第八十一話:空の救済作戦! ルカと共に、雲の上のセレスティアへ!
ついに完成した輸送機。
ルカと技術顧問セオドアを乗せ、空の救済作戦が幕を開ける!
地上と空の国が手を取り合う、歴史的な瞬間を見届けよ!
轟音と共に、空を切り裂く影が聖域の上空に現れた。それはかつてこの地を蹂躙した帝国軍の悪夢、戦闘機であったはずだった。しかし、今のその姿は全くの別物だ。機体には鮮やかなエリュシオン王国の紋章が描かれ、鋭利な武装は排除され、代わりに膨大な物資を積載するための頑強な貨物コンテナが装着されている。
機体は重厚な機動で、聖域の広大な庭へと慎重に着陸した。地響きと共に砂埃が舞い上がり、静寂が訪れる。
「こ、これが……俺たちの同胞を救う希望の翼か……」
ルカはその巨大な鋼鉄の獣を前に、言葉を失っていた。彼は幼い頃から空を飛んできたが、これほどまでに心強い「乗り物」を見たことはなかった。機体からハッチが開き、一人の男が降りてくる。彼はゴーレムのメンテナンス用にも似た作業着を纏い、凛とした表情でルカたちを見つめた。
「こんにちは、ルカさん。お会いできて光栄です。あなたたちの苦境については、エリュシオン王国の科学ギルドを通じて報告を受けております。私は技術顧問のセオドア。今回の空輸作戦の総指揮および、操縦を任されました」
セオドアは胸に手を当て、深く礼をした。ルカは緊張した面持ちで、恐る恐る頭を下げた。
「……よ、よろしくお願いします、セオドアさん。この一週間、俺の種族がどれほど飢えに苦しんでいたか……本当に、感謝の言葉もありません」
セオドアは穏やかな笑みを浮かべ、機体の横腹にある巨大なハッチを指差した。
「我々科学ギルドも、この機体を操作するのは初めての試みです。元は帝国軍の戦闘機でしたから、魔力回路の癖は強烈で……正直、不安がないと言えば嘘になります。しかし、設計図は完璧に書き換えました。セレスティアの浮遊島へ到達することは可能です。勿論、約束の通り、アヴァロン王国からの穀物や種、そしてすぐに調理できる食糧を既に積載済みです……が!」
セオドアの表情が少しだけ厳かになった。
「その代わりに、一つだけ条件があります。既に貴国の『天帝陛下』には、通信魔道具を通じて通達済みです。この技術提供と食料支援の対価として、セレスティア王国が所有する『天空の気象制御データ』の共有をお願いしています。帝国軍の侵攻を防ぐには、我々地上側にも天候を予測する術が必要なのです」
ルカは迷うことなく、力強く頷いた。
「そうか……当然だ。天帝陛下も理解を示してくれるはずだ。それ相応の、いや、それ以上の対価を君たちに渡すだろう。君たち人間がずっと探し求めていた、『空から見た世界の気象パターン』の知識を……!」
取引は成立した。異種族間の「ギブ・アンド・テイク」。それは単なる物資の交換を超えた、強固な同盟の証であった。
「さあ、急ぎましょう。雲の上の故郷が、君を待っている」
セオドアに促され、ルカは機体に乗り込む。その姿は、かつて迷い込んで森に降り立った時とは違い、未来を切り拓く希望の翼に乗る旅人の顔をしていた。
俺たちは庭の端から、その光景を見送った。
「本当に、空へ帰れるんだな……」
エリスが感慨深げに呟く。
「ああ。これでセレスティアの子供たちも、飢えから解放される」
エンジンが唸りを上げ、青い炎を噴射して機体は垂直に上昇していく。その背中には、世界を救うための種と、希望のデータが詰まっている。空を覆う雲を突き抜け、機体はあっという間に小さくなり、やがて大空の一点へと吸い込まれた。
聖域の住人たち――オウギやハトのポポたちまでもが、空を見上げてその翼を見送っている。俺の胸には、誇りと、少しだけの安堵が残った。これで空と地上の隔たりが、また一つ縮まったのだ。
第八十一話、いかがでしたでしょうか。
技術顧問セオドアの登場で、物語がより本格的な軍事・外交劇へと発展してきましたね。セレスティアとの同盟が今後どのような影響を及ぼすのか、乞うご期待!
次回、輸送機を見送った後、館に訪れる平和なティータイム回です。
次回:
「雲の上の贈り物! セレスティアから届いた、天空の甘味」
お楽しみに!




