第八十三話:聖域のティーパーティー! セレスティアの贈り物に隠された秘密?
セレスティアから届いた極上の茶葉。
楽しげなティーパーティーが始まる……と思いきや、そこには古代の伝説が眠っていた!
ヴィオラが叫ぶ「プシューケー」とは一体何なのか?
セレスティアからの贈り物が届いた翌日、聖域は甘い香りに満たされていた。ゼノは、ただ果実を置いて帰っただけではなかったのだ。
「それと、こちらをどうぞ。これもセレスティア王国の特産品です」
ゼノが丁寧に布袋から取り出したのは、銀色の缶に収められた茶葉だった。
「セレスティア王国は『世界三大茶葉産出大国』として知られていますが、ご存知の通り、他にはセイレーン族による深海王国の『アクア・ルミナ』、そしてレプティリアン族による熱帯王国の『ドラコニア』も、それぞれ極めて貴重な茶を栽培しています。しかし、このセレスティア王国の『天空の雫』と称される茶葉は、別格です。あまりに希少なため、極めて高額で取引されている代物なんですよ。こちらは既にエリュシオン王国へも届けましたが、残りの在庫は全て、我々が責任を持ってアヴァロン王国の宮廷へ納める予定です」
ゼノたちアヴァロン王国の商人団が帰路についた後、俺たちは早速、聖域のテラスでティーパーティーを開催することにした。
もちろん、管理は厳重だ。紅茶に含まれるカフェインは、レオたち動物たちにとっては中毒を引き起こす危険な成分だ。嘔吐や下痢、最悪の場合は命に関わる。特にトラのキング、クマのグリズ、ワニのクロコ、ルナの狼群、ゴングのゴリラたち、そして空の王者オウギのような大型の野生動物たちは、そもそも茶葉の香りにあまり興味を示さないようで、庭の遠くで昼寝や獲物の残りの処理に専念していた。俺たちの「甘い時間」を理解してくれているのか、彼らは近づいてこない。
俺、ルミナ、エリス、ヴィオラ、そしてシルヴィア。
シルヴィアが慎重にティーポットに湯を注ぐ。立ち上る香りは、まさに天空の楽園を思わせる清涼感と深いコクを併せ持っていた。
しかし、ティーカップに茶葉を移そうとしたその時だった。
「……ん? あれ? なんか、動いてね?」
俺はカップの縁から少し離れた、乾燥した茶葉の山に視線を凝らした。
微かに、本当にわずかに、茶葉が呼吸するように盛り上がり、そして「それ」は顔を出した。それは、茶葉に擬態していた、淡い虹色に輝く小さな幼虫だった。
「どれどれ……これは!? 嘘でしょ!?」
ヴィオラが身を乗り出し、顕微鏡のような眼鏡をかけて覗き込む。彼女の顔が一気に蒼白になり、そして興奮で紅潮した。
「間違いない……! 超希少な虫型魔物『プシューケー』の幼虫だわ! 神話の時代、バハムート、ガルーダ、オオクチノマカミと共に『世界四大古代魔獣』として名を馳せた、伝説の存在よ! 絶滅したとされていたのに、どうしてこんなところに!」
「何をそんなに騒いでいるのよ?」
書斎から戻ってきたシルヴィアが、怪訝そうにこちらを覗き込む。ヴィオラは震える指先で、茶葉の上をゆっくりと這うプシューケーの幼虫を指し示した。
「シルヴィア! ちょうどよかったわ! あなた、賢者エルドラドの手記を調べていたでしょう? この子、ただの虫じゃない。古代の知恵を宿すという伝承があるの。もしかして、手記に記された『謎を解く鍵』は、この子自身のことかもしれないわ!」
「……!?」
シルヴィアの表情が凍りついた。彼女が必死に追っていた「賢者エルドラド」の最期の記録には、確かに「翼なき翅が真実を紡ぐ」という謎めいた一文があった。
今まで平和なティーパーティーだと思っていたこの時間が、突如として古代の謎を解き明かすための「歴史的転換点」へと変貌する。プシューケーの幼虫は、まるですべてを知っているかのように、ティーカップの縁で小さく頭を垂れた。
俺はティーカップを置き、静かに幼虫を見つめた。
この小さな命が、セレスティアの茶葉に紛れてやってきたことには、天帝さえも知らない深い意味があるのかもしれない。聖域の日常が、再び壮大な物語の渦へと飲み込まれていく音が聞こえた気がした。
第八十三話、いかがでしたでしょうか。
ついに登場した古代魔獣! しかも幼虫の姿で、お茶の中に潜んでいたとは……。シルヴィアが追っていた賢者の謎とどう結びつくのか、次回から本格的な解明編がスタートです!
次回:
「古代の記憶を紡げ! 賢者エルドラドとプシューケーの真実!」
お楽しみに!




