雅也と俊貴
「……どっちも嫌だ。俺は必ず帰るって約束したんだ」
「この状況でどうやって生き残るんだよ?だったら、一回くらい俺と本気でやりあって見ないか?」
「……ちなみに兵器の能力は?」
「俺のは一部強化型だ。腕一本でお前のこと殺せるぞ」
俊貴は実に楽しそうにニヤリと笑う。
一部強化。たぶん、こいつは腕が強化されてるから腕一本という表現を使ったんだろう。
「勝てっこないんですけど」
「いいじゃねえか。それに……こうしとけば、忘れないだろ?」
「……!!」
そうだ。俊貴だって死にたいわけがないんだ。でも……こいつはもう覚悟を決めてる。なら、俺だって覚悟を決めないわけにはいかない。
「……わかった。俺、お前と戦うよ。……死にたくないけど」
「いい心がけだ。言っとくけど、武器は使用不可だから」
時間はもう無い。とりあえず、一発だけでも入れられれば。
ギュッと拳を握って、俊貴の動きを見る。
(……やばっ!こいつ、本物だ……)
気づくと、思い切り殴られていた。口の中で血の味がする。
足に力を入れて、倒れないように踏ん張る。
俊貴は兵器としての能力は使っていない。でもマジだ。
俺は俊貴を見た。さっきと変わらず、とても楽しそうな顔をしている。
ゴンっと頭突きを食らった。……ずるくないか?あ、でも、武器じゃないか……くそ、石頭め。
額から、血が流れている。でも、そんなこと気にしない。……絶対こいつに一発当ててやる……。
俺は鳩尾を狙った。がむしゃらに放った一発は見事に俊貴にヒットし、俊貴は何度か咳き込んだ。
「……やるじゃん、雅也……」
「……俊貴、お前はどうするんだよ……?」
「え?お前、俺の事覚えてたの?」
「違う。そんなこと今はどうでもいいんだよ。お前は俺を助けてくれるって言った。でも下手したら死ぬかもしれない。それで自分は確実に死ぬんだろ?そんなのでいいのかよ!?」
「……仕方ないんだ。この方法じゃ助かってもお前一人だけだ……」
「その方法って何なんだ?」
「投げる」
「はぁっ!?」
何ですと?ちょっと、信じられない言葉を聞いた気が……。
「いいか?もう、残りは1分を切った。崩壊の瞬間に俺はお前を投げる。少しは高さ減ってると思うし、ナハネ族だから頭とか強く打たない限り生き残れると思う」
いやいやいや!無理だって!絶対死ぬって!
「……時間だ。行くぞ!」
「えぇっ!ちょっ!マジで!?」
俺の抵抗もむなしく、俊貴に軽々と持ち上げられてしまった。
「いっけぇー!!」
「えぇーっ!?」
俊貴に投げられ、放物線を描くように飛んでいく俺。
その瞬間大きな爆発音がした。建物は一瞬にして崩れ、俺は爆風により、さらに遠くへ飛ばされていく。
一瞬見えた俊貴は俺に向かって何かを叫んでいた。でも、爆風で飛んできた破片が頭を直撃し、そのまま俺は意識を失ってしまった。




