表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
89/115

第八十九話:響き合う心! 謎の旅人が奏でる、聖域との和解の旋律!

聖域を訪れたエルフとエンジェルの旅人。

しかし、奏でた旋律がハルの逆鱗に触れてしまった!

絶体絶命のピンチを救ったのは、驚くべき「聖域の仲間たち」の連携だった!

森の奥から聞こえていた旋律が、不意に途切れた。

「森の中を歩くのって気持ちいいね! まるで精霊が祝福してくれているみたい!」

「そうだね! ……アレ? 見て! あんなところに綺麗な館があるわ!」

爽やかな声が木々の隙間から響いた直後、俺たちの目の前に二人の女性が姿を現した。片方は淡い翠色の髪を持つエルフの少女、もう片方は背中に繊細な光の翼を畳んだエンジェル族の女性だ。彼女たちは、まるで草原で花摘みでも楽しむかのような軽装で、無邪気に俺たちの聖域の境界線へと足を踏み入れようとしていた。

「……でも、変ね。この森の深部で、これほど庭の管理が行き届いている場所なんて。明らかに誰か住んでいるわね」

彼女たちが門の存在に気づき、足を止めようとした、その瞬間だった。

ドスッ!!!!

重い地響きと共に、巨大な影が彼女たちの頭上を覆い隠した。空から舞い降りたのは、聖域の主であり、この森の頂点に君臨する古竜ハルだった。

「ガオオオォォォォォッ!!!!!」

ハルの怒号が森を震わせ、先ほどまでの癒やしの旋律など一瞬で吹き飛んだ。彼女たちはあまりの衝撃と恐怖に顔を真っ青にして地面にへたり込んだ。

「きゃあああぁぁぁぁぁっ!!??」

俺は状況を理解できずに立ち尽くしていたが、横から飛び込んできたヴィオラが、まるで氷水でも浴びたかのように青ざめた顔で俺の袖を掴んだ。

「奏多! 大変よ! ハルが勘違いしてるんだわ!」

「勘違い? どういうことだ!」

「ドラゴンにとって、見知らぬ場所での楽器の音や歌声は『縄張りに侵入する不届きな魔物の鳴き声』と認識されるのよ! 世界の常識よ、ドラゴンが住む場所での音楽はご法度なの!」

ヴィオラは信じられないとでも言うような早口でまくしたてた。

「過去にね、下手くそな歌を大声で歌った馬鹿な冒険者がレッドドラゴンを激怒させた事件があったの。ライブ会場にしていた場所が偶然ドラゴンの通り道で、通りがかったブルードラゴンにまで加勢されてパーティごと全滅させられた事故だって記録にあるわ!」

「マジかよ!? そんな凶暴な理由で……!」

「マジ! 敵対心がないことを理解できるのは、召喚士や魔術師に調教された従魔か、最初から人間に育てられた個体だけ。ハルは野生の本能が強いから、音楽=敵の威嚇と受け取っちゃうのよ!」

ハルは今にも彼女たちに業火を吐き出そうと、喉の奥で赤黒い熱源を渦巻かせていた。二人の女性は、死を覚悟したように目をつぶっている。

「まずい、ハル! やめろ!」

俺が叫ぶより先に、聖域の住人たちが一斉に動いた。

「ワンワンッ!」

犬のレオが飛び出し、ハルの足元で必死に「待て」のポーズをとる。

「ニャーッ!」

猫のミケが彼女たちの前に立ちふさがり、威嚇ではなく「説得」の鳴き声を発する。

「ウホウホッ!」

ゴング率いるゴリラたちが両手を広げ、ハルと女性たちの間に壁を作った。

「ケロケロッ!」「キューッ!」「アオッアオッ!」

カエルのゲコ太、カワウソのコツメ、アシカのケータ。聖域の動物たちが、一斉に彼女たちを守るためにハルの前に集まった。

そして、とどめはクマのグリズだった。

あの巨大なグリズは、まるで慈愛に満ちた母親のように、自分より遥かに小さい彼女たちを、その分厚い腕の中にすっぽりと隠し、ハルを真正面から見据えたのだ。

「グルゥ……」

低く、しかし攻撃性のない、穏やかな唸り声。グリズはハルに対して、「こいつらは敵じゃない」というサインを、その巨体全体を使って示していた。

ハルは、鼻先をグリズの毛並みに擦り付けた。

怒りが収まらないのか、一度大きく荒い息を吐き出す。しかし、グリズの背後に隠れる二人の女性から殺気を感じ取れなかったのか、ハルはゆっくりと火炎の渦を消し、静かにその巨体を横たえた。

「……よかった。ハルも理解したみたいだ」

俺とアイギスは、恐る恐る門を開け、彼女たちの方へと歩み寄った。

震えが止まらないエルフの少女が、ようやく目を開けた。

「……あ……あの……」

彼女は、自分たちを庇った動物たちの姿と、その奥で静かに俺たちを観察しているドラゴンの姿を見て、信じられないものを見るような目で呟いた。

「魔物たちが……私たちを……守ってくれたの?」

俺は苦笑いを浮かべ、手を差し伸べた。

「歓迎するよ。まあ、ちょっとばかり歓迎の儀式が派手すぎたかもしれないが……まずは中に入りな。音楽の続きを聴かせてもらうのは、落ち着いてからにしようか」

音楽が引き寄せたのは、森の静寂だけではなかった。

この出会いが、俺たちの聖域に、新たな旋律を運んでくることを、俺は直感した。だが、彼女たちの纏う空気には、ただの旅人にはない「何か」が秘められている気がしてならなかった。

第八十九話、いかがでしたでしょうか。

ドラゴンと音楽の意外な関係性、そして奏多の仲間たちの絆が光る回となりました。命拾いした二人との対話、どんな物語が待っているのでしょうか。

次回、彼女たちの出自に迫る!

次回:

「境界を超えた訪問者! 彼女たちが語る『聖域へ来た理由』とは?」

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ