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早瀬湊の日常  作者: 彩心
運動会

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19/20

本番 後編

 『応援団は集合場所に集まって下さい』


 放送でアナウンスされ、俺達は集合場所に向かう。


 ──いよいよか。


 少し緊張しながらグラウンドに出ると、どよめきが起こった。


 たくさんの視線を感じるが、気のせいだ。


 どうせ、朝陽と要を見ていて俺じゃない。


 気にするな……俺っ。


 入場門に着き、俺達は靴と靴下を脱いで裸足になる。


 待ち時間の間、緊張をほぐそうと軽くストレッチをしていると名前を呼ばれた。


 「早瀬君」


 「奈帆ちゃん!? どうしたの? 紅組は退場門の所で集合でしょ? 早く行かないと」


 「そうなんだけど……えぇーと」


 奈帆ちゃんはもじもじとしながら、視線を逸らした。


 え、これって……。


 「奈帆ちゃん……学ラン姿似合ってるね。かっこいいし、可愛い」


 奈帆ちゃんは嬉しそうに笑った。


 「本当? 嬉しい。ありがとう。早瀬君もかっこいいよ」


 「……ありがとう」


 これって、やっぱり……そうだよな。


 「早瀬君、お互い頑張ろうね!」


 俺は笑って「おう」とだけ返事をした。


 奈帆ちゃんは手を振りながら、走って集合場所へ戻って行った。


 俺はその背中を見つめ続ける。

 

 「青春は終わったか?」


 要がそう言いながら、俺の肩に顎を乗せてきた。


 「あぁ……」


 「じゃあ、円陣組むか」


 要は軽く伸びをすると、みんなの真ん中に立った。


 「円陣組むぞー!」


 「「おぉー!」」


 その声ですでにみんなの気合いが入っているのが分かる。


 「今日まで俺達は頑張った。田中が出れなくなったアクシデントもあった。それでも──」


 要が大きく息を吸う。


 「俺達は最強で最高だ! 本番、全力で行くぞー!!」


 「「おぉー!!」」


 「俺達で伝説を作るぞー!」


 「「おぉー!!」」


 「白組!」


 「「ファイオォー!!」」


 よしっ、気合いが入った。

 

 みんなの顔もさっきまでとは違う。


 俺達の間にはピリッとした空気感があり、引き締まった。


 要、凄いな。


 自分勝手な要が、ここまで人をまとめられるなんて思っていなかった。


 今は要がいるから大丈夫って思える。


 立派な団長だよ。


 ドンッ、ドンッ、ドンッ!


 太鼓の音が鳴った。


 入場の合図だ。


 俺達は駆け足でグラウンドの前方に移動す

る。


 『それでは──白組応援団による演舞』


 放送が響く。


 応援席や観覧席に向けて「お願いしまーす!」と要が頭を下げる。


 俺達もそれに続いて「「お願いしまーす!」と頭を下げた。


 歓声が上がる。


 顔を上げると、応援席の前方に人が集まり、みんながスマホを向けているのが見えた。


 心臓の音だけが、やけに大きく聞こえる。


 息を吸う。


 吐く。


 「……行くぞ」


 要の低い声が聞こえた。


 次の瞬間──


 「たった一度のこの瞬間! 蒼天そうてんに咲かせろ! 俺たちの白きあかしを!」


 ドンッ!!


 「「ヤァー!」」


 「行くぞ! そうてん乱舞らんぶー!!」


 「「オォー!」」


 ドコドコドコドコ──!


 俺たちは最初の隊列にそれぞれ移動する。


 太鼓の音が腹の奥に響く。


 ドンッ!!


 俺たちは一斉に踏み込み、右足を強く叩きつける。


 「「ハァッ!!」」


 声が揃う。


 空気が震えた気がした。


 視界の端で、要が先頭に立っているのが見える。


 腕を振り上げる動き一つで、全体のタイミングがピタッと揃う。


 ここは、練習で何回もやった。


 体が勝手に動く。


 ドンッ、ドンッ!


 足を踏み鳴らしながら、隊列が大きく変わる。


 視線が一気にこっちに集まるのが分かった。


 ……来た。


 俺の位置だ。


 心臓が跳ねる。


 でも、不思議と怖くない。


 さっきまでの緊張が嘘のように全部消えている。


 あるのは高揚感。


 チラッと朝陽の方を見た。


 あいつ、笑ってやがる。


 ──上等だ。


 ドンッ!!


 俺は一歩、前に出た。


 腕を振り上げる。


 「「ヤァー!!」」


 声を張る。


 思いっきり、振り抜く。


 空気が裂けるみたいな感覚。


 観客のざわめきが、一瞬止まった気がした。


 ……見てる。


 今、俺を見てる。


 奈帆ちゃんも──いや、もういい。


 誰でもいい。


 全部まとめて見てろ。


 ドコドコドコドコ!


 太鼓がさらに強くなる。


 隊列がまた動く。


 今度は朝陽が前に出る。


 無駄のない動き。


 一つ一つの動作が綺麗すぎる。


 思わず見惚れそうになる。


 「キャー」と女子の歓声も一際大きく聞こえる。


 ……けど。


 俺は歯を食いしばる。


 ここは、あいつらの舞台じゃない。


 俺たちの舞台だ。


 全員で作ってる。


 ドンッ!!


 もう一度、足を叩きつけた。


 声を張る。


 体が熱い。


 頭が真っ白だ。


 でも、それが気持ちいい。


 要が笑っている。


 朝陽も、楽しそうに動いてる。


 だったら、俺だって。


 負けてられるかよ!


 ドンッ!!


 「「ヤァー!!」」


 声が重なる。


 音と動きが、ピタッと揃った。


 その瞬間、観客席から大きな歓声が上がった。


 分かる。


 今、俺たちの演舞が()()()()


 鳥肌が立つ。


 体の奥から、何かが込み上げてくる。


 これが──応援団。


 これが──()()()()()()

 

 でも、まだまだこっから!


 ドコドコドコドコ――!


 太鼓の音が加速する。


 隊列が一気に広がった。


 「ラスト行くぞ!!」


 要の声が響く。


 来た。


 最後の見せ場。


 全員が一斉に構えに入る。


 空気が変わった。


 さっきまでの熱とは違う。


 ピンと張り詰めた、一瞬の静寂。


 ドンッ!!


 「「ハァッ!!」」


 要が一歩前に出る。


 俺たちは視線を合わせて、頷いた。


 俺はそのまま地面を強く蹴った。


 ふわっと体が宙に浮く。


 視界が一瞬、ひっくり返る。


 空。


 逆さまの景色。


 1……2……3。


 ──いけるっ!


 体を丸めて、回す。


 ドンッ!!


 着地。


 少しだけ足が揺れたけど、踏ん張った。


 顔を上げると観客席が見えた。


 自分の呼吸音だけが聞こえる。


 次の瞬間──。


 「うぉぉぉぉぉ!!」


 さっきよりもデカい歓声が上がった。


 ……ははっ。


 やべぇ。


 めちゃくちゃ気持ちいい。


 隣を見ると、要がニヤッと笑っていた。


 朝陽も、珍しく楽しそうに笑ってる。


 「決まったな」


 「あぁ」


 俺も笑った。


 ドンッ!!


 最後の一打。


 「「ありがとうございました!!」」


 全員で頭を下げる。


 歓声が止まらない。


 息が上がってる。


 汗もやばい。


 でも、そんなのどうでもいい。


 顔を上げる。


 空がやけに綺麗に見えた。


 ……これが。


 「……最高じゃん」

3人のかっこいい姿を書きました(^^)


私は箱推しなんですが

皆さんは誰を応援したくなりますか?

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