第九十三話:予期せぬ闖入者! 館の結界に迫る、未知の追跡者!
聖域を狙う、かつての悪友たち。
三人の愚かな侵入者に、アイギスの無慈悲な鉄槌が下される!
蹂躙される不良たちを前に、奏多はただ静かに紅茶を啜る……。
聖域の午後は、穏やかなティータイムの真っ最中だった。しかし、館の結界を監視する俺の視界の端に、明らかに異質なノイズが混じった。
「……何だ、あれは」
俺が眉をひそめると、館の門の遥か外側――森の境界線付近に、三人の男が立っているのが見えた。
粗暴な身なり、無駄に威嚇的な剣の持ち方、そして何より、周囲の魔物たちを蹂躙してきたかのような不穏な足跡。
「……さて! もうこの森に用はねーな! 目的の『牙』も手に入れたしよ!」
「だな! これでクエスト達成だぜ! さっさと街に戻って報酬で酒盛りだ!」
「おい、さっさと行こうぜ! こんな気味が悪くて陰気な森、一秒たりともいたくねーよ!」
三人の男は、高笑いしながら森を去ろうとしていた。だが、その一人が不意に足を止め、森の木々が不自然に切り開かれた先――俺たちが管理する「聖域」の境界を見つけた。
「……なんだアレ? 隠しダンジョンか?」
「へえ、行ってみようぜ! 宝の匂いがしそうだな!」
「ケッ、どうせろくなもんじゃねーだろ。だが、金目のもんがあればラッキーだ」
俺はその名前を聞くよりも先に、彼らの顔を見て確信した。
佐藤蓮の腰巾着として、常に俺を嘲笑の対象にしていた下っ端どもだ。名前は……確か、武田、小林、大野だったか。
現世でも、あいつらは蓮と凛の顔色を伺いながら、俺の持ち物を隠したり、陰湿な嫌がらせを主導したりしていた。まさか、この異世界でも同じように群れて、あろうことか俺の聖域を襲おうとしているとは。
俺の胸中で、冷たい怒りが黒い渦を巻く。だが、俺が手を下すまでもない。
門の前に、静かに、そして圧倒的な威圧感を持ってアイギスが立ちふさがった。
「……侵入者、確認。排除プログラム、起動」
「出たな、魔物め! ゴーレムかよ!」
武田が剣を抜き放つ。しかし、小林はアイギスの姿を見て不気味なほど顔を引きつらせた。
「おい……アレ、何だ? 今まで見たことあるゴーレムと全然違うぞ。鋼鉄に、脈動する青い結晶……胸の歯車が狂ったように回転してる……」
無理もない。アイギスはただの石人形ではない。機械的な精密さと、数千年前の古代魔導技術が融合した、この館の守護者なのだ。
「へっ、見た目だけ立派な鉄クズか! ゴーレムなんて余裕だぜ!」
大野が剣を突き出す。だが、アイギスの胸部の歯車が『カチリ』と高音を立てて噛み合い、青い結晶が激しく明滅した。
【アイギスによる「蹂躙ショー」の始まり】
「いけ!」という号令と共に三人同時に躍りかかる。だが、アイギスの反応速度は彼らの知る「ゴーレム」の範疇を遥かに超えていた。
アイギスの右腕が変形する。鋼鉄の指先が高速で回転し、まるでドリルのように武田の剣を粉砕した。
「なっ……!?」
武田が驚愕に目を見開く暇もなかった。アイギスはその巨大な左手で武田の顔面を鷲掴みにし、そのまま地面へと叩きつけた。
ドォォォォォンッ!!
凄まじい衝撃波が地面を抉り、土煙が上がる。武田は鼻から血を流し、その場に動かなくなった。
「武田!?」
小林が動揺して後退りする。そこへアイギスの無慈悲な追撃が走る。
アイギスは腰の魔導回路から超高圧の衝撃波を放ち、小林を数十メートル先の大木まで吹き飛ばした。背中から木に叩きつけられた小林は、そのまま木の幹にめり込んで意識を失う。
「ひ、ひぃぃぃ……! 逃げろ、化け物だ!」
大野が捨て台詞を吐いて逃走を図る。だが、アイギスが背中のスラスターを噴射。音を置き去りにする速度で大野の背後に回り込む。
金属音を響かせ、アイギスの掌が大野の首筋を優しく、しかし致命的な力で押さえつけた。
「……登録外の個体。聖域への侵入は重罪。……ゴミは、処理する」
「ま、待て! 命だけは……!」
アイギスの腕が青く光り、放たれたのは単純な物理攻撃ではない。対象の魔力を強制的に遮断する特殊なフィールド。大野の身体から力が抜け落ち、アイギスに持ち上げられたまま、まるで人形のように脱力した。
館からその様子を見ていた俺は、冷めた目でアイギスに通信を送った。
「アイギス、殺すな。……だが、二度とこの場所に近づけないように、精神的に徹底的に叩きのめしておけ」
「了解。……再教育を開始します」
アイギスは、失神した三人を見下ろしながら、館の門を閉ざした。
かつての俺を苦しめていた影たちは、俺が指一本動かさぬうちに、異世界の守護者によって無惨なまでに敗北した。
エリスが俺の隣で、その光景を呆然と見つめていた。
「……奏多、あいつらを知っているのか?」
「ああ。……俺の、人生を少しだけつまらなくした連中さ。だが、今の俺にはもう、ただの通りすがりの雑草に過ぎないよ」
館の結界は、何事もなかったかのように静寂を取り戻した。俺たちは再びカップを手に取り、冷めかけた紅茶を飲み干した。
第九十三話、いかがでしたでしょうか。
アイギスの戦闘力はやはり規格外でしたね。かつての敵との邂逅もあっという間に終わり、聖域の守りは完璧です。次回、事の顛末と、奏多の心境の変化とは……?
次回:
「壊れた傲慢! 敗北した者たちが持ち帰る、聖域の恐怖!」
お楽しみに!




