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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第6章・立てこもり事件
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差し向けられる追っ手

「ふんっ。バカだなお前」

ニコルは目の前で電話の受話器を置いた男に言った。

現在、ワーナル総合病院内のほぼ全ての人間が一カ所に集められていた。そしてそこにいる全員が後ろ手に縛られている。

そこは三階・ナースステーション。普段、ニコルやウィンなどが看護師との打ち合わせに使う場所だ。

「お前たちがマサヤとウィンを襲った犯人なんだろ?あいつ等がおとなしく戻ってくると思うか?」

ニコルの言葉に男は訝しげな視線を向ける。

「どういうことだ?」

「やっぱバカだ。お前、自分がやってることわかってねーもん」

挑発的なニコルの言葉に男は怒りを露わにした。

男は見張りに立たせておいた少女をニコルに差し向ける。

「次に同じようなことを言ったら殺す。ここにいる患者も含めてな」

「ちっ……」

ニコルは舌打ちし、そっぽを向いた。


「YK01、外から状況を確認してこい。MSAAAを発見したらまず医者と引き離せ」

「……了解」

ニコルは少女が気になり、去っていく少女を見る。なんだか、見覚えのある顔立ちだ。

「部長、部長」

「なんだい?」

小さな声で部長に声をかける。

「あの女の子、誰かに似てませんか?誰かって聞かれるとちょっとわかんないんすけど」

「うーん……。どうかなあ?私にはよくわからないんだが……」

「あと、ここから脱出する算段を考えましょう。あいつ、ウィンに電話かけてたんで、ウィンたちたぶんすぐ戻ってくると思うんですよ。二人が戻ってきたら俺、あいつに襲いかかってやろうかと思って」

「ほーう。一矢報いてやろうと言うことだね。いいじゃないか」

部長は頷く。

「ちょっと必要なものがあるんですけどね」

そういって、ニコルはニヤリと笑った。




「……標的捕捉……」

少女は自転車に乗ってやってくる二人の影を視界の端に発見した。

自転車を乗り捨てる二人。

その様子を確認した後、素早くロビーに移動した。


自転車を乗り捨てて病院内に入る。すると、そこには由季がいた。

「由季!」

「……」

由季は無表情で俺に武器を向ける。武器は……腕と同化していた。

「……一部、変化型だ……」

なんか、覚えのない単語が俺の口から出た。

「一部変化型?……あの子の兵器の形のことか?」

「えっ?いや、わからないです。たぶん、そうなんだと思うんですけど……勝手に口から出ました」

「ん?どういうことだ?」

「……敵戦力、二名。内一名が標的です。もう一名はどうしますか」

由季は小さな声でつぶやいている。

「……了解」

たぶんどこかに先生に電話をかけてきた奴がいるはずだ。そいつと連絡を取っているのだろう。

「……標的捕捉。敵戦力分散モード、起動」

由季は俺と先生の間に割り込み、俺に切りかかる。

「先生!みんなを探しに行ってください!たぶんもう一人は由季ほど強くはないと思います!」

「何言ってんだよ!?それじゃ敵の思うツボだぞ!」

「俺としては二人だけの方が好都合です!」

振り下ろされる腕をかわしながら先生に言った。

「……わかった!絶対戻ってくるからな!それまで死ぬなよ!」

先生はそう言って階段を駆け上がっていく。

これでこの空間は俺たち二人だけだ。

「……さあ、来い!」

俺は丸腰だが、逃げるつもりもないし死ぬつもりもない。

ここで……、絶対に由季を取り戻す!

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