本番 中編
午後イチの応援合戦に向けて、俺達は昼ご飯を早く食べ終えた。
空き教室で俺達応援団は、衣装の学ランにみんなで着替える。
「おぉー、かっけぇー」
初めて着た応援団の衣装に、俺はテンションが上がった。
長ランには副団長の刺繍も入っている。
白のタスキをかけて、腕章も付ける。
最後に白い手袋をつけると、気持ちがビシッと引き締まった。
「なんか……応援団って感じ」
「応援団だろ」
俺の感動に要がツッコンでくる。
「うるさ……は?」
要の方を向くと、爆イケ男がそこに居た。
「お前……それはズルいだろ……」
「何がだよ」
要は少し長めの自分の髪を、ハーフアップに適当に縛っていた。
それが応援団の服と合いすぎて、爆イケ男が誕生していた。
「お前……突然腹が痛くなったりしない?」
「しねーよ。湊、何なんだよさっきから」
「いや……お前かっこよすぎない?」
要は一瞬俺を見て、呆れた目を向けてきた。
「……何を今さら言ってんだよ。俺はいつでもかっこいいんだよ」
そう言って、トンっと俺の胸を軽く殴ってきた。
「いつもなら腹立つのに、今日は……くそっ、悔しい」
「ハハッ、ごめんな。俺がかっこよすぎて」
やっぱり、ムカつく。
これじゃ俺、確実に空気じゃん!
奈帆ちゃんも、絶対要の方見ちゃうじゃん!
……待てよ。
要でこれって事は……。
俺は慌てて朝陽の方を見る。
「あれ? 朝陽は?」
「ん? アイツどこ行った?」
その時、ガラッと教室のドアが開いた。
着替え終わった朝陽がそこに立っていた。
「なんだよお前。もう着替え終わってたのかよ」
「あぁ、髪の毛セットしてきた」
な、なんだよ……なんだよ、なんだよ!
ビジュが天才すぎるだろ!
髪なんかハネさせちゃってさ……。
いつもの適当朝陽はどこへ行った!
「朝陽! なんでそんなやる気満々なんだよ!」
「え? だって、午後から本気だすって言ったじゃん」
「言ったけどさ……」
「それに、田中君だっけ? その子のためにも頑張らないとな」
朝陽は珍しく、フワッと柔らかく笑った。
「そうなんだけど……、そうなんだけど!」
田中君の事情を聞いて、文句も言わずに二つ返事で頷いてくれた事はありがたい。
でも、ここまで本気を出さなくても……。
感謝の気持ちと嫉妬心が、俺の感情をぐちゃぐちゃにする。
「あー……」
「要、今の湊使いものにならないから、フォーメーションだけ確認させて」
「そうだな。練習中に撮った動画あるから送る」
「助かる。ありがとな」
2人はスマホを見ながら、真剣な顔をして何かを話し合っている。
「はぁー……かっこいいな」
外見はもちろんだけど、田中君や応援団のために真剣になってさ。
俺は自分が目立たないって、拗ねて……。
かっこ悪い……俺、めちゃくちゃダセェ。
「はぁー……」
俺は大きなため息を吐いた後、頭をガシガシ掻きむしった。
今回はもう、モテとか気にしない!
こいつらと張り合おうなんて無理だ。
俺は朝陽達を見た。
俺も伝説を刻む側になる!
朝陽と要の元へ行き、俺も振りの最終確認をした。
──やってやる!




