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第四十話:水の都の贈り物! アヴァロン王国からの不思議な魔道具

コーヒーの出自を巡り、世界情勢が見えてくる!

デーモン族の王国「アズラク・ガウル」とエルフの王国「シルヴァリンド」。

戦争によって供給が絶たれた希少品を、館で栽培できないか?

アヴァロンの商人ゼノが持ち込んだ「環境調整魔道具」が、コーヒー栽培に革命を起こす!

広間に流れる静かな時間。コーヒーの余韻に浸っていた商人の代表ゼノが、ふと思い出したようにルミナに問いかけた。

「ところで、このコーヒー……失礼を承知で伺いますが、どこで手に入れられたのでしょうか? アヴァロン王国でも王族ですら入手困難な最高級品ですが、まさかこの森の中で、これほど新鮮な焙煎豆にお目にかかれるとは……」

ルミナは少し困ったように小首を傾げた。

「それが……この館の地下倉庫に大量に保管されていたのです。かなり古びていましたが、魔法による保存が効いていたのか、淹れてみるとご覧の通り、とても美味しくて。ただ……そもそもこれがどこで栽培されたものなのか、館の文献にも記されておらず、私たちにもよくわからないのですわ」

その言葉を聞いたエリスが、鋭い眼光を走らせた。

「……一つ、心当たりがある。かつて王国で学んだ魔物学の資料に記述があった。コーヒーという作物は、極めて特殊な環境下でしか育たない。主に北の大陸にあるデーモン族の王国『アズラク・ガウル』か、あるいは精霊の守護を受ける森の深淵、エルフ族の王国『シルヴァリンド』でしか栽培されていないと聞いたことがある」

エリスは眉間に皺を寄せ、難しい表情で言葉を継いだ。

「だが、最近は情勢が悪化している。どちらの国も魔王軍との死闘に加え、科学技術に特化した帝国からの侵略的脅威に晒されているからな。供給網は分断され、コーヒーの市場価格は高騰し続けている……。ここにあるのは、戦争が始まる前に蓄えられた『遺産』なのかもしれない」

ヴィオラも研究者としての知識をフル回転させて補足する。

「そうそう! そもそもコーヒー栽培は、気温と湿度の繊細な調整が必要な上に、土壌の魔素濃度まで選ぶのよね。種自体も高価だし、気候の変動が激しいこの世界で育てるのは並大抵の苦労じゃないわ。エルフ族でさえ、近年の環境異変で収穫量が激減していると嘆いていたわよ」

俺はテーブルの上に置かれたコーヒーカップを眺めながら、ルミナに目を向けた。

「ルミナ、お前の『植物を操る魔法』で、コーヒーを栽培することはできないのか?」

ルミナは期待を込めた俺の視線を受け、申し訳なさそうに視線を落とした。

「……ごめんなさい、奏多様。植物を成長させる魔法は心得ていますが、コーヒーのように特殊な環境と長い年月を必要とする作物を、魔法だけで無理やり作り出すには、相当な高位階級の魔法……いえ、植物創造の領域に踏み込む魔法が必要です。私の実力では、まだそこまでは……」

その時、沈黙していた商人ゼノが、ハッと何かを思い出したように膝を打った。

「おお、そうだ! 栽培の相談であれば、実は一つ良いものがございます」

彼はキャラバンの荷車から、慎重に一つの木箱を取り出した。中には、まるで生きているかのように微かな光を放つ、複雑な紋様が刻まれた銀色の球体が収められていた。

「これは、我らがアヴァロン王国の魔術師ギルドが開発した『環境調整魔道具・エデン』です。本来は、希少な水産物を陸地で養殖するための水温管理に使うものですが……魔素の循環を制御する能力が非常に高く、適切に設置すれば、特定のエリアを特定の気候に固定できるのです」

ヴィオラがその魔道具を見た瞬間、目を輝かせて奪い取らんばかりに駆け寄った。

「これよ! これがあれば、コーヒーの栽培に適した環境を館の一角に再現できる! まさに水の都アヴァロンの技術の結晶ね……!」

ゼノは誇らしげに微笑んだ。

「この魔道具を、館の友好の証として差し上げます。コーヒーの栽培が可能になれば、いずれ我がアヴァロン王国にも分けていただければ幸いです。……これほど美味いコーヒーを、いつでも飲めるようになれば、商人の私としてもこれに勝る喜びはありませんから」

俺たちは顔を見合わせ、笑った。

館はただの防衛拠点から、いつの間にか「未来を作る研究施設」へと着実に進化していた。この魔道具があれば、将来的にコーヒーがこの館の特産品になるかもしれない。

商人の訪問は、館に新しい希望の種を蒔いたのだ。

第四十話、いかがでしたでしょうか。

アヴァロン王国の技術力が館の生活を豊かにし始めていますね。

これでコーヒー栽培に挑戦できる環境が整いました。次回は、この「ガイア・ジェネシス」を館のどこに設置するかで、個性豊かな動物たちと大騒動に……?

次回:

「館の一角に楽園を! 魔道具『ガイア・ジェネシス』設置大作戦!」

お楽しみに!

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