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早瀬湊の日常  作者: 彩心
運動会

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15/20

自主練

 帰り際、俺と要は去年の動画のデータを貰い、先に振りを覚える事になった。


 全体練習は来週から。


 あと、5日しかない。


 「覚えられるかな……」


 「大丈夫、覚えられるって」


 朝陽が俺の肩を叩いて励ましてくる。


 「旗持ちのお前が言うなよ……」


 「旗手きしゅの座はゆずらない」


 一番楽そうという理由で朝陽は旗手になった。


 旗手は旗手で大変そうだけどな……と俺は思ったが、何も言わないでおいた。


 せっかくやる気になってるし。


 俺達の横で、要は真剣に動画を見ていた。


 「どう? 覚えられそう?」


 「ん? あぁ、大体覚えた。後はどこでバク転をいれるか……」


 「え? 改良しようとしてる?」


 「当たり前だろ。なんのために団長になったと思ってんだよ」


 「代々受け継がれてきた伝統は?」


 「そんなもん、知らねーよ。俺はやると言ったらやる。バク転もバク宙も」


 そう言って、要はまた動画に集中した。


 俺も動画を見て一通りの流れを見る。


 全員の動きが綺麗に揃っていた。


 ……すげぇ。


 かっこいい。


 これ、俺がやるのかよ……。


 俺、出来んのか?


 「不安だ……」


 思わず口から漏れた。


 それを聞いた要が「大丈夫」と自信満々に答えた。


 「何でお前はそんなに自信があるんだよ」


 「これより良いもん作れるからに決まってんだろ」


 「は?」


 「俺が新しい伝統作ってやるよ」


 要はニヤリと笑った。


 「明日までに、俺が改良版を考えてくる。湊、明日から練習するぞ」


 「分かった。そこまで言うなら……期待してるぞ」


 その夜、俺は家で一人必死に振りの練習をした。


 次の日の昼休み、俺たちはグラウンドの隅に集まった。


 朝陽は木陰で呑気にジュースを飲んでくつろいでいた。


 それを横目に、要は去年の動画を流して、スマホを地面に置いた。


 音と要の振りが完璧に合っている。


 もう、全部覚えたのかよ……。


 早すぎるだろ……。


 後半部分に差し掛かると、要はいきなりバク転をしだした。


 バク転を連続で決めた後、最後にバク宙をしてポーズを決めた。


 音とも完璧に合っていた。

 

 何だよそれ……反則だろ。


 悔しいけど、めちゃくちゃかっこいいじゃん。


 「どうだ? こっちの方がいいだろ?」


 「……カッコよかった」


 「だろ? 朝陽もいればもっとド派手に出来たんだけどな」


 「俺は旗手だから」


 「分かってるよ。とりあえず湊と二人でバク転入れる振りで考えた」


 「他の人は?」


 「バク転出来ない奴が大半だろ? 他の奴はノーマルでも普通にかっこいいじゃん」


 「そうだな……合同練習の時にバク転出来る奴いるか聞いてみようか」


 「おぉ、出来る奴が多い程派手になるからな」


 俺達がその後、振りの練習をしていると、朝陽が近づいてきた。


 「なんか暇。俺も入れて」


 「え? 朝陽もやるの?」


 「見てたら覚えた」


 朝陽は軽く体を動かした。


 「旗手やめるの?」


 「やめないよ。暇だから今だけ」


 「なんだよ、それ……」


 「まぁ、一回通してやってみるか」


 要はそう言うと、動画を流した。


 掛け声と太鼓の音が聞こえる。


 俺は必死にやってるっていうのに、2人は余裕そうにしてる。


 くそ……ハイスペック共が……。


 悔しくて、奥歯を噛み締める。


 終盤、見せ場のバク転とバク宙。


 俺だって!


 両足で地面を蹴る。


 3回バク転の最後、バク宙。


 トンッと地面に着地した後、俺はポーズを決めた。


 「……どうだよ?」


 俺は要にドヤ顔で言った。


 要は俺のスマホで撮っていた動画を真剣に見ていた。


 「いいじゃん……これでいこう!」


 動画を見てないけど、分かる。


 「これは……モテるな……」


 「うんうん、モテるモテる。なぁー、朝陽もやっぱ演舞しようぜ」


 「やらない」


 「やっぱ、3人の方が華があるんだよなー」


 「やらない」


 朝陽はそう言うと、また木陰に戻って行った。


 「あいつも意外と自由だな……」


 「何を今更……。やっぱ3人の方がいいな」


 「お前もな……」


 「あ? 俺はやりたい事やってるだけだ」


 それを自由人と言う。


 「湊、確実にもう1人は出来る奴探すぞ!」


 「いるかなー?」


 「ぜってぇー探しだす!」


 「まぁ、頑張れよ」


 「お前も頑張るんだよ」


 「え? 俺も?」


 「絶対、俺らが歴代最強になって伝説を残してやる」


 要の目がマジだ。


 要って『最強』とか『伝説』て言葉好きだよな……。


 もう面倒くさいから、早く出来る奴が見つかる事を祈ろう。




 

 

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