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第九十一話:歌の力! 旅人たちが見せた、聖域を震わせる驚異の魔導旋律!

森の深部に隠された「星降る絶景」。

シルヴィア、ルミナ、マーリドの三人が歌姫と共に旅立つ!

果たして、伝説の歌は賢者の真実にどう関わってくるのか!?

ピクニックのテーブルで落ち着きを取り戻したリリアとエルーラは、自分たちが探している「絶景」について、目を輝かせながら語り始めた。

「その場所はね、このデンジャラスフォレストの最深部にある湖なの。昼間は、魔物たちが徘徊する薄暗くて不気味な森の中で、唯一、太陽の光が水面に反射して輝く『陽光の鏡』のような場所なんですって。そして夜になると、空いっぱいに星が降り注ぐような、見たこともない絶景が広がるんだとか」

リリアの説明に、俺たちは顔を見合わせた。この森にそんな場所があったとは。

「さらにね、私たちの旅の秘訣を教えてあげるわ」

そう言って、エルーラが微笑んだ。

「私たちはただの歌手じゃないの。旅の途中で襲い来る魔物を退けるための『魔導旋律』を操ることができるわ。二人で歌う合体旋律――名付けて『ハーモニー・ブレイク』は、どんな凶暴な魔物だって一瞬で戦意を喪失させて大人しくさせちゃうんだから!」

「へえ、すごいな。ドラゴンの咆哮ですら鎮めるのか?」

俺が冷やかし半分に尋ねると、二人は顔を見合わせて苦笑いした。

「……そこだけは例外ね。ドラゴン種だけは、あの歌の波動を『縄張りの侵害』と受け取るみたいで、全く効果がないのよ。さっきのハルさんみたいにね」

なるほど、先ほどの騒動の理由がようやく腑に落ちた。彼女たちの歌は「癒やし」と「強制的な静寂」の力を秘めた魔術そのものなのだ。

「さて、と。問題は、誰が案内するかだ」

俺は少し自嘲気味に笑い、自分の胸を押さえた。

「言っておくが、俺は館の契約でここから一歩も外に出られない。管理者が敷地外に出れば、結界が維持できなくなるし、俺が敷地内から出ようとすると不思議な力で引っ張られてしまうから、物理的に出られないんだよ」

「……そんな、契約の呪縛があったのね」

エルーラが同情の眼差しを向けるが、俺は気にしていないといった風に首を振った。

「気にするな。ここでやるべきことは山ほどあるからな。というわけで、今回同行するのはシルヴィアとルミナ、それにマーリドに任せることにする」

『やれやれ、退屈な留守番は御免だ』

マーリドが光の粒子となって俺の肩から浮き上がった。

『奏多よ、私が行ってやろう。上位精霊の力があれば、道中のトラブルも最小限で済む。それに……この歌姫たちの旋律が、賢者の遺したものと共鳴するのか、この目で確かめてみたい』

「私も行きます!」

ルミナが元気よく手を挙げた。「歌姫様たちの歌、ぜひ近くで聴いてみたいですし、シルヴィア様のお供も必要でしょう?」

シルヴィアも静かに頷き、旅装束を整える。

「伝説の賢者の絶景……。手記にある『最後の手紙』の場所と重なる可能性があるわ。私もこの目で確かめてくる」

こうして、探索パーティは森の深淵へと出発することになった。

残された俺は、館の中庭で、エリスとヴィオラという、ある意味で最も目が離せない二人と取り残されることになった。

「ヴィオラ、あんたはまた動物たちを追いかけてダンジョン調査に行くつもりだろ? エリス、悪いが彼女をしっかり監視してくれ。また無茶をして獣に食い殺されかけたらたまらん」

エリスは深くため息をつきつつも、腰の剣に手を添えて頷いた。

「わかっている。ヴィオラ、一歩でもダンジョンの深淵に近づこうとしたら、物理的に拘束させてもらうぞ」

「えーっ!? ちょっとだけ、本当にちょっとだけサンプルの採取に行きたいだけなのに!」

ヴィオラが抗議する声を背中で聞きながら、俺は送り出すメンバーに声をかけた。

「シルヴィア、ルミナ、マーリド。彼女たちを頼む。何が起きても、まずは安全を優先してくれ」

「任せて。賢者の過去、そして今の私たちに必要な『歌』……必ず持ち帰るわ」

シルヴィアの決意のこもった背中を見送りながら、俺は館の結界を操作するメインコンソールへと向かった。遠くへ行く彼女たちの安全を、ここから見守るのが今の俺の役割だ。

森の奥から、再び二人の歌声が響き始めた。

今度は先ほどのような恐怖ではなく、まるで聖域全体を包み込むような、慈愛に満ちた旋律だった。その音色が森の魔素を震わせ、道を切り拓いていく。

「さて……」

俺は庭を振り返る。そこでは、エリスに首根っこを掴まれてジタバタしているヴィオラの姿があった。

「さあ、二人とも。彼女たちがいない間、溜まっていた館の事務作業と、この庭の整備を手伝ってもらおうか!」

黄金色に輝く結界の膜越しに、俺は森へと消えていく彼女たちの無事を祈りつつ、館に残された者たちとの平穏な午後に向かって歩み出した。

第九十一話、いかがでしたでしょうか。

探索班と留守番班に分かれたことで、物語が二つの視点で動き出しました。次回、館では少し変わった平和なイベントが……?

次回:

「管理者の休日? エリスとヴィオラと楽しむ、聖域のティータイム!」

お楽しみに!

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