第三十八話:最初の来訪者! アヴァロンの商人、館の驚異を目の当たりにする
アヴァロン王国への道を開くべく、奏多は新たな仲間を召喚する!
現世から呼び出された「ハイイロオオカミ」と「マウンテンゴリラ」。
森を支配していたワーグの群れは、奏多の動物たちによる圧倒的な連携と力の前に敗北する!
そしてついに、館には最初の商人が訪れる!
館の広間に漂っていた「貿易計画」という熱気に、冷や水を浴びせるような荘厳な声が響き渡った。空間が淡く揺らぎ、光の精霊のように浮遊していたマーリドが、その瞳に静かな闘志と古の叡智を宿して告げた。
『ならば、まずはそのアヴァロン王国へ繋がる道を作らねばならん。館のちょうど反対側……そこには凶悪な魔獣『ワーグ』の群れが絶対的な支配圏を築いている。道を通すには、そのワーグの群れを排除し、かつ地形を整備せねばならん。それが管理者の最初の関門だ。ワーグの強靭な牙と爪は、生半可な兵では返り討ちに遭うであろうな』
ヴィオラがその声を聞いた瞬間、心臓が跳ね上がるのを感じたようだった。
「こ、この波動は……まさか!? 水を司る最強の魔神マーリド!? 炎の魔神イフリートをも凌駕し、あらゆる知恵を統べるという別名『知恵の魔神』……! 歴史の影に消えたはずの存在が、奏多殿の館に……! 感動したわ! もう震えが止まらない! この圧倒的な魔力濃度……!」
ヴィオラが感涙にむせび、エリスがその光景に呆れ果てる中、俺は居住まいを正した。
「ゴホンッ! なら、やるしかないか! ワーグの群れが支配しているなら、こっちも『群れ』で対応するまでだ」
俺は立ち上がり、庭へと足を踏み出した。エリスが慌てて後を追う。
「何をなさるのだ? 一人でワーグの群れを討伐するなど、狂気の沙汰だぞ!」
ルミナも心配そうに俺の袖を引く。
「以前、召喚枠が残り六つあると仰っていましたけれど……まさか」
「ワーグだかなんだか知らないが、向こうが群れなら、こっちも数で圧倒する。召喚、開始だ!」
俺の脳裏に浮かぶのは、現世で母さんが働いていた動物園で見た、あの頼もしい仲間たちの姿だ。光が弾け、地響きと共に森に咆哮が轟く。
「ウオォーーンッ!!!」
「ウホウホッ!!!」
現れたのは、銀色の毛並みを誇る五頭のハイイロオオカミの群れと、圧倒的な質量を誇る五頭のマウンテンゴリラの群れだった。
ルミナが息を呑む。
「ワーグ……いえ、違いますわ。もっと高潔な威厳がある……」
ヴィオラが拡大鏡を覗き込み、眼鏡を曇らせながら呟く。「!? まさか、この召喚……生態系の概念ごと別世界から引き抜いているの!?」
俺は胸を張った。
「紹介しよう。ハイイロオオカミのリーダー『ルプス』と、マウンテンゴリラのリーダー『ゴング』率いる猛者たちだ。ポポやビーたちと同じく、群れごとの召喚に成功した。これで残り枠はあと四つだ!」
全員の準備が整った。犬、猫、カタツムリ、クモ、ハムスター、インコ、ウサギ、モグラ、ヤギ、ミツバチ、馬、ハト、トラ、クマ……そして狼とゴリラ。さらにハルまでもが翼を広げた。
アイギスの頭上には、いつものようにミケが鎮座し、女王様のように進軍命令を下している。
「……絶対に嫌な予感しかしないが、行ってくれ!」
数日後。
ポポたちの装着している魔道具から送られてきた映像を確認して、俺は思わず頭を抱えた。
ワーグの群れ? 排除どころではない。皆殺しだ。
アイギスが巨岩を素手で投げ飛ばし、ゴング率いるマウンテンゴリラたちがワーグを圧倒的な腕力でねじ伏せ、ルプス率いる狼たちが群れを包囲していく。ポポたちハトの群れとビーたちミツバチの群れが上空から戦況を正確に把握し、スパイとカタが周囲の魔物の気配を完全に遮断。モグ、ハム、ラビなどは、戦いの最中にも関わらず、ひたすら精密な「土木作業」を続けていた。
まさに、蹂躙という名の調律。道が一本の線として、森を切り裂くように完成していく。
それから一週間後。
「先ほどエリュシオン王国側からの要請で、あの忌々しい森の地図を頼りに来てみたが……なんだこの道は!?」
荷車を引く商人たちが、呆然と立ち尽くしていた。
森の中に突如として現れた、幅の広い、完璧に舗装された平坦な道。そこには、初めて見る未知の魔獣――ルプス率いるオオカミたちと、ゴング率いるゴリラたちが、商人たちを射抜くような鋭い眼差しで待ち構えていた。
「ひ、ひえぇぇ……! な、なんだあの化け物は! 見たこともない獣が……!」
商人たちが怯える中、ミケを乗せたアイギスが静かに歩み寄り、彼らに向かって「この道を進め」とでも言うように進路を示した。その先には、伝説の館の門が開かれている。
そこは、彼らが想像もしなかった「異世界の楽園」への入り口だった。
第三十八話、いかがでしたでしょうか。
ついに貿易の第一歩が始まりました! 伝説の獣たちが道を整備する姿、想像するだけでシュールですが、奏多の力強さが際立ちますね。
次回、いよいよ館の内部へ招かれた商人たちが、コーヒーの香りと未知の動物たちに……?
次回:
「管理者のコーヒータイム? 商人たちと館の秘密」
お楽しみに!




