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第八十八話:聖域に響く不思議な音色! 森の奥から聞こえてきた旋律の正体とは?

静かな聖域の午後に響いた、不思議な音色。

それは魔物さえも眠らせる癒やしの歌声だった。

森の奥から現れた、謎のエルフとエンジェル。二人の女性の目的とは!?

ピクニックの心地よい余韻が残る聖域の午後に、突如として異変が訪れた。

庭で遊んでいたウサギのラビが、ピンと長い耳を立てて硬直した。ルナ率いるオオカミたちが一斉に警戒の唸り声を上げ、馬のクロはいななきを止めて一点を見つめる。上空にいたレイ率いるカラスたちの群れは、羽音を立てるのをやめて木々の枝に静まり返り、草を食んでいたヤギのゴロまでもが、口を止めて森の奥を凝視していた。

「……どうした、お前ら? 何か妙な気配でも感じたか?」

俺が不思議に思って問いかけると、館の守護者であるゴーレムのアイギスが、重厚な金属音を響かせて俺の傍らに立った。その瞳孔が、敵意の検知で赤く点滅している。

「……主よ。風の向こうから、異常なまでの調和を持つ魔力波が流れてきます。……何か、聞こえます」

アイギスの言葉に耳を澄ませる。すると、風に乗って微かな、しかし信じられないほど透き通った音色が届いてきた。それは笛の音のようでもあり、人間の声が奏でる歌声のようでもあった。

『……なるほど、聞いたことがない初めての音色だ』

マーリドが俺の肩にふわりと現れ、目を細めた。

『エルフ族特有の繊細な旋律と、エンジェル族の持つ神聖で美しい歌声が重なっている。……実に興味深い。このデンジャラスフォレストは魔物たちの巣窟だぞ。そんな場所で、死を恐れずにこれほど優雅に旋律を紡ぐ度胸のある者がいたとはな』

その頃、聖域から数キロほど離れた、鬱蒼とした森の最深部。そこには、人目を避けるようにして旅を続ける二人の女性がいた。

エルフ族の女性が手にする、木の枝を加工したような古風な楽器が、風と共鳴して不思議な響きを生み出し、エンジェル族の女性がその旋律に溶け込むように、空へと祈るような歌声を捧げている。彼女たちの周囲を囲む過酷な自然さえも、その調べに調和しているかのような光景だった。

「……ホントだ。聞こえる……。なんだろう、これ。胸の奥が温かくなるような……癒されるな」

俺は思わず、持っていたティーカップを置いた。

その音色は、聖域の庭に留まらない。普段は飢えて殺気立っているはずの森の魔物たちが、その旋律を聴いた瞬間に戦意を喪失したかのように、次々とその場に倒れ込み、深い眠りへと落ちていく。

さらに音色は森を越え、遠くの拠点にも響き渡っていた。

ギルドの常駐拠点で武器を研いでいた職員たちや、宿泊拠点で休息をとっていた旅人たちまでが、その調べに心を奪われ、穏やかなまどろみへと誘われている。騎士団の詰所にいた数十人の騎士たちさえも、武器を収めて森を見上げ、恍惚とした表情で心身を癒されていた。

「何者だ……これほどの広域影響力を持つ歌い手など、歴史書にも記されていない」

アイギスの無機質な問いかけが、俺の思考を現実に引き戻す。

俺は表情を引き締めた。いくら素晴らしい音色とはいえ、ここはデンジャラスフォレストだ。無防備な旅人がたどり着ける場所ではない。

「わからない……。だが、これだけ広範囲の魔物を無力化する魔導旋律だ。ただの旅芸人じゃないな」

俺はアイギスを見上げた。

「念の為に、迎撃態勢を。いや、迎撃ではないな……まずは正体を確認しよう。準備はいいか?」

「御意。結界の制御、いつでも可能です」

アイギスの全身から、鈍い光が放たれる。

俺は周囲の動物たちに視線を送った。

「レオ、キング、ルナ……みんな下がっててくれ。門の前までは俺とアイギスで行く。何かあったら合図するから、それまで隠れていてくれ」

レオが短く吠え、オオカミたちが霧のように森の影へ溶け込んでいく。

俺とアイギスは、門の前で立ち止まり、迫り来る美しい調べを待った。森の木々が左右に分かれ、影の中から二人の女性が姿を現そうとしている。

果たして彼女たちは、敵意を持っているのか。それとも、この歌声には別の目的があるのか。

俺の手には、館の主としての権限が、ピリピリと熱を持って宿っていた。

第八十八話、いかがでしたでしょうか。

突然の音楽に包まれる聖域。平和的な休息回から一転、謎の訪問者が現れ、緊張感が高まってきました!

次回、ついに彼女たちと対面! 果たして彼女たちは味方か、敵か?

次回:

「響き合う心! 謎の旅人が奏でる、聖域との和解の旋律!」

お楽しみに!

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