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早瀬湊の日常  作者: 彩心


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12/20

 あの喧嘩の後、俺たちはそのまま朝陽の家に押しかけた。


 砂埃で汚れた俺と返り血で汚れた要は、案の定愛子さんに風呂行きを命じられた。


 「ついでに朝陽も行きなさい!」と、汚れていない朝陽まで。


 男3人で風呂はきついだろ……と俺は思ったが、テンションの上がった要が遊びだした。


 それに巻き込まれる形で結局3人で遊び、風呂から出る頃にはクタクタになった。


 「要ぇー。なんでお前、そんな元気なんだよ……」


 「え? 別に普通じゃね?」


 「普通じゃねーよ。さっきまで喧嘩して、風呂でも暴れて……」


 「湊がデカい声だすから、疲れただけだろ」


 「それは、お前らがアザになってる所押してくるからだろ!」


 「押したら『ぴゃーー!』って言うから」


 「なんかそういうオモチャみたいだったから」


 2人共ひでー。


 あの時殴られた腹には、くっきりとアザが出来ていた。


 結構痛いのに、誰も心配してくれない。


 俺はこれ以上押されないように、さっさと服を着てアザを隠した。


 「うっし。ピアス……開けるか」


 要は髪を拭き終わると、俺たちを見てそう言った。


 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。


 この後……開けるのか……。


 怖くない、怖くない、怖くないっ!


 「湊、何してるの? 早く俺の部屋行くよ」


 俺が気合いを入れてる間に、要はもういなかった。


 「あいつ早ぇーな」


 「湊がぶつぶつ言ってるからだよ。……やっぱり、やめてもいいんだぞ?」


 朝陽は心配そうに俺の顔をのぞきこんできた。


 「いや、大丈夫。将来の彼女とお揃いにするためだから」


 「……やっぱ馬鹿だな」


 「おい、聞こえてるぞ!」


 「早く来いよ」


 朝陽はそれだけ言って、先に脱衣所を出て行った。


 「また無視ですか。バカバカ言いやがって……」


 「おい、バカ。まだ?」


 「朝陽! お前っ!」


 脱衣所を急いで出ると、扉の横に朝陽が立っていた。


 え? と思った時には遅かった。


 朝陽の指が俺のアザに触れた。


 「ぴゃーーーー!!」


 「ふふっ、やっぱ面白い」


 朝陽は笑いながら、腹を抱える俺を置いて先に行った。


 「くそー……俺をおもちゃにしやがって……」


 はぁーと溜め息を吐いて、俺は朝陽の部屋に向かう。


 部屋に入ると、要は鏡を見て耳に印を書いていた。


 「そこに開けるの?」


 「おう……ここでいいか。おい、朝陽! ここに開けてくれ」


 朝陽はピアッサーの裏面を見た後、包装をビリビリと破いた。


 その間に要は耳を消毒液で拭いた。


 何で2人共そんなに余裕そうなんだ!?


 ビビってるの……俺だけ?


 そんな俺を1人置いてけぼりに、2人は淡々と進める。


 「じゃあ、いくよ」


 「おう!」


 ガチャンッ!


 大きな音がなった。


 俺はビクッと肩が震えた。


 朝陽がピアッサーを要の耳から外すと、要の耳たぶにはピアスがついていた。


 要はそれを嬉しそうに何度も見ていた。


 「おぉー、かっけぇー」


 「要……痛くないのかよ……」


 俺は恐る恐る聞いた。


 「あんまり痛くねーな。ジンジンするぐらい」


 「本当かよ……」


 本当は痛いくせに、強がってるとかないよな?


 そんで、後で痛がってる俺を笑うとか……。


 「じゃー、次俺開けてくれよ」


 俺が要を疑っている間に、次は朝陽が開ける事になった。


 朝陽もいつの間にか耳たぶに印を付けていた。


 「じゃーいくぞ」


 ガチャンッ!


 えっ?


 もう開けたの?


 ちょっと早くない?


 朝陽も鏡を見て「おぉー」と言っている。


 要が俺を手招きした。


 「次、お前だろ。早くこっち来て座れよ」


 「お、おぉ……」


 どうしよう……。


 めちゃめちゃ怖い。


 緊張で心臓がバクバクする。


 俺は要の前に座った。


 「湊はどこに開けるんだよ」


 「え……あ、どうしよ。何も考えてない……」


 「まぁ、俺らと同じ所でいいか」


 そう言うと要は俺の耳たぶに印を付けた。

 

 その後、耳に冷たい物が触れた。


 「ひゃっ!」


 「何だよ、じっとしろよ。消毒してんだから」


 「え? あぁ、ごめん……」


 「なぁ……やっぱお前怖いんじゃねーの?」


 「こ、怖くなんてない!」


 「やめるなら、今だぞ」


 要は真剣な顔をして、俺に言った。


 正直怖い。


 めちゃくちゃビビってる。


 でも、目的のために俺は開けたいんだ。


 「……大丈夫。開けてくれ」


 「なら、いいけどよ……」


 要はそう言った後、ピアッサーを俺の耳に当てた。


 「ちょっと待って! 朝陽、本当に痛くない?」


 「え? 別にそんな痛くないよ」


 「……やっぱビビってんじゃねーか」


 「朝陽の言う事信じるからな。要、一思いにやってくれ!」


 俺がそう言った瞬間「ガチャンッ!」と耳元でなった。


 痛っ!


 そう思ったのは一瞬で、後はジンジンとした痛みに変わった。


 「あれ? 思ったほど痛くない……」


 「だから言っただろ」


 「要は日頃の行いが悪いから、信じられない」


 「こんな事は嘘つかねーよ」


 「どうだか……」


 そんな事を言い合いながら、俺は鏡で耳に付いているピアスを見た。


 かっけぇー。


 怖かったけど、開けて良かったー。


 俺は嬉しくてずっと鏡を見ていた。


 そして気付いた。


 「なぁー。このピアス、皆一緒じゃね?」


 要も鏡を覗き込んできて。自分のピアスと俺のピアスを見比べている。


 朝陽もそれに加わった。


 「あー、3人共同じピアスだね」


 「ピアッサーに最初から付いてるピアスの事、何にも考えてなかったな」


 「これって、お揃い……」

 

 「お揃いだね」


 「お揃いだな」


 似たやつどころか、完璧にお揃いなんだけど……。


 「どーせ穴が落ち着いたら、ピアス変えるんだから気にすんなよ」


 「ま、いいじゃん。3人の友情って事で」


 落ち込んだ俺の肩を朝陽が叩いた。


 「3人の絆ってか? いいじゃん、それ!」


 3人の……絆?


 ……何それ。


 ちょっとかっこいいじゃん。


 俺は鏡でもう一度自分のピアスを見た。


 今は彼女もいないし、友情でもいいか。


 俺はそっとピアスを触った。


 「痛っ!」


 「バッカだなー。開けたばっかなんだから、そりゃ痛いだろ」


 「湊はバカだな」


 2人はまた笑ってる。


 「うるさい! バカバカ言うな!」


 俺は怒りながらも、まぁ……こいつらと一緒なら、それでもいいかと思った。


 


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