ロンと雪遊び⑨
次の日、朝起きてみると体が棒のように硬くて痛い。
筋肉痛だ。
ほかの人はみんな平気みたいで、日ごろどれだけ運動不足なんだろう。(でも毎日ロンの散歩で走っているんだけどな……)
一応、スキーウェアーには着替えたけど今日はロンと二人で見学することにした。
目の前を兄と美樹さんが仲良く華麗に滑って行く。
初心者の私が言うのも変だけど、二人ともスリムで背が高いからフォームが綺麗に見える。
里沙ちゃんが茂山さんにエスコートされて通り過ぎて行く。私たちに大げさなジェスチャーで手を振る里沙ちゃんの隣にいる茂山さんは大きくてゴツイ体格なので、まるでお父さんと娘に見えて笑える。
みんなが私たちの前を通り過ぎるとき手を振って通り過ぎるので私も手を振り返す。
私の隣にいるロンは、みんなが手を振ってくれることにはまるで関心がないみたいで、今日も黙々と雪と戯れている。
時折子供を連れた家族が「可愛い」とか褒めてくれるときは、きちんとお座りして賢そうにしたり、また気まぐれで私の膝の上に乗ってきたりして可愛い。
それにしてもロンもみんなも、なんでそんなに元気なの?
じっとしていることにも飽きて(と言うより寒くなってきた)少し体を動かさなくてはと思って誰も通らない端っこの木の近くに「かまくら」を作ろうと思った。たしかニュースか何かで見たときの記憶では、圧接された雪を四角く切り出して、それをレンガの様に重ねて作るのだっだと思う。
だけどスコップもないし圧接された雪もないので「縦穴式住居風かまくら」を作ることにした。
幸い私のパートナーは穴を掘る天才だ。
ロンは気まぐれだから「掘って!」とお願いしても屹度知らんぷり。だけど私が掘り始めると興味を惹かれて掘り出すに違いないと思いながら雪を掘っていると、案の定私の掘っている穴に鼻先を割り込まして、前足で恐る恐る引っかきはじめ最後には超速雪掻き機!
直ぐに人が入れるくらいの、大きな穴の出来上がり。
今度は掻き出した雪で建物の外壁を作って行く。
これはロンに興味を持たれると壊されちゃうので、遊んであげながらゆっくりと進める。
途中で里沙ちゃんと茂山さんが手伝いに来てくれて、特に茂山さんは意外に器用で屋根を閉じるのは無理だろうと諦めていたのに、綺麗に作ってくれた。
ロンと私、里沙ちゃんと私くらいまでなら十分入れる大きさだけど大きな茂山さんだと一人でギリギリだったし似合わな過ぎて里沙ちゃんと二人で笑った。
茂山さんは壁を倒さないようにゆっくり出てきて、日本人と犬のつながりは、この縦穴式住居に住むようになった1万年ほど前からだと教えてくれた。
犬たちは住居と言う空間に住むようになった人たちが安心して寝られるように番犬として大切にされていたらしい。
そこで里沙ちゃんと私が基地(かまくらもどきの縦穴式住居もどき)に入って茂山さんに、追い出したロンを外に出してもらうと、ロンは「中に入れろ!」と言わんばかりに吠えた。
「全然番犬にならないじゃん!」
里沙ちゃんも私もロンにそう言って笑った。
暫くして里沙ちゃんたち二人はまたスキーをしに行って、私とロンは基地の中。
「二人っきりの我が家て、なんだか落ち着くね!」
ロンにそう言うと、ロンもそう思ったのか私の顔をペロッと舐めて、もたれかかるように寝転んできた。





