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第九十話:境界を超えた訪問者! 彼女たちが語る『聖域へ来た理由』とは?

聖域を訪れた二人の歌姫。しかし、彼女たちはこの場所の秘密を全く知らない「ただの旅人」だった。

そんな中、またしてもダンジョン発見の知らせが! 聖域の動物たちが一斉に動き出し、庭はパニックに!?

騒動が嘘のように鎮まった庭園で、俺たちは彼女たちを招き入れた。先ほどまで殺気立っていたハルは、今では気まずそうにその巨大な翼を畳み、森の端で尻尾を丸めて座り込んでいる。

そんなハルの側へ、アイギスが静かに歩み寄った。

「主よ、過度な緊張は心身を損ないます」

そう言って、アイギスはその無骨な鋼鉄の腕で、巨大なハルの首元を優しく抱きしめた。

……聖域を守る冷徹なゴーレムが、七色の鱗を持つ伝説のドラゴンを慰めるという、あまりにもシュールな光景に、俺たちは思わず喉の奥で笑いを堪えてしまった。普段は無表情なアイギスの慈悲深さと、伝説のバハムートの困惑した表情のコントラストは、この聖域でしか見られない極上の風景だ。

ピクニックのテーブルへと案内された二人の女性は、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。

「改めまして。私はエルフの歌姫、リリア。そして彼女は……ええと、歌仲間のエルーラよ」

エルフのリリアが優雅に一礼し、エンジェル族の女性エルーラがそれに続く。先ほどの恐怖が嘘のように、彼女たちからは清らかな空気が漂っていた。

「命を救ってくれて本当にありがとう。あなたたちの館、とっても温かくて素敵な場所ね。……驚いたわ。外の世界では『魔物は人間に敵対するもの』と教わってきたけれど、あなたたちは家族のように仲良く暮らしているなんて」

エルーラの素直な驚きに、俺は肩をすくめた。

「ここは少しばかり変わった場所だからな。……で、君たちは一体何者なんだ? こんな危険なデンジャラスフォレストを、何の防備もなく旅して、何を目的としている?」

彼女たちは顔を見合わせると、少し照れくさそうに笑った。

「目的? ふふ、実は大したことじゃないのよ。私たちは各地を旅する二人組の歌手なの。今回は、たまたま森の入り口で景色の良さに誘われて迷い込んでしまって……。でも、せっかくここまで来たんだから、この森の頂上にあると言われる『星降る絶景』を一目見ておきたくて」

「絶景?」

俺、ルミナ、エリス、ヴィオラが声を揃えて繰り返した。

「そうよ! 森の入り口の看板に、この先には古の賢者が愛したという『星降る絶景』があるって書いてあったから。……ええ、もちろん、その賢者が誰かとか、この館の正体なんて全然知らないわ。ただの好奇心よ。伝説や歴史なんて、私たちには関係ないし」

シルヴィアが冷ややかな目を細め、リリアを真っ直ぐに見据えた。

「……好奇心? でも今は危ないわよ。あそこは、かつての王国の名残とも言える、強大な魔物たちが支配する禁域よ。確か、このデンジャラスフォレストには、まだ未発見のダンジョンが数多く眠っているはず。無防備な旅人が足を踏み入れれば、二度と戻れないわ」

シルヴィアの警告が核心を突いたその時だった。

空から、ピーとポポ率いるハトの群れがパニック状態で舞い降りてきた。それに続くように、コウ率いるナミチスイコウモリたちが甲高い音を立てて旋回し、ペリカンのペリが翼を羽ばたかせながら、何かを訴えるように鳴き叫ぶ。

「何事だ!?」

言葉を理解する間もなかった。彼らがもたらしたのは、またしても「新しいダンジョン」の出現報告だった。そして、それを合図にしたかのように、庭の動物たちが一斉に狂喜乱舞した。

「ガオオオォォォォォッ!!!」

トラのキングが咆哮し、グリズが地面を叩いて雄叫びを上げる。ワニのクロコが水しぶきを上げて立ち上がり、オウギワシのオウギが鋭い鳴き声を響かせた。

レオの威勢の良い吠え声、ミケの気合の入ったニャッ!という声、そしてルナ率いるオオカミたちが天を仰いで遠吠えを始める。極めつけは、ゴング率いるゴリラたち。全員が胸を叩き、激しいドラミングで歓喜を爆発させたのだ。

「うん、わかってたよ!? 絶対こうなると思ったよ!」

俺が叫ぶのも聞かず、聖域の動物たちは一斉に森の奥へ向かって駆け出した。ハルまでもが「新しい遊び場か!」とでも言うように翼を広げ、地響きを立てて飛び去っていく。

「行っちゃったよ……」

俺の脱力した呟きの横で、ヴィオラが目を輝かせて立ち上がった。

「私、生態調査に行ってくるわ! 今度のダンジョン、どんな動物たちの新たな戦い方を……!」

ガシッ!

ヴィオラが駆け出す前に、エリスの手が彼女の肩を掴んだ。

「ダーメーだ! 」

エリスの言葉に、リリアとエルーラは目を丸くして庭を眺めている。彼女たちは、目の前で起きた動物たちの暴走(という名のダンジョン探し)が何なのか、全く理解できていないようだった。

「……あの、皆さん。何かあったのかしら?」

リリアの無垢な問いかけに、俺は深くため息をついた。彼女たちは純粋に、館の正体も賢者のことも知らない。知らないからこそ、この騒がしい聖域に足を踏み入れてしまったのだ。

「……いや、何でもない。ただの、いつもの日常だよ。さあ、二人とも。君たちが探している『絶景』の話、もう少し詳しく聞かせてもらおうか」

俺たちは騒がしい庭を背に、聖域の平穏を守るための新しい議論を開始した。彼女たちが本当にただの旅人なのか、それとも俺たちの知らない歴史の歯車を動かす存在なのか。まだ誰も知る由もなかった。

第九十話、いかがでしたでしょうか。

動物たちの自由すぎる行動と、事情を知らない二人の対比がシュールな回でした。伝説の地へ向かう準備が着々と進んでいます!

次回、歌姫たちのもう一つの顔が……?

次回:

「歌の力! 旅人たちが見せた、聖域を震わせる驚異の魔導旋律!」

お楽しみに!

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