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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第4章・被害の後。止められないあいつ
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ウィンVSマサヤ

なんでだ?つーか、マサヤが言いたかったことの意味が分からない……。

「あははは!腕相撲対決か!楽しそうだな!」

ニコルは本当に楽しそうに俺とマサヤを見ている。

マサヤは、レフェリーをしてもらうためだけにニコルを呼び出したらしい。

「ニコル先生、レフェリーお願いします」

「おうっ!まかしとけ。…ready…fight!!」


ガンッ!!


「いっ……てぇっ!!」

「勝者、マサヤー!」

テーブルはやっぱり堅い。そして痛い。

俺は一瞬のうちにマサヤにあっさり負けていた。

「どうでしたか?」

「どうでしたか?ってお前……」

俺は言いたい。お前はなにが言いたかったんだと。

「痛いに決まってんだろ?お前、これの意味、あるか?」

「もちろんありますとも。俺が言いたかったのは、研究者はこの1.5倍を狙っていたんじゃないかと思うんです」

「1.5倍?何の話だ?」

ニコルは会話が気になるらしい。

「マサヤは『ナハネ族』っていう少数民族なんだと」

「普通の人と比べると身体能力が1.5倍くらい上なんです」

「へえ、だから腕相撲が強いのか。ナハネ族ねえ、俺は知らないけど、図書館とか行ったら本があるかもしんない」

「図書館……」

マサヤは意味深につぶやいた。まさか……。

「行くとか言うんじゃねえだろうな?ダメだぞ。外出禁止だ」

俺が言うと、マサヤはかなり不満そうに俺を見ている。

「……何でですか」

「いいじゃんか。元気そうだし、泊まりがけって訳じゃないんだからさ」

ニコル……お前は楽観的だな……。

「……お前等は、バカか」

「ウィン!バカなんて酷いだろー!俺はバカじゃないもーん!」

あ、ニコルはバカじゃない。ガキか。

「……何でだめなんですか」

マサヤはマサヤで「何で?」の一点張りだし……。

「じゃあ……死ぬか?」

「嫌です」

「なあ……ちょっと、大げさじゃないか?」

その言葉にニコルは引っかかるように言葉を返した。

「いやいや、大げさなんかじゃないぜ?マサヤ、ちょっと傷見せろよ」

「えっ?」

マサヤはきょとんとしながらも服をめくる。

「昨日の傷か?ガーゼ貼ってあって傷の様子は見えないけど」

「じゃあ、ちらっとはがすからな。マサヤ、お前も自分の状況を把握しとけ。……いくぞ?」

ぺりっと、ガーゼをはがす。





……間。





「やべえよ!これはダメだって!」

「……俺、怪我を甘く見すぎてました……。これは痛いに決まってますね……」

「わかったか。それにだな、お前は命を狙われてるんだぞ?」

ガーゼを貼り直しながら俺は言う。

「あっ、そっか。そうなんだよなぁ。昨日襲われてるしな」

「……じゃあ、どうすればいいんです。俺、このままじゃなんにもできないじゃないですか」

マサヤはいてもたってもいられないようだ。でも、俺だってこいつに無茶させる訳にはいかない。

「……お前の気持ちは分かるよ。でも、最優先するべきはお前の命だ。もし万が一、図書館に行って研究者に目撃されれば、また襲われるんだぞ」

「っ……」

マサヤは悔しげに唇を噛む。

早く情報を仕入れて妹を助け出したいのはわかる。でも、今は外出を許可することはできない。

「……」

「……」

部屋の中がすごく重い空気になってしまった。


「……俺、戻るわ」

沈黙に耐えられなくなった俺は戻ることにした。

「あ、待ってください。」

帰り際にマサヤが声をかけてきた。

「なんだ」

「……今は、わかりました。でも、俺は諦めません」

「それでもいいけど、俺は強情だから。なかなか大変だぞ」

マサヤはいい顔をしている。負ける気なんて全然無いんだろう。……やっぱり、マサヤは前向きだ。

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