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美樹さんの秘密④

 何か分からないけれど、年下の私から何かあったのか聞くのは失礼な気がして、美樹さんの隣にならんでおとなしくしていた。

 そうすれば美樹さんのほうから屹度打ち明けくれる気がして。

 お互いに何もしゃべらない時間があっても、ロンが目で楽しませてくれるので気まずさはない。

 ロンはコミュニケーションの橋渡し役として天才的才能を持っている。

 私たちの少し前を歩いていたロンが、ふと立ち止まったかと思うと急に美樹さんのほうに振り返って「ワン」と軽く吠えた。

 美樹さんは「敵わないなぁ~貴方たちには」と言って笑う。

『貴方たち?』私はロンと顔を見合わせた。

 そして美樹さんは、私のほうに向きなおって話を始めた。

「実は私、ニュージーランドの大学に留学することに決めたの」

「えっ……」

 驚いて次の言葉が出ない。

「座りましょ」

 美樹さんがベンチに腰掛けたので、私も座った。

「前から行ければいいなって思っていたの。だから三年までに頑張って単位は全部取ったの。それでもイザ行こうと思うとナカナカ決断できなくて……だって……だってね、大学の友達や、折角お友達になった千春ちゃんやロンとも別れなければいけないんだから」

 美樹さんの言葉に中には、美樹さんの最も離れたくない人の名前だけワザと隠されていることに気が付いた。

「いつから行くんですか?」

「四月からよ」

「いつまで向こうの大学に居るんですか?」

「最低でも3年かな」

「じゃあ私が高校2年生になるころには帰ってくるんですね」

「……」

 美樹さんは返事をしない。

「帰って来て、また遊びに来てくれるのを私もロンも楽しみに待っていますから屹度、屹度帰って来て下さい。それから兄には絶対浮気しないようにロンと私で監視していますから安心してください」

 二人に分かれてほしくなかった。

 一緒に家族として暮らしたいと思った。

 お姉さんが欲しかった。

 美樹さんは遠くの空を見上げたまま

「ありがとう。屹度帰ってくる」

 と言った。

 その声は、私たちに掛けるというより。

 自分自身に約束として掛けられた言葉の様に思った。

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