気になるロン④
夏休みの課題で出された読書感想文を書くために私の選んだ小説は川端康成の「古都」
お話は、赤ん坊の時に老舗呉服問屋の前に捨てられて、そこの夫婦の子供として大切に育てられた千恵子と、捨てられずに北山杉の林業の村で育てられた双子の苗子とが出会って、そして分かれるお話し。
京都の四季折々の風情の鮮やかさを惜しげもなく盛り込まれたお話の中に、今の二人の身分の違いに会いたい気持ちを我慢してまで、別れを決意する苗子の寂しい心情が描き出されていた。
読み終わって、感想文を書いていた途中でハッと閃くものがあり後ろを振り返った。
私の後ろには、いつものようにロンが暇そうに寝転んでいた。
私は腰掛けていた椅子から飛び出すと直ぐにロンを抱いた。
屹度ロンはロンなりに身分の違いや、病気なんかが移る心配をして私と距離を置いていたのではないだろうかと思った。
距離を置かれた違和感は私にしか感じないから家族には分からない。
飼い始めて、私の不注意でロンを事故に合わせてしまった時、兄はロンの知能が4歳くらいしかないと言ったが、私が気がつかないでいたことをチャンとロンは気が付いて、それを表に出さずに隠していたのだから私なんかよりズット賢い。
気が付いてあげられなくて、ロンに一人だけ寂しい思いをさせてしまったことを泣きながら詫びた。
そしてロンに言った。
「私が大人になって、結婚するまではズット私の彼氏でいてね」
ロンは泣いている私を宥めるように優しく私の目からあふれ出る涙を舐めとってくれていた。





