マサヤの企み
ウィン先生は戻っていった。多分空気の重さに耐えきれなかったんだろう。
今は俺とニコル先生の二人だけだ。
「なあマサヤ、ウィンは本当にお前のこと心配してああ言ってたんだからな」
「……わかってます」
ウィン先生の優しさは十分過ぎるほどわかっている。でも、それじゃだめなんだ。
「……ニコル先生、近い内に外出を許可してください」
「そうしたいのは山々なんだけど……、お前の担当はウィンだからな。俺にはどうすることもできないんだよ」
ニコル先生は困った顔で言った。そうか、やっぱり無理なのかな……。
「あ。でも、部長に言えばなんとかなるかも」
「ぶちょう?」
「ん、お前にとっては部長じゃなくてリディナ先生だな。あの人冴えないビジュアルだけど見かけによらずすごいんだ。なんてったって部長だから」
「確かに、すごい人ですよね」
「マサヤにはあの人がちゃんとすごい人に見えるのか……」
俺はリディナ先生のことをすごい人だと思ってるんだけど、ニコル先生はそうは思っていないようだ。
「すごくないんですか?」
「まあ……、すごいと言えばすごい。でもウィンがいないときじゃないと許可は出ないと思った方がいいな」
ウィン先生がいないとき……?どんなときだ?
「ウィン先生がいないときなんてあるんですか?」
気になったので聞いてみる。
「夜勤の後はな。俺だって、夜勤の後は一回家に帰るぞ?」
あ、そっか。確かにロナさんは夜勤だったから今はいないんだ。
「ウィン先生はいつが夜勤なんですか?」
「えっ?えと、明日かな」
「明日……」
明日か。ということは明後日はいない。
「じゃあ、明後日ぐらいに許可もらいに行っていいですか」
俺の言葉にニコル先生は一瞬沈黙した。
「…お前、悪い奴だな」
「なに言ってるんですか。先生も共犯ですよ」
「……まあ、そうなるとは思ってたんだけどな……」
ニコル先生は頭を掻いた。
でも、ニコル先生はいい人だ。本当に止めようと思うのならウィン先生のシフトなんか教えてくれないだろう。
「……先生、ありがとうございます」
「よせよ。照れるからさぁ……」
「俺、できるだけ迷惑かけないようにします。無理なこともあるかもしれないですけど……それでも、俺は諦めません」
「……マサヤ、俺とウィンのやってることは正反対だけど、考えてることはだいたい一緒なんだ。……だから、無茶はすんなよ」
ニコル先生はそう言った。
少し……罪悪感もあるけど、これはチャンスだ。
俺はニコル先生の言葉に頷いた。




