準備万端、変装して出発
出かけるときになってニコル先生は言った。
「変装した方がいいと思うぞ。もしお前を狙ってるやつらとかにバレたら大変だし」
「変装ですか?」
変装するにしても俺は服だって持ってないのに、どう変装すればいいんだ?
「でも俺、なんにも持ってませんよ」
「いいもん貸してやるよ。ちょっと待ってろ?」
ニコル先生はそう言ってどこかに行ってしまった。
時間は12時45分。まだ平気だろう。
「やば、痛み止め忘れるとこだった」
俺は薬を飲みながら、ニコル先生が戻るのを待つ。
それにしても危なかった……。薬飲み忘れたらせっかくの外出許可が水の泡だ。
「……苦い」
毎回思うのだが、なんで薬ってこんなに苦いんだろ。良薬口に苦しって言うけど。
「お待たせ。変装グッズの到着だ」
ニコル先生は帽子と眼鏡と、なんだか俺には似合わなそうな服を持ってきた。
「この服……誰のですか」
こんなパンクファッション、この人は着ない。
「この前バイクで事故って運ばれてきた兄ちゃんのやつだ。お前、絶対こんなカッコしないだろ?ギャップあっておもしろいかなと思って」
「着ません。断固拒否します」
「そう言うと思ってた。これはお前いじりのネタだよ。ちゃんと別のもん用意しといたから」
今度はきちんとした物をニコル先生は持ってきてくれた。
「うんうん、どこから見てもガリ勉高校生にしか見えないぞ。」
俺は、学生が着ているワイシャツとスラックスの格好だ。眼鏡をかけ、帽子をかぶって髪を適当に束ねてみた。
「ガリ勉って……。その呼び方やめてくださいよ……俺勉強できないし……」
なんか、そうはっきり言われると……嫌だな。
「そうなのか?ま、気にすんな。よーし、じゃあ行ってこーい。あ、チャリ貸してやろうか」
「チャリ?」
「ん?その反応は……お前、もしかしてチャリ知らないのか?」
「はい。チャリってなんですか?」
ニコル先生のこの反応を見ると意外とポピュラーなものみたいだ。
「まあ……簡単に言うと乗り物だな。でも、練習しないと乗れないからまた後でだ」
なんだろう。気になるな。でもいいや。
俺は徒歩で図書館に向かった。
「ん……?」
時計を見ると午後1時を過ぎていた。でも今日は休みだ。気にしない。
でも、少し気になることもある。
諦めないと言ったマサヤが昨日はなにも仕掛けてこなかった。アイツはいったいどんな手に出るつもりなんだ?
「わかんねえな……電話して聞いてみるか?」
……なんかアイツに負けた気がして嫌だ。
あ。
「そうだ。俺もアイツの民族について調べてみればいいんだ。よし、そうしよ」
図書館か……。行くのなんて受験シーズン以来かもしんない。
てことは、もう十年近くあそこ行ってないんじゃね?
「貸し出しカード、残ってるといいけどな……」
ここからだと歩きはきついよな。でも車じゃ短距離すぎだし。チャリで行くか。
ていうか俺……、まだチャリ乗れんのかな……?




