第五十話:結界の初稼働! 聖域を狙う漆黒の影
防衛設備が遂に稼働! 伝説の防衛結界に守られた館は、まさに不落の聖域へ。
ギルバートたちを見送り、拡張された敷地を歩く奏多だが、森の奥から異様な気配が漂い始める。
突如として現れた「漆黒の影」! それは結界の完成を待ちわびていたかのような、館を狙う邪悪な意思だった!
「よし、これで中枢回路の最終調整は完了だ! あとはこのメインスイッチを押し込めば、防衛設備として十分すぎるほどに機能してくれるはずだ!」
ギルバートは、まるで宝物を扱うような手つきでコンソールのレバーを操作した。地下要塞の奥底で、巨大な歯車が噛み合うような重厚な音が響き、館全体を包んでいた黄金の結界が、さらに深く、強固な輝きを放ち始める。
マーリドはその様子を静観し、ふわりと俺の肩元に舞い降りた。
『やれやれ、ようやく人間どもの玩具がまともに動くようになったか。奏多よ、敷地は今回の拡張で以前の数倍にまで広がっている。結界の効力を確かめる意味でも、試しに境界線の際まで歩いてみるといい』
「そんなことができるのか? 以前は敷地の境界線に触れるだけで、不思議な力に押し戻されていたんだが」
『以前とは回路の密度も結界の出力も違う。今は管理者であるお前の魔力が、館の防衛機構と完全に同期しているからな。散歩くらいは可能なはずだ』
ギルバートは満足げに手を拭い、作業用の道具を鞄に詰め込み始めた。
「さてと! 我々の今回の仕事はこれにて終了だ! 伝説の賢者の技術と、王国の最新工学の融合……これほど面白い現場はなかったよ。また何か館の防衛や改造で困ったことがあったら、エリス殿経由で俺に言ってくれ! 彼女は我が国の騎士団の精鋭であり、陛下直属の連絡役でもあるからな。彼女経由なら、どんな緊急事態でも即座に伝わるはずだ!」
「わかった、ギルバート。君たちには本当に感謝しているよ。助かった」
「礼には及ばん。技術者にとって、これ以上の経験はないからな!」
ギルバートたち技術者集団を見送ると、館は再び俺といつものメンバーだけの静寂に包まれた。俺は一息つくと、マーリドの言葉に従って、館の広場から先、以前は侵入不可の壁となっていた境界線を目指して歩き始めた。
足元の芝生は柔らかく、拡張された広大な敷地には、新しく召喚された動物たちのための遊び場が広がっている。以前は館の玄関先までしか行けなかったのに、今は森の境界近くまで歩いて行ける。確かに、不思議な力による拒絶感は薄れ、まるで結界そのものが俺を「館の一部」として認識しているような感覚だ。
(前よりは遥かにマシになったな。これなら、本格的なガーデニングや、動物たちの訓練スペースも確保できる……)
しかし、境界線まで残り数メートルの地点に達した時、背筋に冷たいものが走った。
「なんだ……? この嫌な気配は」
先ほどまで穏やかだった森の空気が、急激に冷え込んでいる。普段なら、結界の恩恵を受けてリラックスしているはずの動物たちが、一斉に鳴き声を止めた。
その時だった。ミツバチのビーたちが、ハトのポポたちが、そしてインコのピーが、パニックを起こしたかのように俺の頭上を激しく旋回しながら、必死に俺を広場の中心へと誘導しようと飛んできた。
「おい、どうしたんだ? 何かあったのか!?」
彼らの鳴き声は、普段の陽気な響きとは異なり、警戒を促す鋭い警告音に変わっていた。ピーが俺の肩に飛び乗り、森の奥深くを指差して激しく震えている。
その方向を見ると、数百年を経てようやくその結界を再び解いたばかりの聖域を、汚泥のような闇が覆い隠そうとしていた。森の木々が枯れ、大地が黒く変色していく。
そこには、漆黒の影が揺らめいていた。
それは単なる魔物ではない。この聖域の「完成」を待ちわびていたかのような、館の結界を直接喰らい尽くそうとする「侵食の意志」だった。
俺はとっさに腰の魔導コンソールに触れ、迎撃態勢を整える。
結界は完成したばかりだ。だが、その守護の真価が、今まさに試されようとしていた。
第五十話、いかがでしたでしょうか。
ついに五十話到達! 記念すべき節目の回で、ついに敵の影が……。館の平穏な日常が、ここから戦いへと変貌していきます!
次回、漆黒の影の正体とは? そして館の結界は耐えきれるのか!?
次回:
「聖域を喰らう者! 漆黒の影とのファーストコンタクト」
お楽しみに!




