種目決め
ご飯食べた後って、どうしてこんなに眠くなるんだろう……。
5時間目のホームルーム。
俺は話も聞かずに、窓の外を眺めながらウトウトしていた。
そこへトントンと肩を叩かれた。
横を見ると、要がキラキラした目で俺を見ていた。
「……何だよ」
「湊、一緒に応援団しねぇ?」
要はいつもより小声で言ってきた。
「応援団? 何の?」
「お前、話し聞いてなかったのかよ!? 応援団って言ったら、運動会に決まってんだろ」
「運動会?」
「ダメだ……寝ぼけてやがる」
要は呆れたように言った。
「おい湊、よく聞け」
「何だよ」
「運動会の応援団ってな……かなりモテる」
「……え?」
その言葉を聞いた瞬間、眠気が吹き飛んだ。
「かなりモテる」
「かなりモテる!?」
俺は前のめりになり、要の話を聞く。
「それで……だ。一緒に応援団、やらねーか?」
「そんなの、やるに決まってんだろ!」
俺がそう言うと、要はスッと手を上げた。
「俺と湊と朝陽も、応援団参加で」
「え? 俺も?」
後ろから朝陽の困惑している声が聞こえる。
「いや、勝手に決めてやるなよ……」
俺がそう言ったのと同時に、教室が騒がしくなった。
「藤真君が応援団とかヤバすぎ!」
「絶対最前で見ないと!」
「天童君と藤真君で、応援団ビジュが強すぎる」
え?
要と朝陽……だけ?
俺も居るよ……。
「うるせーな」
要は教室のざわつきに舌打ちをした。
「俺、完全にスルーされてる……」
「で? 要は何で急に応援団したいなんて言ったの?」
「朝陽もスルーかよ……」
「俺はバク転とバク宙がしたいんだよ。それ、他に出来んのお前らぐらいだろ?」
「そうだけど……」
「朝陽は面倒くさいって言って絶対やらないし。強制だよ、強制」
「えぇー、面倒くさい」
「ほら、もう言ってる」
「要は何でそんなにバク転とバク宙やりたいんだよ」
「湊……そんな事少し考えれば分かるだろ?」
「やっぱ、モテるためか?」
「……お前、それしか言わねーな」
「いや、それしかないだろ!」
「せっかく出来るのに、披露する場がないからに決まってんだろ」
「は? それだけ?」
「うん、それだけ」
「モテたいとかじゃなく?」
「モテとかどーでもいいし」
「モテは大事だろうが!」
「何もしなくても、モテて逆にうぜーわ」
「うわー、ムカつくー」
「確かに要はモテるよな」
朝陽は真剣な顔で頷く。
「……流石に、お前ほどじゃねーよ」
「え?」
あっ、これ、本気で分かってないやつだ。
要の長い溜め息が聞こえる。
「……とりあえず、やるぞ」
「おぉ、モテるためにな」
「それは、ちげー」
「え? 分かってないの俺だけ?」
俺と要は朝陽を一瞬見て、視線を逸らした。
そして、ちゃんと椅子に座って前を向いた。
黒板を見ると、運動会の種目がずらりと書かれていた。
玉入れ、徒競走、二人三脚、借り物競走、クラス対抗リレー。
騎馬戦は男子全員参加で、最低後一種目出ればいいらしい。
どれが一番モテる……。
俺は真剣に頭の中で想像してみる。
単純に一番モテそうなのは、リレーだ。
でも、もし朝陽と要が参加する場合、俺は空気と化す。
これは今までの経験から間違いない。
だからリレーは却下だ。
この中なら徒競走か借り物競走だ。
でもなー、徒競走なんて一瞬で終わって俺の見せ場がない。
なら、借り物競走か?
紙をめくると『好きな人』って書かれていて、俺は慌てて女子を探しに行くんだ。
手を繋いで……いや、お姫様抱っこでもいいか。
そして2人でゴールイン……恋もゴールインしちゃうかもな。
よし、借り物競走だ!
俺は借り物競走に出る!
黒板に自分の名前を書こうと立ち上がると、要が黒板に何かを書いていた。
クラス対抗リレー
天童 早瀬 藤真
「おい、要!」
要はチョークを置くと、手をパンパンと払いながら俺の方を見た。
「あぁ?」
「な、何勝手に書いてんだよ!」
「いいだろ別に」
「良くない!」
要はバンっと黒板を叩いた。
教室が一瞬にして静かになる。
「勝ちに行くなら、この布陣しかありえない!」
「……は?」
「一番得点が高いのがリレーだ。そして、俺は勝つなら全力で、だ」
要がニヤっと笑う。
「天童君かっこいい……」
ボソリと女子の声が聞こえた。
いやいやいや、勝手な事してるだけなんですけど。
これの何がかっこいい?
俺は助けを求めて朝陽の方を見た。
「俺はもう何でもいい……」
あ、そっちの面倒くさいになった感じ?
皆盛り上がってるし、これで断ったら俺はダサいやつになる。
俺の味方はもう、誰もいない……。




