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さようならロン。また会う日まで。  作者: 湖灯
*****中学校編(ロンとオーボエのはじまり)*****

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中学最後の大会⑧

 到着したホールはモダンな建物で、その中に入って行くとそこは体育館や映画館とは少し違った本物のコンサートホールという会場だった。


 圧倒されて「すごいね!コンサートでも始まりそうね」と里沙ちゃんに言うと「だって千春たちがやるのはコンサートでしょ」と返され、二人で笑った。


 笑った声が響きはしなかったと、特にこういうことに神経質そうな江角君を見ると、江角君もこっちを向いていて目が合った瞬間にそっぽを向かれた。


 心なしか江角君の顔が赤い。


『やっぱり……』


 なんにも知らずに喋っている里沙ちゃんには悪いけれど、江角君たら結構純情なんだと一人ニヤけてしまいそうになる顔を堪えるのがつらい。


 開会式が行われて、それから各市の予選を突破した学校がプログラムの順に演奏を始めた。


 私たちは順番が来るまで指定された席でおとなしく聞いている。


 もちろん私の隣には里沙ちゃんが座った。


 演奏の練習は指定された順番で行われるので、それまではゆっくりしていられる。


 まだ市の代表を決める予選会なのに、どこの中学もものすごく練習してきているのが伝わってきて、聞いていて鳥肌が立った。


 私が他所の中学の演奏を聴いて感動に浸っているとき、二列斜め前の江角君がこっちを向いていることに気がついた。

 さては里沙ちゃんが気になるのかなと、ほのぼのとした顔で受け止めた私とは対照的に江角君は厳しく表情を引き締めて左腕にかけていた腕時計を指さして見せた。


 いよいよ本番前の最後の練習だ。


 曲間に、みんなを誘導して会場の外に出て楽器を取る。


 練習というより音合わせが主体で各自自由に音の確認をしたり苦手な場所の練習をしたりしながら次第に緊張が高まっていく。


 特に三年生にはプレッシャーがかかる。


 というのも今回の大会に向けて三年生だけ特別にソロパートが用意されている。


 ソロと言っても同じ楽器の担当はたいてい少なくても二人以上はいて、人気のトランペットやフルートは六人もいる。


 ……それなのに、ああそれなのに私の担当するオーボエは私一人。


 しかも普通省くことの多いイントロの部分が、このオーボエなので幕が開いたとたんに私一人でそれを独奏するという大役なのだ。


 これが最初決まったとき、江角君に抗議したところ


「人に合わせる必要がないから思ったより楽だよ。それに初っ端ってところは確かに緊張するだろうけど飼い犬の世話がしっかりできる鮎沢ならきちんとできると思うし、最初にやっておけば後が楽だよ」って言われ渋々納得した。


 確かにロンの世話なら、どこでどんなに人が見ていようともしっかりやり切る自信はあるし、事実やってきた。


 でも、それをなんで江角君が知っているの……?


「本番前でーす。移動してください!」


 係の人から声をかけられて、再び会場へと入る。


 今度は別の入り口「楽屋口」からだ。里沙ちゃんも途中まで搬送を手伝ってくれていたけど、搬送が終わると手を振って会場に戻って行った。


「用意してください!」係の人の声を合図にステージに楽器を運んだ。

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