修学旅行⑦
伏見稲荷で犬と遊んだあとは、またJR線を跨いで今度は三十三間堂に行った。
シンとした建物の中には千手観音立像という観音様の仏像が千体もあり、必ず会いたい人に似た仏像があると言われている。
私は美樹さんに似た仏像を一生懸命探していたので、みんなから遅れてしまい江角君から「遅い!」と怒られて慌てて皆に追いつくように速足で進んだので美樹さん似の観音様は途中までしか探せなかった。
そして最後の目的地は清水寺は京都の町が一望でき、それに風が気持ち好い。
里沙ちゃんと柵に肘をついて、少しだけ赤くなった空の下に広がる街を眺めていたら「一緒に来たかったね」と言われ「うん」と答えた。
今頃ロンはどうしているのだろうか。
時計を見ると丁度夕食前の散歩の時間。
お利口さんのロンのことだからチャンとお母さんの言うことを聞いておとなしくしているに違いない。
散歩しながらこの同じ夕焼けに目を留めているだろうか。
私の事、少しでも想ってくれているだろうか。
会いたいと待ちきれない思いをジッと耐えていてくれているだろうか……。
私は目から零れる涙を誰にも気づかれないようにズット夕日を見ていた。





