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さようならロン。また会う日まで。  作者: 湖灯


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ロンと雪遊び⑤

 兄たちに交じって里沙ちゃんも目の前を滑って行った。

 私と同じ歳なのに上手なのに驚いた。


「いいなあ~里沙ちゃんはスポーツが得意で」


 私なんか、ちっとも運動ができなくて唯一自信のあった中距離走だって、運動会では失格になっちゃったし。

 急に久しぶりのスキーが憂鬱になってきた。


 ザザーッという、かき氷を削るような音を立てて横向きに兄が減速してきて止まる。


「俺が代わるから美樹、千春に教えてやってくれる」

「OK!駿!」


 駿というのは兄の名前。

 それにしても美樹に駿。

 どちらも名前を呼び捨てとは仲のよいことで……。

 それになんだか、かっこよすぎる。


 私はロンに「行ってくるね!」とバイバイをしてリフトのほうに向かった。

 実は私もスキーは初めてではない。


 私もロンにかっこういいところ見せてやるんだ。

 なにせ幼稚園の時に行ったスキー遊びでは、上手いと先生から褒められた実績がある。


 その証拠にノルディッククロスカントリーの選手みたいにバタ足でちゃんと歩いているでしょ……「あっ! コケたあ~(××;)」


 すぐに起き上がるつもりだったけど、自分のスキー板をもうひとつの自分の足に着けたスキー板が踏んでいて、どうしたら足をちゃんとした向きにできるのかなかなか分からなかった。


 やっと足の向きがそろっても今度は起きようと力を入れるたびにズルズルと滑って力が入らない。

 美樹さんの差し出してくれた手にしがみついてようやく起き上がることができた。

 前途多難……。

 初心者コースのリフトを上がり、美樹さんに教えてもらいながらボーゲルで降りてくる。


 今日は天気がいいから周りの景色はきれいなんだろうなと思いながら、自分の足元しか見ることができない。

『滑る』というより『雪に引っかかりながら下っている』といったほうが正しい気がする。


 スキー場に到着した時の自信は、もうかけらもない。

「ワン!ワン!」


 兄がロンを連れてきたのは分かったし、ロンの声が私を応援してくれているのも分かる。

 わざわざロンを連れてきてくれた兄にはあとでお礼を言えばいいけど、ロンには今の私のこの”おっかなびっくり”の顔は見られたくなかった。


 私は俯いていた顔をロンに向けニッコリ微笑む。

 その予定だった。


 ところが、俯いていた顔を上げてロンのほうを向こうとした瞬間に両足が急に前に滑り出して尻もちをついてしまった。


 ここまで辿り着くまでに何度も同じ体制で転んだけど、尻もちをつくことでお尻がブレーキの役割をしてくれてすぐに止まった。


 ところが今回はロンの手前、少しでもカッコいい所を見せようとしたからか、尻もちをついたお尻は、平行に揃えられたスキー板の上!


 直滑降のような状態になり、徐々にスピードが出ていく。

 私のスピードに合わせるようにロンも並走して走り出す。

 リードは兄が一緒に滑りながら持っている。


「きゃ~~っ!」止め方が分からない。


「転んで!寝転んで!」兄と美樹さんの声が聞こえるけど、これ以上転ぶのは怖いし、怖くて体も動かない。

 スピードはどんどん上がっていき、そろそろコースの端の木が近くに見えてきた。


 相変わらずロンは体育祭の時と同じように”かけっこ”と勘違いしているのか私と並んで走っている。

 と、思っていたら喜びすぎたのか急に私に抱きつくように飛びかかって来た。


『きゃ~っ!そんな、今飛びつかれたら転ぶ!!!』

 次の瞬間、ロンに抱きつかれた私は見事に転んで体中雪まみれ。


「もう!ロンのバ……」

 そこまで言いかけたとき「カツン!」と言う高い音が聞こえて前を見ると、足から外れたスキー板が木にぶつかっていた。


 ロンは雪まみれの私の上をまるでエサを獲得したオオカミのように喜びに満ちた表情で飛び跳ねていた。

 寝転んで雪まみれの私に更に鼻先で雪をすくって掛けてくる。


 私も仕返しに手で雪を投げつけるとロンは伝家の宝刀とばかりに犬掻きで連続攻撃!


「わかった!わかった!負けたわよ」

 笑顔でロンに降参をする。


 涙で濡れた目をロンがかけてくる雪が隠してくれた。

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