ウィンVSマサヤ
なんでだ?つーか、マサヤが言いたかったことの意味が分からない……。
「あははは!腕相撲対決か!楽しそうだな!」
ニコルは本当に楽しそうに俺とマサヤを見ている。
マサヤは、レフェリーをしてもらうためだけにニコルを呼び出したらしい。
「ニコル先生、レフェリーお願いします」
「おうっ!まかしとけ。…ready…fight!!」
ガンッ!!
「いっ……てぇっ!!」
「勝者、マサヤー!」
テーブルはやっぱり堅い。そして痛い。
俺は一瞬のうちにマサヤにあっさり負けていた。
「どうでしたか?」
「どうでしたか?ってお前……」
俺は言いたい。お前はなにが言いたかったんだと。
「痛いに決まってんだろ?お前、これの意味、あるか?」
「もちろんありますとも。俺が言いたかったのは、研究者はこの1.5倍を狙っていたんじゃないかと思うんです」
「1.5倍?何の話だ?」
ニコルは会話が気になるらしい。
「マサヤは『ナハネ族』っていう少数民族なんだと」
「普通の人と比べると身体能力が1.5倍くらい上なんです」
「へえ、だから腕相撲が強いのか。ナハネ族ねえ、俺は知らないけど、図書館とか行ったら本があるかもしんない」
「図書館……」
マサヤは意味深につぶやいた。まさか……。
「行くとか言うんじゃねえだろうな?ダメだぞ。外出禁止だ」
俺が言うと、マサヤはかなり不満そうに俺を見ている。
「……何でですか」
「いいじゃんか。元気そうだし、泊まりがけって訳じゃないんだからさ」
ニコル……お前は楽観的だな……。
「……お前等は、バカか」
「ウィン!バカなんて酷いだろー!俺はバカじゃないもーん!」
あ、ニコルはバカじゃない。ガキか。
「……何でだめなんですか」
マサヤはマサヤで「何で?」の一点張りだし……。
「じゃあ……死ぬか?」
「嫌です」
「なあ……ちょっと、大げさじゃないか?」
その言葉にニコルは引っかかるように言葉を返した。
「いやいや、大げさなんかじゃないぜ?マサヤ、ちょっと傷見せろよ」
「えっ?」
マサヤはきょとんとしながらも服をめくる。
「昨日の傷か?ガーゼ貼ってあって傷の様子は見えないけど」
「じゃあ、ちらっとはがすからな。マサヤ、お前も自分の状況を把握しとけ。……いくぞ?」
ぺりっと、ガーゼをはがす。
……間。
「やべえよ!これはダメだって!」
「……俺、怪我を甘く見すぎてました……。これは痛いに決まってますね……」
「わかったか。それにだな、お前は命を狙われてるんだぞ?」
ガーゼを貼り直しながら俺は言う。
「あっ、そっか。そうなんだよなぁ。昨日襲われてるしな」
「……じゃあ、どうすればいいんです。俺、このままじゃなんにもできないじゃないですか」
マサヤはいてもたってもいられないようだ。でも、俺だってこいつに無茶させる訳にはいかない。
「……お前の気持ちは分かるよ。でも、最優先するべきはお前の命だ。もし万が一、図書館に行って研究者に目撃されれば、また襲われるんだぞ」
「っ……」
マサヤは悔しげに唇を噛む。
早く情報を仕入れて妹を助け出したいのはわかる。でも、今は外出を許可することはできない。
「……」
「……」
部屋の中がすごく重い空気になってしまった。
「……俺、戻るわ」
沈黙に耐えられなくなった俺は戻ることにした。
「あ、待ってください。」
帰り際にマサヤが声をかけてきた。
「なんだ」
「……今は、わかりました。でも、俺は諦めません」
「それでもいいけど、俺は強情だから。なかなか大変だぞ」
マサヤはいい顔をしている。負ける気なんて全然無いんだろう。……やっぱり、マサヤは前向きだ。




