喜び沸く王宮
ようやく本編に戻って参りました〜
「――思えば、わたくしたちが外でのいちゃいちゃをやめて、もう3年も経っているのね。驚いちゃうわ」
「そうだな」
「ねえヴィク、あなた、外で子供たちにデレデレしないと誓える?」
ヴィクトルは言葉に詰まった。
確証は――全くない。どちらに似た子供であっても、ひどくにやけてしまうような気がする。夫婦仲が冷え切っているのに、子供にはでろでろに甘いなど――違和感を抱く貴族は少なくないだろう。
「そろそろ潮時かもしれないわね」
「.......そう、だな」
ねえヴィク、とアンネリーゼはヴィクトルの頬に手を添える。
「よく、考えましょう。これからのことと――終わらせるべき、過去のことを」
「あぁ」
***
回廊を飛ぶように走っていたヨナスは、前方にカイを見つけ、思わず声をかけた。
「あ、カイ先輩!」
「お、ヨナス。走り回ってるな」
「はい……もうほんと忙しくて」
「そりゃあそうだ」
呵呵と先輩は笑う。
「何しろ、妃殿下のご懐妊がとうとう公になったからなぁ」
――王妃アンネリーゼの懐妊が公にされたのは、つい十日前。安定期である五ヶ月に入ってからのことであった。
公にする前は、悪阻を悟られぬようにと侍従たちが奮闘し、公にした後は謁見やらお祝いやらの対処に追われている。仕事の量は以前の比ではないが、それでもヨナスたち侍従は、我が事のように王妃の懐妊を喜んだ。
「で、この後の予定は?」
「陛下に書類をお渡しして、謁見の申し込みを処理して、あと、近く慰問に行かれるご予定ですから、馬と護衛の手配と警備の再確認を……」
「山積みだなぁ」
「先輩だってそうでしょう?」
「まぁなっ! ま、ここが俺たちの踏ん張りどころだ」
カイは凛々しい顔で前を向く。
「妃殿下がご出産されるまで、その安全は何においても優先される。万一にも危険を持ち込まないこと――それが俺たち侍従の役目だからな」
「っ、はい!」
「相変わらず声がでかいっつーの」
「う、すみません」
ヨナスは首を竦めた。なはは、とカイは笑う。
「さ、行くぞ。仕事が俺たちを待ってる」
「可愛い女の子に待っていてもらいたいです……」
「はっはっは、独り身には夢のまた夢だなぁ!」
「悲しいことを言わないでくださいよ〜!」
***
「……懐妊、ですって?」
「は、はい……」
ダンッ、と王太后は机に拳を打ちつける。
「なぜもっと早く気付かなかったのです! 公にされるまで悟れぬとは何事ですか!」
「申し訳ありません……!」
マルコは頭を下げた。今回の懐妊の報は、マルコを含め、多くの貴族にとって寝耳に水であった。すでに安定期に入っていると聞いた時には、誤報を疑ったくらいだ。
ぎり、と王太后が歯を噛み締める音が聞こえる。
「グレーデンの王女が……あの国の女が、陛下の子を産むですって?」
許せない、と呟いた声は、空耳であったのかどうか。
「キヴィランタ侍従」
「は」
「あなたは、あたくしに忠誠を誓っていますね?」
「……はい」
反同盟派であるマルコは、正直なところ、講和を進める国王夫妻よりも、王太后に思想が近い。だからこそ、侍従として働く先として、ここを選んだ。
――けれどそれは、本当に正しいのだろうか。
父と乳兄弟を殺したグレーデン。恨めしく、憎らしい元敵国。憎んでいる時は、苦しみも悲しみも忘れられた。
だというのに。
――策を立てたのは、我が国の公爵閣下だ。
随分前から、あの言葉が胸に刺さって抜けない。身動きが、できない。
「ならば――やるべきことは、分かりますね?」
ひどく甘く、耳に纏わりつくような声音だった。
マルコは顔を上げそうになったのを、なんとか堪えた。
「……全ては、王太后殿下の仰せのままに」
七夕ですね〜皆さんは何かお願い事しましたか? 私は億万長者になりたいです。




