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第八十四話:古代の記憶を紡げ! 賢者エルドラドとプシューケーの真実!

ティーパーティーで発見されたのは、伝説の「プシューケー」の幼虫だった。

それは単なる魔物ではなく、滅びた王国と、奏多たちが生きる世界の歴史を結ぶ鍵だった。

賢者エルドラドがここに隠した真実が、今明かされる!

「おいおい、そんなに凄いものなら、もっと丁寧に扱わないと……。で、結局ソイツはなんだよ?」

俺は震える手でティーカップを置き、テーブルの中央で茶葉の隙間を這い回る虹色の幼虫に視線を注いだ。

ルミナが記憶の糸をたぐるように、遠い目をして口を開く。

「……確か、私が幼い頃、かつてのアルカディア王国の巨大図書館で読んだ古文書にその名がありました。それによると、神聖エデン王国という太古の国家において、この『プシューケー』は聖獣として崇拝されていたそうです。当時のエデン王国の国章にも、この蝶の紋章が使われていたとか……」

シルヴィアは、静かにティーカップをソーサーに戻すと、重々しい口調で続けた。

「そうね……実はここへ来る数週間前、私はあなたのかつての故郷……今は帝国の一部となっているアルカディア王国の跡地を調査していたの。そこに眠る最古の遺跡の奥底に、間違いなく同じ形の紋章が刻まれていました。伝承通り、それは神聖なシンボルとして扱われていたわ」

「紋章……そういうことか!」

俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。頭の中に、あの賢者の館で見つけた日本語で書かれた古い本の表紙が鮮明に蘇る。表紙には、確かに不気味で、それでいて神々しい「蝶の紋章」が描かれていた。

上が鳥の羽のように優美で、下がコウモリのような鋭い翼を持つ……あるいは、上が天使、下が悪魔。一見すればチグハグな造形だが、不思議な調和を保っていた。

『懐かしいな……』

突如、空間が歪み、マーリドが光の粒子となって現れた。

『私も数千年前には、その成虫が空を舞う姿を見たことがある。当時の神聖エデン王国を象徴する、生ける魔導の結晶だ。だが、今は全く見かけん。あまりに強大な魔力を持ちすぎたため、何者かに絶滅させられたのかもしれんな』

エリスが複雑な表情で腕を組む。

「そういえば、我がエリュシオン王国にも、それによく似た意匠の紋章が王家の宝物庫に飾られているな……。アルカディアとエリュシオン、それぞれのデザインは異なるが、ルーツを辿れば確かに一つの意匠に回帰する」

マーリドはその言葉を拾い、冷徹な真実を口にする。

『運命とは残酷なものだ。かつてアルカディアとエリュシオンは、一つの巨大な国だった。だが、数百年前の王位継承を巡る対立で、国は二つに分裂した。……まさか、その分裂の裏で、太古の神聖エデン王国の崩壊が関わっているのではあるまいな?』

ヴィオラが膝を打つ。

「そうよ! エリスと一緒に通った王立学校で習ったわ。アルカディアとエリュシオンが数百年前の戦争で分裂した歴史、そしてそのさらに遠い先には、伝説の神聖エデン王国という起源があった……。つまり、この『プシューケー』は、分裂前の王国の象徴だったんだわ!」

俺はテラスから鬱蒼と茂る森を見渡した。

「ということは……このデンジャラスフォレストって、元々は……」

『人間どもの歴史に興味はないが』マーリドはニヤリと笑った。『ダンジョン以外にも見知らぬ遺跡が多すぎる。おそらく、ここも元々は神聖エデン王国の領土の一部だったのだろう。賢者がいなくなって魔物が蔓延り、誰も足を踏み入れなくなった。やがて戦争で国が分裂した際、この地はどこからも統治されぬ「境界」として放置されたのだ』

「……だったら、あの賢者がここに館を建てた理由、納得がいく」

俺の中で、すべてのピースがカチリと音を立てて嵌まった。

賢者は隠遁したのではない。かつて滅ぼされた神聖エデン王国の遺産と、その力を狙う帝国の魔の手から、この「歴史の空白」を守り続けていたのだ。

数百年前、神聖エデン王国を滅ぼしたのは帝国だったのか? あるいは、帝国が裏で戦争を引き起こし、弱りきった国々を叩き潰したのか。そして、賢者エルドラドと同じルシファー一族は、その時にバラバラになり、帝国に追われる身となった……。

俺は目の前の小さな幼虫に目をやる。

「シルヴィア、あんたがエルドラドの手記を命懸けで調べているのも、単なる好奇心じゃないな。歴史の裏に隠された真実を知ることで、帝国に立ち向かう手段を探しているんだろ?」

シルヴィアは何も答えない。だが、彼女の瞳には、かつてないほどの静かな闘志が宿っていた。

この小さな幼虫は、単なる魔物ではない。失われた王国の、そして俺たちと帝国を結ぶ数奇な運命の「鍵」なのだ。

第八十四話、いかがでしたでしょうか。

物語の背景に流れる「歴史」が徐々に繋がってきましたね。分裂した王国、賢者の正体、そして帝国が隠す野望。プシューケーが何を引き起こすのか、次回、幼虫との対話が始まる!?

次回:

「賢者の残響! プシューケーが語る、神聖エデン王国の末路!」

お楽しみに!

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