コーラ
「で? 何でこんな事になってるんだ?」
朝陽は腕を組みながら、いつもより低い声で要に聞いた。
「喧嘩売られたから買っただけ」
要は朝陽の圧に負けず、当たり前の事のように言った。
「要が喧嘩好きなのは知ってる。でも、湊を巻き込むなよ」
「……」
要は何も言わずそっぽを向いた。
「こいつ弱いんだから、巻き込んだならちゃんと守れ!」
朝陽が珍しく怒っている。
でも、弱いとハッキリと言われると、ちょっとへこむ。
いや、弱いんだけどさ……。
「……悪かったよ」
要が俺に謝ってきた。
珍しっ!
明日は雨だな。
「朝陽も。……ありがとな」
「分かったなら、いい」
朝陽はフワッと笑うと、地面に落ちているペットボトルを拾った。
「コーラ、ちゃんと買ってきたよ」
朝陽は汚れをサッと手で拭いてから、俺たちに一本ずつ渡してくれた。
「ありがとう」
「サンキュー」
凄く喉が渇いてたから、本当にありがたい。
俺はキャップを勢い良く開けた。
すると、シューっと音を立てて泡がペットボトルから勢いよく飛び出した。
「うわっ!」
ボトボトボトッとコーラが地面に落ちる。
「うおっ!」
要の声が聞こえてそっちを見れば、要も俺と同じ状況になっていた。
俺たちは目を見合わせて、朝陽の方を見る。
「はははっ」
笑ってる。
確信犯か!
「おい……」
「だってさ、ジュース買って戻って来たら誰も居なかったんだよ? 走って探したら、必然的にそうなるよね?」
「……いや、ならないだろ」
「なるよ。1本ずつ手で持ってたから」
「それ、お前振ってんじゃねーか!」
「はははっ。でも、置いて行く方が悪いよね?」
顔は笑っているが、目が笑っていない。
俺たちは半分くらい中身が減ったコーラを、それ以上何も言わず静かに飲んだ。
コーラを飲み終わって一息つくと、要がはぁーーとデカい溜め息を吐いた。
「どうしたんだよ?」
「やっぱ、朝陽は強ぇなって思って」
「確かに。要と違って無駄な動きがないな」
「おいっ!」
「正直な感想言ったのに、何で睨むんだよ」
「はぁー、強くなりてぇ……」
「今でも十分強いよ」
「朝陽、お前だけには言われたくねぇ。一度もお前に勝った事ねぇーんだから……」
そう言って、要はまた溜め息をつく。
……ほんと変わらないな。
そういえば、要と仲良くなったのって喧嘩が理由だったな。
中1になって少し経った頃。
放課後の校庭で、要がいきなり朝陽に言ったんだ。
『お前、強そうだな。喧嘩しようぜ!』
最初、変なやつが来たと思った。
面倒くさがりの朝陽はもちろん喧嘩なんてしない。
無視する朝陽に、要はしつこく付きまとった。
ある日、付きまとわれるのが面倒になった朝陽は『一回だけな』と言って、要とタイマンをした。
結果は朝陽の圧勝だった。
気付けば要が地面に倒れていた。
でも、要の果敢に朝陽に攻め入る姿が俺は嫌いじゃなかった。
むしろその泥臭さがカッコ良く見えた。
朝陽も何か思うところがあったのか、その日から要への態度が軟化した。
そこから何だかんだと一緒に居るようになっての今だ。
あれから朝陽に喧嘩を挑まなくなったと思ってたのに、まだ諦めてなかったのかよ……。
ま、あいつらしいか。
俺も……強くなれたら、少しは違うのかな?
……でも、結局俺が一番思ってるのはモテたいなんだよな。
どうしたら、モテるんだ?
要と朝陽にあって、俺にないもの……。
やっぱり喧嘩の強さ……いる?




