表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛しの仮面夫婦  作者: 結塚 まつり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/32

因果は廻る

お母様と呼ばれなくなったのはいつか。

息子の笑顔を見なくなったのはいつか。

公務以外の会話をすることがなくなったのはいつか。


――ヘレナは何一つ、覚えていなかった。



***



「……そ、んな、ことは、そなたに、関係ない」

「ええ、そうですね。あなたとヴィクのこれまでの母子関係について、わたくしが口を出せる領域ではありませんもの」


あれほど核心をつく質問をしておきながら、アンネリーゼはあっさりと引き下がった。王太后は僅かに当惑した雰囲気さえ見せる。


「ですが」


アンネリーゼはにっこりと微笑む。


「今後殿下には、陛下との接触をなくしていただきます」

「……何ですって?」


王太后は眉根を跳ね上げた。


「そのようなこと、陛下が許すはずがーー」

「ええ、これはわたくしの独断です。ゆえにわたくしは、あなたに自発的に(・・・・)王宮から去っていただきたいと思っているのですが」

「は、そのようなこと、あたくしが受け入れるとでも」

「ええ、あなたは必ずこれを受け入れます」


自信たっぷりにアンネリーゼは言う。その泰然自若ぶりを、王太后は鼻で笑った。


「随分自信がおありだこと。その高い鼻を折られて塞いでしまわなければいいけれど」

「ご心配には及びません。わたくし、あなたと違ってそれほど弱くはありませんから」

「わたくしが弱いと言うの? 王の母に対して堂々と侮辱をなさるのね」

「事実ですものーーそして、あなたの弱さが、ノルドヴァルの崩壊を招いたのですわ」


王太后は一瞬固まった。次の瞬間、立ち上がりアンネリーゼの頬を打つ。綺麗に彩られた長い爪が、アンネリーゼの頬を傷つけた。はぁはぁと、王太后は肩で息をする。


「ノルドヴァルの崩壊をあたくしが招いたですって……? 性質の悪い冗談ばかり口にするのがお上手なようね」

「お褒めに預かり光栄ですわ」

「誰が……!」


王太后は声を荒げた。


「お前が! お前たちグレーデンがノルドヴァルを奪ったのだろう!」


王太后の面には、普段の落ち着きも美貌もない。ただ、祖国を奪われた憎しみだけが横たわっている。


「お前たちが、気紛れで我が国を蹂躙したから!」

「気紛れではないわ。先ほども言った通り、あなたの弱さがーーひいてはあなたの国の弱さが、事を招いたのよ」

「ノルドヴァルに非があったとでも言うのか! 非常識な冬の進軍を、それで理由づけようと!? 正当化だけは相変わらず上手いようだな!」

「例の少ないことではあるけれど、非常識ではないでしょう。歴史上でも、雪の最中の進軍は稀にあるわ」

「その稀なことをする理由もなかったであろうが!」

「まさか。理由なくばグ、レーデンは兵を動かさない」


パリンっ、と陶器が砕ける高い音が響く。茶器を投げた王太后は、ぜぇぜぇと荒い息を吐いていた。


「言い訳も大概にせよ! 我が身がそれほど可愛いか!」

「Som man reer, ligger man.」

「……何?」


ヘレナは顔を歪めた。


「……因果応報だと? そなた、言うことに欠いてッ……!」

「あなたの兄――先のノルドヴァル王太子は、あなたの婚儀を祝う席で、グレーデンを侮辱した」


アンネリーゼはゆったりとソファに腰掛け、ヘレナを見上げる。


「よりにもよって、王家四兄弟の中で一番性格が悪いと言わしめる、アーノルド叔父様の前で」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ