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第八十二話:雲の上の贈り物! セレスティアから届いた、天空の甘味

輸送作戦は大成功!

セレスティアの危機は去り、天帝からは返礼の品が届く。

聖域の館に漂う甘い香りと、平和なティータイムのひととき!

セレスティア王国の浮遊島は、かつての神々しさを失い、沈鬱な空気に包まれていた。数年前から蔓延する流行病が畑を枯らし、頼みの綱であった精霊術による作物育成も限界を迎えていたからだ。

「……腹が減った……」

白銀の翼を持つ一人のエンジェルが、力なく石畳に座り込む。周囲には、誇り高きはずの同胞たちが、生気を失い項垂れている光景が広がっていた。

「天帝様……どうか……私達のためにご慈悲を……何でも良い、恵みを……!」

一人の子供のエンジェルが祈りを捧げるが、応える声はない。空腹に耐えかねた若者が、庭園の植え込みにある雑草を口にする。

「……オエッ! この草、まっずっ!! 繊維が硬くて……土の味がする!」

「おい、いくら腹が減ったからって、そこら辺の草を食べるな! お前の身体が持たないぞ!」

王国の広場が絶望に沈んでいたその時だった。遥か上空から、地響きのようなエンジン音が鳴り響いた。

「て、帝国軍の襲来か!? まさか、この機に乗じて制圧しに来たのか!?」

人々が悲鳴を上げ、混乱が広がる。「終わった……原因不明の病で食糧がないこの時に、帝国の兵器が来るなんて!」

しかし、その機体は爆撃を行う気配を見せなかった。雲を割って現れた機体の翼を見て、一人の女性が目を凝らす。

「……いや、待って! 何か違わない? 似ているけれど……アレを見てみろ!」

空を指差す彼女の声に、全員が視線を上げる。機体の側面に刻まれていたのは、帝国軍の禍々しい紋章ではなく、穏やかな青色で描かれたエリュシオン王国の紋章だった。

「嘘だろ……? 人間の国の……紋章が……?」

同じ頃、王国の最深部にある宮殿。

天帝は玉座で静かに目を閉じていたが、家臣の慌ただしい足音に目を開けた。

「何事だ? この騒ぎは」

「陛下! 人間たちが我が国にやって参りました! それも……帝国ではなく、エリュシオンの印を掲げて!」

天帝の瞳に、かすかな驚きと希望が宿る。「……余が自ら顔を出そう」

数日後。

聖域の館では、再び賑やかな空気が戻っていた。帰還した輸送機から降り立ったセオドアたちと入れ替わるように、ルカから預かった「あるもの」を届けるため、ゼノがやってきたのだ。

「……ってことがあってね、取引は無事に成立したんだ! 天帝陛下は、我が国の穀物と引き換えに、天空の気象制御データを快く提供してくれたよ。おまけに、これを見てくれ!」

ゼノは誇らしげに、巨大な木箱を二つ、テーブルの上にドスンと置いた。

「なんでも、セレスティア王国に古くから伝わる『天空の甘味』だそうだ。国交回復の祝いとして、特別に預かってきたんだ!」

俺は恐る恐る木箱の蓋を開けた。そこに入っていたのは、宝石のように透き通った、見たこともない果実だった。

「い、いいのか? こんな貴重なものを」

俺が呟くと、ルカの伝言を思い出したようにゼノが笑う。

「奏多殿たちがしてくれたことの大きさを考えれば、これくらい安いものだと言っていたよ。食べてみてくれ、天空の魔力を凝縮した果実だ」

俺は一つ手に取り、口に含んだ。

噛んだ瞬間に、身体中に清涼な風が吹き抜けるような感覚がある。甘いだけでなく、どこか懐かしく、そして魂まで洗われるような不思議な味わい。

「……うまい。なんだ、これ」

「だろう? 天帝が、この館の者たちの分まで用意してくれたんだ」

ゼノの言葉に、周囲にいたシルヴィアやルミナ、エリスたちも集まってきた。食いしん坊のハルも、何事かと鼻を鳴らして寄ってくる。

「これが天空の……。まるで、雲を食べているみたい!」

シルヴィアが目を輝かせ、ルミナも一口食べて幸せそうに頬を緩めた。

戦いが終わり、平和な午後。聖域の庭で、皆が天空から届いた甘味を囲んで笑い合っている。帝国との激戦も、食糧危機の緊張も、この瞬間だけは遠い世界の出来事のように思えた。

俺は空を見上げ、遥か彼方に浮かぶセレスティアの浮遊島に想いを馳せた。そこでもきっと、今、俺たちと同じように、届いたばかりの穀物で焼きたてのパンを囲んで、笑顔が広がっているはずだ。

「平和ってのは、こういうことなのかもしれないな」

俺は最後の一つを口に運び、空に広がる雲を眺めながら、静かにそう呟いた。

第八十二話、いかがでしたでしょうか。

空腹に苦しんでいたエンジェル族が笑顔を取り戻す様子、心温まりますね。聖域でのティータイム、キャラクターたちの穏やかなやり取りも癒やしです。

次回、聖域に新たな珍客が……!?

次回:

「聖域のティーパーティー! セレスティアの贈り物に隠された秘密?」

お楽しみに!

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