科「あ……の……その……」
頭で考えた通りに言葉が出てこない。つっかえてしまう。
星名「何?」
体調悪いならベッドを使えば?
ただこう言うだけなのに…。出てこない。
理科(なんで出てこないの。伊藤と緋色さんと社巫女さんと話すときは自然に話せるのに!)
その後も身体をモジモジさせて、口を鯉のようにパクパクとさせてしまう。
呼びかけられたのに話をしないからだろう。理科のたどたどしい言葉に少しイラッとした表情をしている星名。おそらく「はやく話せ」ということを思っていそうだ。
理科「たい…ちょう…が…」
星名「隊長?」
話す勇気がなくなって空気に耐えきれず、スマホを取り出してチャットアプリを開く。グループの方にも書き込みがあったがそれは後回しにして、星名個人にチャットを書き込む。
理科『体調が悪いならベッドで寝た方がいいんじゃないですか?』
星名はスカートのポケットからスマホを取り出して画面に指を滑らせる。
星名「あぁ。そういうこと」
理科『すみません。言葉で話すのが苦手なので』
星名「それは知っている。気を使ってくれてありがとう」
理科『余計なことを言いましたすいません』
星名「ちゃんと言葉で話そうとしていた。そのまま話しかける回数を増やせば、伊藤とか緋色と話す時みたいに話せるでしょ。私もあまり喋らない方だから、次からは焦らず言葉でやろうとしていい。怒らないから」
理科『さっき少し不機嫌な顔していましたよ?』
星名「それは頭が少し痛かったからだから気にしないで。ごめんやっぱりベッドで寝てくる。グルの方で私の名前が合ったら、体調が悪いから寝ているとか書き込んでおいて」
理科『わかりました』
星名「うん、よろしく」
スマホを持ったまま、奥に用意されているベッドに行ってしまった。星名が理科の話し相手になってくれるようなことを言ってくれたので、少し気持ちが楽になる。
理科(話しかけて良かった…のかな?)
話しかける緊張で固まった身体をうーんと伸ばして、首をポキポキと鳴らす。時計を見ると4時間目終了まで5分前だった。グルの書き込みを見るには丁度良い時間だ。
グループの方をタップして、書き込まれたチャットに目を通し始めた。
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