ICチップと借りた本
「……にき、兄貴。朝ですよ、起きて下さい!」
「んん……あれ、カイ……?」
なぜだか、カイに起こされた。
「兄貴、リディナ先生が呼んでます」
「……なんだろう……?」
俺はむくりと起き上がり、つぶやく。
「なんか、ICチップがどうのって言ってましたよ」
「ICチップっ!?」
あれか!一週間前の襲撃の時の……。
「兄貴、急いだ方がいいっすよ?」
俺はさっさと着替え、場所を聞いて部屋を出た。
「待ってたよ、スギサキ君」
「す、すいません……」
リディナ先生は嫌な顔ひとつせず待っていてくれた。
「いやいや、いいんだよ。呼び出したのはこっちだからね。……で、カイくんに簡単なことは聞いたね?」
「はい、ICチップって言ってました。それって俺の体内から出てきたっていう……」
「そうそう。それを勝手で申し訳ないんだが、検査に出しておいたんだ。そうしたら……」
先生は一瞬沈黙した。
「そうしたら?」
「発信器と盗聴器と……もう一つ何かよくわからないプログラムが組み込まれていたらしいんだ。おそらくよくわからないプログラムは、暗号化されているんだと私は思うんだが」
もう一つはたぶん本体プログラムだろう。そしてそれが、俺を……兵器に作り替えていた。
「先生、そのチップにはそれ以上関わらない方がいいと思います。……危ないです」
「それはもちろんだよ。君はこのチップのせいで襲われてしまったようなものだからね。じゃあ、これは処分しておくね」
先生はチップをポケットの中にしまった。
「呼び出しておいて悪いんだが……実は話はこれだけなんだ」
「そうなんですか?じゃあ、もう戻ってもいいってことですか」
「ああ、いいよ」
「はーい。じゃあ、失礼します」
俺は自分の部屋に戻り、机の上に置いてあるあの本を手に取った。
「そうだ。この本、返しに行かないとだ」
たぶん、ウィン先生は外出を許してくれない。どうするか……。
「一応、交渉してみようか……」
とりあえずウィン先生にダメもとで言ってみよう。
「ん?本を返しに?」
ウィン先生は机に向かっていたが俺が言うとすぐに顔を上げた。
「はい、そです」
「うーん、どうするかな……」
「本当に本を返しに行くだけなんですけど。寄り道もしませんし」
「でも、それは俺のカードを使って借りたんだろ?」
「む……」
確かにそうなんだけど……。
「延滞したらイヤじゃないですか」
「確かに……、俺が延滞したことになるし……」
そうつぶやいたあと急に黙り、何か思いついたような顔をした。
「……あっ。そうだ。よし、じゃあいくか」
ん?何か急に素直(?)になったけど……何か怪しいな。何を考えてるんだろ…?
ウィン先生は俺を駐輪場まで連れてきた。
「よし、じゃあチャリで行くぞ」
「はあ。それで……?」
「はい、乗る」
えっ。なんですと。
「え?……は?ちょ、ちょっと!何言ってんですか!俺乗ったことないんですから、乗れるわけがないでしょう!?」
「いいからいいから。ほれ、乗って」
俺はこれに乗るつもりはない。なのに……。
「とっとと乗れやー!」
えぇっ!?なんか逆ギレー!?
「は、はい!わかりました!乗りますぅ!」
こ、怖い……。
「うん。素直でよろしい」
……なんか、ハメられた?




