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第五十二話:魔王軍の刺客! 結界を揺るがす侵食の爪痕

森の奥で対峙した、魔王軍の刺客・ヴォルグ。

彼の纏う闇は結界を侵食する毒を持ち、攻撃するほど結界が弱まるという卑劣な罠だった!

結界の崩壊が迫る中、奏多は地下から禁断の「魔力反転」を試みる!

結界の外側で繰り広げられる戦いは、もはや言葉を絶するものだった。

「ワンッワンッ!!」

レオの鋭い吠え声は、ただの威嚇ではない。その一声ごとに大気が振動し、物理的な衝撃波として漆黒の霧を切り裂いている。ミケもまた、普段の愛らしさからは想像もつかないほどの殺気を放ち、背中の毛を逆立てて「シャーーーッ!!!!」と凄まじい咆哮を上げ、闇の触手へと飛びかかった。

庭の隅でその様子を目の当たりにしていた俺は、ただただ圧倒されていた。

「す、すごい……漆黒の影が、あいつらに追い詰められているのか?」

エリスは眉をひそめ、神妙な面持ちで戦況を見つめている。

「やはりアイツら、ただの『動物』と呼ばれるあの未知なる魔獣には……何か特殊な力が宿っているのか? そうでなければ説明がつかない。あの闇は、魔王軍が放つ最高位の侵食魔術だぞ。それを、あの小柄な身体でねじ伏せている……」

俺は震える声で答えた。

「正直に言おう、エリス。俺がかつて住んでいた世界で知る『動物』って、いくら強くても、本来ならドラゴンに勝てるわけがない……そう信じていた。故郷にいる犬や猫が、野生のクマに勝てるはずがないんだ。……本来は、そうあるべきなんだよ」

だが、眼前の彼らは違う。彼らは、俺がこの「異世界」で召喚し、絆を深めてきた「相棒」たちだ。彼らの力は、俺の管理者としての魔力と、この館の特殊な環境が生み出した、いわば「進化の極地」だった。

エリスは俺の肩を強く掴み、庭から広間へと視線を向ける。

「とにかく今は中へ避難せよ! あの動物たちとやらが頑張ってくれているのだ……結界の修復は私やルミナに任せて、君は地下の中枢から結界の出力を補助してくれ! 結界の維持は、君の管理能力にかかっている!」

その間も、森の奥へと先行した精鋭たちは、ついにその「侵食の根源」を追い詰めていた。

マーリド、ヴィオラ、アイギス、ハル、そしてキング、グリズ、ルナ、ゴングたち一行は、森の瘴気が最も濃く淀む場所にたどり着く。

そこにいたのは、腐り落ちた樹木に腰を下ろした異形の男だった。全身が墨を塗ったかのように黒く、その瞳には虚無が宿っている。彼こそが、魔王軍の特務部隊長――『骸の侵食者』ことヴォルグ・ザードだった。

ヴォルグは、駆けつけてきた一行を冷笑する。

「ほう、賢者の残骸を守るために、獣とゴーレムが出てきたか。随分と賑やかなお出迎えだな」

マーリドはその様子を、テレパシーを通じて俺の脳内に直接送り込んできた。

『奏多、聞こえるか。敵は一体。名前はヴォルグ・ザード。魔王軍でも名を知られた侵食のスペシャリストだ。この男、どうやら結界をただ壊すのではなく、内部から腐敗させ、館そのものを自分の支配下にするつもりだぞ』

俺はコンソールの前で拳を握りしめる。

「侵食者……! ヴォルグだと……!」

『そうだ。ヴォルグの纏う闇は、結界の魔力流路を逆流させて館の全設備をオーバーヒートさせる毒を含んでいる。すでにハルやキングたちが果敢に攻撃しているが、奴の周囲には絶対不可侵の『負の領域』が展開されており、物理攻撃すら霧散させられている』

マーリドの報告は冷静だが、その言葉の端々に警戒色が隠せない。

ヴィオラが前線で必死にメモを取りながらも、叫ぶ声がテレパシーに混じる。

「奏多! こいつ、攻撃を受けるたびに周辺の生命力を吸収して結界の修復力を削ぎ落としているわ! 攻撃すればするほど、結界が弱まる仕組みよ!」

「なんて卑劣な……! 攻撃が罠だというのか!」

俺は地下要塞のメインコンソールを操作し、結界の周波数を調整する。

「マーリド! ヴォルグの『負の領域』を、こちらの結界の出力で相殺できるか!?」

『やってみる価値はある。……だが、かなりの魔力消費を覚悟せよ。お前の管理者としての真価が、今この瞬間、試されることになる』

森の奥で、ヴォルグがゆっくりと立ち上がった。その杖が掲げられるたびに、周囲の大地がさらに黒く染まっていく。聖域の守護者と、全てを食い尽くす侵食者の戦いが、今まさに最高潮を迎えようとしていた。

第五十二話、いかがでしたでしょうか。

敵の策略によって追い詰められる展開、ハラハラしますね! 次回、奏多が放つ反撃の切り札とは? 激闘の行方をお見逃しなく!

次回:

「反撃の管理者! 魔力反転、聖域の覚醒」

お楽しみに!

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