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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第6章・立てこもり事件
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相手の要求

マサヤは想像以上に物覚えがよかった。……ていうか、上達早すぎ。

「お前、ほんっとーに自転車乗ったことないの?」

「?……はい、ありませんよ。見たのだってこの前先生が乗ってたのが初めてですし」

でも……何か普通にもう乗れるようになっちゃってるんだよな。

「先生、早く本返しに行きましょうよ」

「ん?ああ、行くか」


図書館に着き、さっさと本を返して一息つく。

ひと休み中、初めて乗った自転車の感想をマサヤに聞いてみた。

「なあ、チャリに乗ってどうだった?」

「コツさえつかめれば結構簡単に乗れるんですね。俺、難しく考えてたみたいです」

「ふーん。そっか。じゃあ…」


ぴりりりり。


あ。電話だ。

図書館にいた人全員の視線が俺に集中する。

「先生、図書館はマナーモードじゃないとですよ」

マサヤに小声で注意された。

「わかってるよ」

同じように小声で返し、携帯ディスプレイを見た。

病院からだ。急いで図書館から出て、電話にでる。マサヤはその後を小走りでついてきていた。


「はい、ウィンストンです」

『…覚えているか?』

……誰だ?でも、聞き覚えのある声だ。まさか、この声は……!

「お前!あのときの!……あん時はよくもやりやがったな!」

『ふっ。そんなことを言ってる余裕があるのか?俺がここにいるということは……どういうことだかわかるな?』

「!!」

「先生!どうしたんですか!?」

『MS……杉崎雅也をつれてワーナル総合病院に来い。そいつの命と、人質ここにいる全員の命……どっちを選ぶかはお前次第だ』

ブツッ!と音を立てて通話は途絶えた。

「くそっ!あいつ……」

「何があったんですか!?」

マサヤは真剣な声で俺に聞く。

「まただ……またあいつ等がお前を狙ってる……!!病院にいる全員と、お前の命……。それで交換条件を出してきた……」

「……」

一瞬の沈黙の後…

「先生!早く帰りましょう!急がないと!!」

マサヤはこう言った。

「はあっ!?何言ってんだよ!行ったらお前死ぬんだぞ!?」

「俺は、そんなに簡単に死ぬつもりはありません。それに……これはチャンスです。由季を取り返せるかもしれない」

マサヤは俺を見据え、強気な笑みを浮かべる。

なんだ……?こいつ、ここ何日かの内に劇的に変わった気がする。この変化は……友達が出来たからとか?……まあ、今は考えてる場合じゃない。そこはまだ置いておこう。

「……わかった。戻るぞ。ただし、気をつけないと……あいつ等はお前の命を狙ってんだからな」

「わかってます」

「無理するなよ。俺たちはあくまでも警察が来るまでの時間稼ぎだ」

「はい」

「よしっ!確認完了!急ぐぞ!」

俺たちは自転車に乗り、全速力で病院に急いだ。

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