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第五十一話:聖域を喰らう者! 漆黒の影とのファーストコンタクト

館を包む防衛結界が完成した矢先、森の深奥から現れた漆黒の影!

それは魔王の命を受けた刺客だった。

キング、グリズ、ルナ、ゴング、そしてハルが一斉に迎撃へ向かうが、敵の力は想定以上。

結界を浸食する闇の力に対し、奏多と館の住人たちが立ち上がる!

館の周囲を包んでいた黄金の光が、突如として不気味な黒い脈動に飲み込まれ始めた。森の境界線付近で渦巻いた漆黒の霧は、ただの自然現象ではない。それは、この館の防衛結界の「味」を確かめるかのように、狡猾に触手を伸ばす「悪意」の結晶そのものだった。

「キング! グリズ!」

俺の叫びに応えるように、トラのキングが獣のような地響きを伴う咆哮を上げ、黒い霧の漂う森の境界へと突進した。その傍らでは、クマのグリズもまた、巨大な質量を活かして大地を蹴り、キングに続く。ルナ率いるオオカミの群れも、鋭い月光のような牙を剥き出しにして、「ウオォーーーンッ!!!」という戦の合図を響かせた。彼らの咆哮は、聖域を汚さんとする闇に対する明確な拒絶の意志であった。

さらに、ゴング率いるゴリラの集団が、館の広場にて胸を激しく叩くドラミング音を鳴り響かせる。「ウホッ!!!」という彼らの魂を震わせる気合は、物理的な衝撃波となって周囲の草木を薙ぎ払い、戦場を支配する勢いを見せる。

そして、ドラゴンの幼体であるハルまでもが、「ギャオオォッ!!!」と幼いながらも威厳に満ちた叫びを上げ、俺の制止を振り切って黒い霧へと突撃していった。

「おい、待て! どこへ行くんだ、無茶をするな!!」

俺が追おうとすると、ヴィオラが目を輝かせ、メモ帳を握りしめたまま俺の腕を掴んだ。

「ダメよ、奏多! 今、前線に行ったら邪魔になるわ! これはチャンスなのよ!! あの伝説の防衛結界が、実戦でどれほどの魔力負荷に耐えられるのか……そして、あの強大な相棒たちが、未知の敵に対してどのような戦闘行動を取るのか! その貴重な戦闘データを一瞬たりとも逃すわけにはいかないの!」

「今はデータ収集なんて言ってる場合か! 結界が破られたら館ごと飲み込まれるんだぞ!」

その頃、館から遥か離れた暗黒の森の深奥。幾重にも重なる茨の影の中に、歪な人影が潜んでいた。

「……フフフ、魔王様の予言の通りだ。あの賢者が残したゴミ溜めのような空き家を、何者かが復活させたな。愚かな……あそこに触れることは、すなわち我ら『侵食魔軍』への挑戦に等しい。結界の味、存分に喰らってやろうではないか」

その者の手には、禍々しい闇を宿した杖が握られていた。黒いローブが風に翻るたびに、周囲の草木が瞬時に枯れ、大気が腐敗したような臭いを放つ。

館の広場では、アイギスが静かに起動音を鳴らした。そのゴーレムの全身の魔導回路が、警告を示す赤色に激しく発光する。

「……遠距離から、極めて邪悪な力を感知した。推定レベル……脅威度『災厄』クラス。主、指示を。防衛プログラムを『迎撃』へと切り替えます」

「アイギスまでがそう言うなんて……! やはり、ただの獣の襲撃じゃないのか」

エリスが剣を引き抜き、その鋭い剣先を霧の中の闇へ向けた。彼女の顔には、騎士としての緊張感と、未知の敵を前にした冷徹な闘志が同居している。

「あのバカ(ヴィオラ)はともかく……奏多、これが現実だ。平和な農園などという甘い幻想は、今この瞬間に終わったのだ。私たちが今すぐすべきは、あの闇に飲み込まれる前に、源流を絶つことだ!」

ルミナは、館の中央に陣取り、聖なる光を放つ魔力障壁を館全体に幾重にも重ねようと必死だった。彼女は俺の衣服の裾を強く握りしめ、力強く言い放つ。

「奏多様、あなたは管理者です! この館と、そこに住まう全ての命を守るために、ここにいるべきです。前線へ出るのは、私たちに任せて……!」

その時、マーリドが溜息混じりに前へ出た。普段の気まぐれな光の姿から、どこか冷厳な意志を感じさせる姿へと変化している。

『……やれやれ。騒がしい連中だ。お前たちが右往左往していても始まらん。仕方ない……私自ら様子を見に行ってこよう。仮にこれが魔王軍の仕業だとしても、ここは心配いらん。完成したばかりのこの結界は、私が賢者と共に作り上げた「対魔王級」の防衛機構だ。そう簡単に破られることはない』

しかし、マーリドの口調とは裏腹に、結界の境界線からは「バリバリッ!」という、凍てつくようなガラスがひび割れる音が聞こえ始めた。漆黒の霧が触手のように結界の光を絡め取り、その表面をじわりと削り取っている。

「結界が……食われているのか!?」

俺は歯を食いしばった。伝説の賢者の要塞が、今、未知の敵によってその根幹を脅かされている。

管理者の物語は、ここから「日常」という楽園を捨て、「生存」を賭けた戦いへと、残酷な変貌を遂げようとしていた。俺は拳を握りしめ、地下要塞の中枢回路へと走った。管理者として、この結界の出力を限界まで引き上げるために。

第五十一話、いかがでしたでしょうか。

ついに戦闘開始! 防衛結界の性能が試される激闘回です。次回、マーリドが目にした敵の正体とは? そして館の運命は……!?

次回:

「魔王軍の刺客! 結界を揺るがす侵食の爪痕」

お楽しみに!

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