第八十五話:賢者の残響! プシューケーが語る、神聖エデン王国の末路!
語りだしたプシューケーは、恐るべき真実を告げる。
神聖エデン王国を滅ぼしたのは、帝国ではなく「もう一人の転生者」だった。
歴史の闇が暴かれ、シルヴィアの隠された過去が浮かび上がる!
テラスの空気は、突如として張り詰めた。ティーカップを口に運ぼうとした俺の動きが、凍りついたように止まる。
「……オマエ、テンセイシャ?」
頭の中に、直接響くような幼いテレパシー。幼虫プシューケーが、漆黒の瞳を俺に向けていた。
「!?」
「ゴシュジンサマトオナジニオイ! ゴシュジンサマ、コガネサトル! オナジニオイ!」
「黄金悟!?」
俺は叫んだ。それは、館で見つけた賢者の手記に記されていた、この世界の呼び名ではない……俺の知る言語に近い響きを持つ、エルドラドの本名だった。
「ボク、シッテル! ボク、ナガイキダカラ!」
マーリドが溜息をつき、光の粒子を揺らす。
『……成る程。確かにプシューケーは不老不死の特性を持つ。死の間際、最後の魔力を絞り出して卵に戻る……フェニックスにも似た神秘だ。まさか、お前はあの賢者と従魔契約を結んでいたのか?』
『セイカーイ!! ボク、ワルイニンゲンタチニウラギラレタ! ゴシュジンサマノトモダチ……オナジ、テンセイシャ! ソイツ、ウラデセンソウヲサセタ!』
俺の背筋に冷たいものが走る。手記には、エルドラド以外に「5人の転生者」が存在したと書かれていた。その中の一人が、すべての元凶だというのか。
「……あの本には、5人の名前があった。まさか、歴史を変えたのは……」
シルヴィアは口を閉ざしたまま、ただ深く影を落とす。
『ウラギリモノ、クズ! シットブカイ! アブナイシソウ! モクヒョウ、セカイセーフク! エデン、フタリノオージニタイリツサセタ! トメヨウトシタゴシュジンサマ、ウゴケナカッタ! マオウグン、モリニマモノタチヲハナッタ! ソシテゾウショクサセタ!』
俺は必死に記憶を整理し、考察を組み立てる。
「そうか……数千年前にエルドラドが姫と結婚して王族となっても、彼は転生者としてエデン王国を守ろうとした。だが、その裏で同じ転生者である裏切り者が、王国の二人の王子を対立させた。エルドラドはそれを止めようとしたが、罠にかかって身動きが取れなくなった……。その混乱の隙に魔王軍を呼び込み、国を荒廃させた。数百年前に国として機能しなくなったのはそのせいか!」
当時の帝国はまだ弱かったのかもしれない。だが、その裏切り者は帝国に知識を授け、科学と機械を極めさせたのではないか?
シルヴィアが、伏せていた瞳をゆっくりと開いた。その色は、悲しみに塗りつぶされていた。
「……言ったでしょ? 数百年前、私の故郷『神聖エデン王国』は、あの忌々しい帝国軍によって滅ぼされた。私はその末裔よ。一族の歴史と、賢者の足跡を知ること……それが私に課せられた宿命だって」
「シルヴィア……失礼なことを言うようだが、あんた、一体何歳なんだ?」
彼女は妖艶に微笑んだ。
「うふふ、知りたいの? 女性に年齢を聞くのは野暮よ、奏多」
隣で聞いていたルミナが顔色を変える。
「シルヴィア様……? 私が持つこの魔女の血は、もしや……」
エリスとヴィオラも、言葉を失い、ただシルヴィアを見つめることしかできない。そこにあるのは、単なる伝説ではなく、生きた歴史そのものだった。
「でも、それはあなた達が自分の力で答えを見つけることね」
マーリドが重々しく口を開く。
『……そうだな。奏多よ、お前はまだそれを知るには早すぎる。来るべき時が来るまで……今は知ってはならん』
テラスの空気は沈黙に支配された……かに見えたが、プシューケーが茶葉の上でピョンと跳ねた。
『ソッカ……ザンネン! デモ、ヒントダケオシエテアゲル! オマエイガイ、マワリ……ミンナオンナ! マーリドトアイギス、セイベツナイカラカンケイナイ! イジョウ!』
「……は?」
緊迫した空気が、一瞬でぶち壊れた。俺は脱力して椅子に倒れ込む。こいつ、この状況で何を言っているんだ。俺の周囲には、ルミナ、エリス、ヴィオラ、そしてシルヴィア……確かに全員、女性だ。
「……まぁ、とにかく! 賢者の足跡と、裏切り者の転生者……俺たちの戦いは、歴史の清算でもあるってことか!」
俺は冷めた紅茶を一口飲み、空を見上げた。セレスティアからの風が、何かを伝えようとしているように、森の木々を揺らしていた。
第八十五話、いかがでしたでしょうか。
まさかの転生者同士の争い。そして、プシューケーの突拍子もない指摘に、奏多もタジタジですね!
次回、さらに深まる謎と、新たな展開に注目です!
次回:
「転生者の宿命! エルドラドが託した『最後の手紙』の場所!」
お楽しみに!




