奪還、そして
由季は絶対に俺を亡きものにしようとしている。
腕と一体化したナイフを次々と俺に向けて突き出してくる。
それを懸命に避けるのだが、徐々に壁際に追いつめられていった。
背中に壁が当たる。ついに俺は追いつめられてしまった。
「くっ……」
由季は俺の体めがけてナイフを振り下ろした。俺は咄嗟にその腕をつかみ、ナイフが刺さるのを阻止する。
だが、腕は一つではない。それは兵器も同じだ。
由季は自由な左腕をナイフと同化させ、俺のわき腹に突き刺した。
「がっ……!」
やばい、でも、今この腕を放すわけにはいかない。
痛みに耐えつつ、俺は精一杯の笑みを浮かべる。
「つか、まえたぞ……。俺は……もう、絶対に……お前のこと……離さないからな……」
わき腹に左腕が刺さったまま、俺は由季を抱きしめた。
離れようと抵抗する度に耐えがたい痛みが俺を襲う。
「うっ……!ぐぅっ……!」
それでも俺はこの体を離すわけにはいかない。離したら……もう二度と会うことはかなわない気がした。
「いや……だ、よ……!助けて……!」
由季がつぶやく。一瞬、由季の記憶の一部が俺に流れ込んできた。
「えっ……?」
その途端に由季の体から力が抜け、そのまま俺に体重がかかる。武器と同化していた両腕が元に戻り、左手は俺の血で濡れていた。
(君たちが私のたった一つの希望なんだ!さあ、急いでここから逃げて。後は私が何とかするから……!)
由季から流れ込んできた記憶、それはおそらく俺が見た夢の直前の記憶なんだ。
「……ま、さか……?」
俺は由季を抱きしめたまま倒れ込む。
まさか……俺たちが荻野さんが助け出した二人の子供なのか?
「うっ……」
考えようとしても傷の痛みが邪魔をして深く考えることが出来ない。
やばい……、頭が全然働かない……。でも……まだ何も解決してない……。
由季は気を失っているだけみたいだ。
俺は由季を横たわらせておき、立ち上がった。
……とは言っても、ほとんど気力だけで立ってるようなものだけど。
「はあ……はあ……はぁ……」
呼吸を落ち着けて先生が上がっていった階段に向かおうとした。でも、俺は由季をほったらかしにすることなんて出来なかった。
俺は、由季が目を覚ますまでここにいることにした。
「ん……」
「由季、大丈夫?」
気がつくとわたしは知らない場所に倒れていた。
目の前には、お兄ちゃんをそのままおっきくした感じの人がいた。その人がわたしの名前を呼んでいる。
「お兄、ちゃん……?」
この人はお兄ちゃんなの?でも、わたしは…。
「うん、そうだよ。大丈夫?具合が悪いとか、ない?」
大きなお兄ちゃんはわたしに手を貸してくれた。でも……そのときに見えてしまった。
お兄ちゃんは怪我をしていた。真っ赤な血がわき腹からたくさん出ている。
「お兄ちゃん!けがしてるじゃない!どうして……」
わたしの左手は……赤かった。もしかして……。
「もしかして……わたしが、お兄ちゃんに……?」
「違うよ、たまたま由季の手に血が付いただけ」
そう言って首を横に降るお兄ちゃんの顔はなんだか青白かった。
「でも、わたしの手……」
「大丈夫だよ、俺のことは気にしないで、ね。由季、ここで待ってて。ちょっと用事があるんだ」
お兄ちゃんはそう言って立ち上がった。ふらふらしていて大丈夫そうに見えない。
「いい?ここから動いちゃだめだよ」
最後にお兄ちゃんはそう言って階段をのぼっていってしまった。




